夫と子を捨てた妻が、世界を魅了するデザイナーになった
玉の輿に乗ったはずが、待っていたのは地獄だった。
結婚して七年。夫の圭介は傲慢で冷酷な態度を崩さず、小夜をまるで存在しないかのように扱った。
憧れの王子様だった圭介を手に入れた小夜は、いつかこの苦しみが報われる日が来ると、ただひたすらに信じていた。
しかし雪の舞う夜、自分だけが覚えている結婚記念日に、ついに悟る。この家族の中で、自分だけが永遠によそ者なのだと。
愛する夫は、初恋の相手との未来を奪った彼女を憎悪し、実の息子でさえ「ママは若葉さんみたいにはなれないね」と無邪気に言い放つ。
夫と息子がそろって自分を裏切り、別の女と「本当の家族」のように笑い合う。その滑稽なまでに惨めな光景に、小夜は乾いた笑みを浮かべるしか無かった。
心は灰になり、彼女は静かに離婚を決意した。
彼女はすべてを捨て、華麗な転身を遂げた。
国際的に名高い和風ファッションデザイナー、天才画家として……彼女の作品は、セレブでさえ入手困難な幻の逸品となった。
だが皮肉なことに、彼女が完全に諦めたその時、彼らは手放そうとしなかった。
息子は、泣き叫びながら彼女に手を伸ばす。
「ママは僕のママでしょ!他の子を抱っこするなんて許さない!」
そして、あれほど彼女を蔑ろにしてきた夫は、執着の鬼と化し、離婚を拒否する。
「お前が先に俺を選んだんだろう。最後まで責任を取れ。離婚?絶対にさせん」