咲く前に、愛は枯れた
ネコ助逆転ドロドロ展開ひいき/自己中偽善妻を取り戻す修羅場不倫
私、東雲千夏(しののめちなつ)の彼氏である一条湊(いちじょうみなと)は社長で、昔から優秀な人間にしか興味を示さない男だった。それなのに、使えないインターンの月島心春(つきしまこはる)を、なぜか大事に手元に置いていた。
理由は、彼が私を失うことを何より恐れていたからだ。健康診断で心春と私が同じ希少な血液型だと知った彼は、いつか私に何かあったときのために、彼女を血液の保険として手元に置いた。
湊は心春のために料理を作り、旅行にも連れて行った。手作りの贈り物まで用意して、何かにつけて彼女を気にかけていた。
それでも彼は、全部私のためだと言った。
けれど私が交通事故に遭ったとき、湊は遠方の病院から血液を取り寄せ、心春には輸血させなかった。
心春は風邪をひいていた。万が一、血を通して私に何か移ったら困るから、と彼は言った。
その翌日、心春に腎不全が見つかると、湊は私に薬を飲ませて意識を奪い、無理やり手術室へ運び込んだ。
私の腎臓を、心春に移植するために。
彼はいつものように優しい声で言った。
「心春は、最後の保険なんだ。健康でいてもらわなきゃ困る。いざというとき、君の命を救えるのは彼女だけなんだから、ちょっとした病気や怪我で頼るわけにはいかないだろう。君に腎臓を出してもらったのも、全部、君の将来のためだよ。変に考え込ませたくなかったんだ。手術が終わったら、俺は君と結婚する」
けれど彼は知らなかった。
私はもともと白血病の中期だった。腎臓を提供したことで、病状は一気に進んでしまった。もう長くは生きられない。
彼と結婚することは、もう叶わなかった。