読んでいて一番面白いと感じるのは、同人作家が『ちゃんもも』のキャラクターを使って舞台や関係性を大胆に書き換えるところです。原作の雰囲気を残しつつも、細かい性格の補完や未描写の過去を埋めることで、読者に「そうきたか!」と驚きと納得を同時に与えてくれます。例えば学校ものや現代社会パロディ、もしも異世界転生したらという展開など、誰もが想像しやすいけれど作り手の個性が出る設定が多いですね。
個人的に目にすることが多いのは、関係性の再構築です。幼なじみ、義兄妹、先生と生徒(年齢設定を守った上でのほのかな距離感表現)、あるいは年上年下の恋愛関係に変換するパターン。これによってキャラ同士の掛け合いが新鮮になり、原作未見の読者でも物語に入り込みやすくなっています。また、性格の芯は変えずに“弱点”や“過去のトラウマ”を付け足すことで、感情移入の度合いを高める作品もよくあります。傷のあるキャラを看病する展開(hurt/comfort)や、逆に日常の幸せを描くほのぼの系も人気です。
設定面での遊びも豊富です。性別反転(genderbend)、体が入れ替わるボディスワップ、
記憶喪失、タイムスリップ、
悪堕ち(ダーク化)といった王道のAUは、作家ごとの解釈の違いが際立ちます。さらに、オリジナル要素として家族構成を変えたり、双子設定や隠し子設定を加えたり、まったく新しい職業に就かせることもあります。コスチュームや外見も自由にアレンジされ、和装や軍服、近未来風アーマーなど、ビジュアルでの違いが大きな魅力になっていることが多いです。
クロスオーバーや他作品のパロディも目を引きます。力関係や世界観を入れ替えたうえで新しいドラマを作るのは、同人ならではの遊び心。加えて、ギャグ寄り作品やシリアス寄り作品などトーンの振り幅も大きく、ひとつのキャラがコメディアンにも悲劇の主人公にもなれる柔軟性が同人作家たちの創作意欲を刺激しているのだと感じます。読み手としては、どの設定がそのキャラの魅力を引き出しているかを見つけるのが楽しいです。
最後に、好まれる理由のひとつは「補完」が上手になる点だと思います。原作で触れられなかった感情の揺れや日常の小さなやり取りを肉付けしてくれるから、ファンは新しい発見を得られる。そうやって連作やシリーズ化されるうちに、別の視点や深掘りが積み重なっていくのも同人世界の醍醐味です。どの設定が自分のツボにハマるか探すのは、ファン活動の楽しみの一つですね。