港町に雪が再び降った
町で最も有名な天気予報アナだったが、私・田中圭子(たなか けいこ)の予報が一度も当たったことはなかった。
長い間そんな状態が続くうちに、それが町中の常識になっていた。
港町では、雨が降るか雪が降るかは、夫の白井哲夫(しらい てつお)の愛人が泣くか笑うかで決まるのだった。
一秒前までテレビで「大雪注意報です」と伝えていたのに、次の瞬間には曇り空が晴れ間に変わった。
直属の上司が皆の前で、皮肉たっぷりに言う。
「以前は局の看板アナだったのに、もう時代遅れなんじゃない?旦那さんが資金を出して人工的に天気を操作しているのに、君の予報に誰が耳を傾けるって言うの?」
隣にいた同僚が、容赦なく付け加えた。
「噂だとね、旦那さんの新しい愛人は寒がりなんだって。そしたら港町、半年も雪ひとつ降らないだろうな?圭子さん、減給で首が回らなくなるんじゃないかって心配だよ」
私は十数枚の減給通知を握りしめ、何も言えなかった。
家に帰ると、表情一つ変えず、それらを哲夫に投げつけた。
「自分の始末は自分で払いなさいよ。白井夫人なんて肩書き、欲しい人に譲ってあげる」