十年を捧げて、残ったのは悲しみ
増田奏汰(ますだ そうた)は両親を亡くし、同級生からいじめを受けていた。
ある日、私――佐野日葵(さの ひまり)は彼を助け、そして一目で恋に落ちた。
私は自分の十年間を捧げ、人に蔑まれていた私生児の彼を学術界の頂点に立つ大学教授へと押し上げた。
その十年のあいだ、私は自分の華都大学の合格通知書を隠し、厨房で皿洗いをして手の皮が剥けても働き、工事現場で肩が擦り切れるまでレンガを運び、母が遺した懐中時計までも、彼の学費のために質に入れた。
ただ彼と共に家庭を築ける日を夢見ていただけだ。
けれど、彼が栄光を手にしたその日、私の努力はすっかり忘れさられてしまった。
ならば、私はもう彼の前から姿を消すことにした。