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命の対価②

last update Last Updated: 2025-02-08 18:00:40

「全員準備は整ったな?」

暗く狭い部屋で静かな声が響く。

「はい、万全の体制で挑めます」

「確実にアレンや剣聖が出てくる、アレンの相手は俺がやるが剣聖はお前らでなんとか止めてみせろ」

魔族達も密かに計画を立てていた。

「偵察した魔族からは、4月7日に異世界ゲートを起動するとのことです」

「もうすぐだ、ここまで長かったがやっと我らの時代が来る。分かっているな?失敗は許されん」

「最優先事項として起動が確認されればカナタを抹殺致します」

カナタさえ消えればあのゲートをもう一度作るのに膨大な時間がかかるだろう。

それに起動さえしてしまえば、異世界から仲間を呼び寄せこの世界を支配することができる。

1つだけ気がかりがあるとすれば、剣聖だ。

剣聖の持つ聖剣エクスカリバーは魔神を傷つけ再生できぬようにする唯一の武器。

彼さえ気をつければ他は強かろうが身体は再生できる。

「この世界も暗黒の時代へと変えてやろう」

笑いを押し殺したような声だけが部屋に|木霊《こだま》した。

――――――

宿り木では連日対策会議が開かれている。

もちろん、内容は4月7日の体制についてだ。

全員が元の世界に帰る為には、無事に起動させること。

つまり、妨害を跳ね除ける戦力が必要となる。

魔族がこの日を狙って何か仕掛けてくるのは間違いない。

ここ最近は魔族の姿を目撃できておらず、全員が不気味に感じていた。

「団長、剣聖に姿を隠しておいてもらうのはどういうつもりですか?こちら側の最大戦力です、前に出てもらったほうがいいのでは?」

「奇遇だね、ボクも同じ意見さ」

団員からもっともな意見が飛んでくる。

アレンも同じ考えだったが、半分ほどの団員は全員姿を見せておいた方が抑止力になるのではないかという意見だった。

「私はアレンに賛成だな」

すると剣聖から、賛成の声が上がった。

「剣聖殿、それはどういう意味か?」

「答えてやったらどうだ、アレン」

自分で答えるのが
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