古い声が物語に差し込まれると、その瞬間に空気が変わることがある。子どもの頃から耳になじんだ声が一声出るだけで、作品の信頼感や世界観の厚みが増すのを感じることが多いんだ。
私のような長年の視聴者は、声の記憶とともに作品を評価する習慣がついている。たとえば'機動戦士ガンダム'シリーズのように、世代を超えた顔ぶれがそろう作品だと、
古参の声優がいることで過去作との連続性が意識され、評価に深みが出る。演技力そのものが作品の質感を上げるのは当然だけれど、馴染みの声がもたらす「安心感」と「重み」はマーケティング効果を超えた心理的な影響を与える。
ただし万能ではない。年齢とともに声質が変わることもあるし、役どころとのミスマッチが目立てば逆に評価を下げることもある。結局のところ、古参が出ることで評価が上がるかどうかは、その人の演技が物語や役柄にどう寄り添うかにかかっていると、私は思う。慣れ親しんだ声に励まされることもあれば、違和感で冷静に見る目が強くなることもある──その違いを楽しめるかどうかが鍵だ。