社長の子じゃありません――でも、逃がしてもらえない
早坂三久(はやさか みく)の元夫・酒井由樹(さかい ゆき)は、冷淡で無口な男だった。
彼女は昼は秘書として彼に仕え、夜は妻として彼のそばに寄り添った。
それでも二年間、本気で愛されていると実感した瞬間は、一度たりともなかったのだ。
彼の幼なじみである村上千歳(むらかみ ちとせ)が帰国したその日、二人は淡々と離婚届に判を押した。
それなのに半年後、三久は思いがけず妊娠に気づいた。
長年片想いしてきた元夫なんて、もういらない。三久は迷わず、お腹の子と共に彼の前から姿を消した。
由樹が千歳との交際を公表した?私には関係ない。
由樹が千歳にプロポーズした?祝福の言葉を贈ってあげる。末永くお幸せに、どうぞ子宝にも恵まれますように!
ところが、千歳と再婚すると噂されていた由樹が、出産当日、「やり直したい」と産院の前に現れたのだ。
三久は「まさか」と言うように、激しくかぶりを振った。
「社長、この子は本当にあなたの子じゃないわ!」
「俺の子じゃなくても、俺が育てる!」