ノートと色付きの付箋、それからスプレッドシートが私の秘密兵器になった。
物語の中に潜む
たぶらかしの伏線を整理するとき、まず心がけているのは“痕跡を残すこと”だ。読み返したり議論で参照したりするとき、どのエピソードで誰がどんな言動をしたのかを短く抜き出しておくと、とても役立つ。具体的には「発言場所(巻・話・話数など)」「台詞の原文」「それをどう解釈したか」「当時の仮説」「その後の変化」の列を作る。こうすると、後から見返したときに自分がどの瞬間にどんな誤った期待を持ったのか、あるいは作者に騙されたのかが一目で分かる。
もうひとつ重要なのは“分類”だ。たぶらかしには大きく二種類あると考えていて、一つは視聴者の目をそらすための純粋なレッドヘリング、もう一つは読者の予想を逆手に取るための意図的なミスリード。タグを付けるときには『レッドヘリング』『ミスリード』『誤読しやすい表現』『外部インタビュー由来』など細かく分けておくと、議論の場で混乱しにくい。例えば『鋼の錬金術師』のような作品では、作者の設定公開や後の改稿で意味が変わる箇所があるから、原稿時期や翻訳差異もメモしておくと、たぶらかしが意図的なのか偶発的なのか見極めやすくなる。
最後に、コミュニティで情報を共有する際は「発見時点の仮説」を残す習慣をつけると面白い。後で訂正が出たときに、どの説がどのくらい説得力を持っていたかが分かるし、議論の質も上がる。要は記録を丁寧に、かつ柔軟に扱うこと。そうすればたぶらかしに踊らされることが減り、作品の読み方がより深くなると感じている。