懐かしい怪談本をめくる感覚で、まずは王道から勧めたい。『ゲゲゲの鬼太郎』は昔から多彩な妖怪を登場させてきて、その中に
のっぺらぼうに近いタイプの話が散りばめられている。僕は子どもの頃に読んで、表情を失った存在が持つ不気味さと哀しさに妙に心を掴まれたのを覚えている。
この作品の良さは、のっぺらぼうを単なる怖がらせ役に終わらせず、背景にある人間の感情や因縁と絡めて描く点だ。顔がないこと自体が象徴になり、失われた記憶や忘却、匿名性といったテーマを読み取れるので、ただの怪談ではない深みが出る。自分はその描写を通じて、恐怖の形がどうバリエーションを持てるかに目を開かされた。
漫画としては時代や作者ごとに描写が変わるから、のっぺらぼうの見せ方を比較する楽しみもある。古典的なコマ割りの怖さ、新しい作風の心理的表現、どちらも味わえるので、まずはこのシリーズを軸にして他の妖怪譚へと広げていくのがおすすめだ。