作品を読み返すうちに、その冷たいヒロイン像が狙い澄ました設計だと気づいた。僕は『
化物語』の千石撫子や戦場ヶ原ひたぎのように、最初は棘を立てる女性キャラが物語の要所で持つ役割を思い出していた。単に嫌われ役を作るためではなく、読者の期待を裏切ることで物語に緊張感と興味を生むための手法だと感じる。
物語の中で
邪険さは、防御メカニズムや過去の傷を隠すための仮面として機能することが多い。僕はそういうキャラクター性が、後の変化や成長を際立たせるカンフル剤になっていると考えている。作家は読者に「この人物の本当の姿は何か」を探らせることで、感情移入のプロセスを深めようとしているのだろう。
さらに、邪険な態度は他の登場人物との化学反応を生む触媒でもある。僕が好きな展開では、主人公とヒロインの距離がじわじわ縮まる過程が丁寧に描かれ、それまでの冷たさが後になって別の感情の土台だったと分かる瞬間が訪れる。そういう二段構えのドラマがあるから、作家はあえて最初に厳しい面を見せる選択をするのだと結びたい。