三年の冷遇、離婚の夜に夫は狂う
結婚して三年間、安部怜央(あべ れお)が妻の清水陽咲(しみず ひなた)に触れることは数えるほどしかなかった。
それでも陽咲は、いつか自分の献身が彼の氷のような心を溶かせると信じていた。怜央に愛されるためなら、プライドを捨て、なりふり構わず尽くすことさえ厭わなかった。
しかし、ある冬の夜。偶然耳にした怜央の電話で、陽咲は残酷な真実を突きつけられる。怜央の心にいるのは、自分の妹の望月悠里(もちづき ゆうり)だけ。
自分との結婚は、単なる利用でしかなかった。
陽咲は現実から目を逸らし、何事もなかったかのように自分を欺き続けてきた。だが怜央はそのたびに、残酷なまでに迷うことなく悠里を選び続ける。
陽咲は海市中の物笑いの種となっていた。
悠里から送られてきた彼女と怜央がホテルでの睦み合う写真。そして、妊娠の告白。
積み上げられた裏切りの果てに、陽咲はついに自らを欺くのをやめ、離婚を切り出す。
もともと、怜央が自分を妻に迎えたのは愛などではなく、あの一枚の契約に縛られていたからに過ぎないのだ。
離婚後、陽咲は陶芸の世界に没頭し、瞬く間に業界の新星として頭角を現す。
そんな彼女を前に、かつての冷徹で孤高だった怜央が、初めてなりふり構わず取り乱した。
「陽咲、俺と一緒に戻ってくれ。契約を更新しよう……一生だって構わない。頼む」