十年、誤って捧げた愛に別れを
またしても早瀬陽向(はやせ ひなた)に別れを切り出された。
今度、私は彼に言われるまでもなく、自分の持ち物をすべて運び出し、過去と静かに決別した。
一日目、私は三年前に予約してからずっと延び延びになっていた結婚式のプランを取り消した。
二日目、私は彼の母の治療費の自動引き落としを止め、金をせびってきた彼の妹のお願いをやんわり断った。
三日目、私は上司の異動の話を受け入れ、南の街で新しい生活を始めると決めた。
飛行機のシートに身を沈めた瞬間、私はふと思った。
十年間、無償の家政婦みたいに尽くしてきた私がいなくなって、頼めばいつでも差し出す都合のいい財布みたいな私がいなくなったら。陽向はどうするのだろう?
寝たきりの母と見栄っ張りの妹、そして彼が誰よりも可愛がってきた後輩――香月玲奈(こうづき れな)を、彼はどうやって相手にするつもりなのだろう?