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束の間の……①

작가: 緋村燐
last update 최신 업데이트: 2025-05-31 20:16:58

 その後は特に会話することも出来ず、タイムリミットになった。

 日葵と愁一さんが買い出しを終えて戻ってきたから。

「美桜、お待たせ」

「あ……。ううん、買い出しありがとう」

「いや、っていうかこの人は……」

 愁一さんが隆志さんに気づく。

 いぶかし気な――と言うよりは、何かを思い出そうとしている表情で見つめている。

「ああ、愁一くんだね。久しぶり。いつも紅夜が世話になっている」

 二人は会ったことがあるみたいだ。

 でも、愁一さんの様子を見ると数えるほどって程度みたいだけど。

「っあ、隆志さん。すみません、すぐに思い出せなくて」

「いや、年に一度少し会う程度だ。忘れても仕方ないよ」

 謝る愁一さんを隆志さんは笑顔で許す。

 でも年に一度って、紅夜と会うより多いんだね。

 なんとなく、非難したい気持ちになった。

「じゃあ私はそろそろ行かなくては。君……たしか美桜さんだったね。ありがとう、話せて良かった」

「……はい」

「また会ったら今度は君や紅夜のことを教えてくれ。それじゃあ」

「っ! ……はい、またいつか」

 私が教えるより、紅夜に会いに行ってあげて。

 そう口に出してしまいそうなのを呑み込んで、さようならの挨拶をする。

 そうして車に乗り込んだ隆志さんを見送ると、愁一さんがふぅ……と息を吐いた。

「まさか今日来てたとはな」

 明らかに緊張していたという様子。

 あんな優しそうなのに、そこまで緊張するような人だろうか?

「紅夜の養父なんですよね? あの人。そんなに怖い人なんですか?」

 優しい顔と怖い顔を持つ紅夜と同じように、隆志さんも怖い部分があるのかもしれないと思いなおして聞いてみる。

「いや、怖いというかな……。まあ、ある意味怖いが……」

 要領を得ない言い方に首を傾げる。

「あの人自身は優しい人だよ。でもな、経済界でもかなりの地位があって……怒らせたら何をされるか分からないってところが怖いかな」

「ああ……」

 なんとなくは分かった。

 街を一つ買い取ったくらいだからかなりのお金持ちだろうとは思っていたけれど、私の想像を超えるほどの人だったらしい。

「でもそんな人と年に一度は会ってるんでしょう? 愁一兄さんって何かすごいね」

 会話に混ざりたくて仕方なかったんだろう。

 今まで黙っていた日葵がここぞとばかりに話しかけてきた
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