異世界転生案内人カイ〜私の人生をあげるので、貴方の人生を私にください〜

異世界転生案内人カイ〜私の人生をあげるので、貴方の人生を私にください〜

last updateLast Updated : 2025-06-26
By:  専業プウタUpdated just now
Language: Japanese
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妹にも親友にも裏切られたアラフィフ堺若菜は、死んだと思った瞬間に真っ白な空間に投げ出される。そこで出会った金髪碧眼の女神のような美女カイ。彼女は自分を異世界転生案内人だと言う。若菜は彼女に自分の人生を渡すことで、新しい人生を貰う。また、カイの元にはこだわりの強いビューティーアドバイザー前島カナや、結婚直前に裏切られた彩花が訪れていた。カイの元に訪れるのは死の淵を彷徨い、人生を詰んだ者たち。彼らが選択するのは自分の人生をそのまま生き抜くことか、または自分の人生を売り他人の人生の続きを生き抜くことか。訪れる人たちの人生と未練に向き合う程にカイの考えも変化していく。

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Chapter 1

1.1つ目の断罪直前の悪役令嬢を選びます。

 私は異世界転生案内人『カイ』。今日も私の元に来客が来る。死んだ人間に私は選択肢を示す。異世界に転生できるなら、貴方は次はどんな人生を選びますか?

 今日もお客様が来た。

 堺若菜49歳。

 私から見ればとても幸せな人。

「妹にも、親友にも裏切られました。もう私アラフィフですよ。信じられない。私が幸せになろうとすると皆が邪魔するんです」

 私は人生を詰んだと思い命を絶とうとして、処方されていた睡眠薬1ヶ月分を一気に飲んだ。

 朦朧としていく意識の中、真っ白な空間に目の前に女神のような存在が現れた。

 20代前半くらいの金髪碧眼の美しい女性だ。

「堺若菜さん。人生詰んだと死ぬ気なら、異世界で新しい人生を歩みませんか? その代わりあなたの人生はこちらの商品にさせて頂きます」

 私の人生を商品にするとはどういうことだろうか。

 30歳くらいまでの私の人生は人も羨むような人生だったように思う。

 中学生から彼氏は途切れたことがないし、とてもモテていた。

 友人関係も良好で、半年に一回は親友の茜と旅行に行っていた。

(まさか茜に婚約者を取られるなんて⋯⋯)

 私は声を出そうとするも、全く喉が詰まって声が出なかった。

 女神はそんな私を見てうっすらと笑った。

(まあ、まずは話を聞けってこと?)

「あなたは美人です。性格も悪くない。なのに、いつも男からは選ばれません。今は昔美人だった女になっていることに気がついてください。何が悪かったたと思いますか? それは若い頃、顔だけで寄ってくる男の相手をまともに相手してしまったこと? 性格が優しすぎるあまり、いつも相手に合わせていたこと?」

 確かに、私はいつも彼氏ができると相手に合わせていた。

 元々、長女気質で面倒見が良い方だと思う。

 妹の玲奈が、私と当時付き合っていた学と同棲していた家に泊まりに来たいと行った時も快く受け入れた。

(まさか、玲奈が私の彼氏を寝取るなんて⋯⋯)

 真夜中、水を飲みに起きると玲奈と学がキッチンで真っ最中だった。

「全てです。周りを見てください。あなたより不美人で性格最悪な女が幸せになっています。男はバカなのです。本当の美人より美人ぶった女に惹かれ、自分に合わせてくる女より、振り回してくる女を選びます」

 風が吹いて、女神の長いウェーブ髪がふわっとあがる。

「いつも、私が幸せになろうとすると妨害してくる人間がいるんです」

 突然、声が出せるようになったので、私は自分の思いの丈を話そうとした。

「被害者意識が強いですね。この世は弱肉強食。幸せそうにする美人を喰らうブスが幸せになる。それが真理です。あなたは自分が美人だから、いつだって大切にされる本命だと勘違いしていた。その間、策を巡らせ努力をしてたブスに負けただけの愚か者です。死のうと思ったならば異世界に転生しましょう。あなたには、異世界に転生する際3つの選択肢があります。お好きな道を選んでくださいな」

 女神の言葉は優しいようで、私にとってはキツイ言葉だった。

 彼女のいう通りかもしれない。

 私は、美人なのに控えめな自分は絶対に大切にされると勘違いしていた。

 異世界転生を提案されているようだが、どうせなら美人令嬢とかになりたい。

 そして、今度こそ美人らしく男どもを振り回したい。

「この世界ではない場所が存在するのですね。女神様、3つの道をお示しください」

 私はもはや今の自分の人生にも、世界にも未練はない。

 強いてゆうなら、ネット環境の整った便利な世界に行きたい。

「女神様ではありません。私は異世界転生案内人カイです。あなたが選べる道3つをお示しします。1つ目は断罪直前の悪役令嬢であるリンド公爵令嬢、2つ目は貧しいけれど特殊能力持ちなので貴族界に入る平民レオナ、3つ目は世界を旅するユアンです。さあ、どれを選びますか?」

 貴族が登場するということは、おそらく昨今、流行している中世西洋風の異世界だ。

(ネット環境は諦めるしかないか⋯⋯)

「3つしか選べないのはなぜですか?」

 はっきり言って、3つの選択肢どれもイマイチに聞こえる。

(他の選択肢もカモン⋯⋯)

「あなたは自分の人生において詰んでいます。それ以下の人生しか用意できません。しかし、詰んだと思って死をも考えた人生でしょ。何も選ばないでこのまま現世を生きる選択肢もあります。しかし、選んで別の人間の人生を歩む道もあります。ちなみに、選択肢のお三方にはあなたの人生を選択肢として異世界転生を提案しております。自分ばかりが詰んだ、不幸だとお思いにならないで。世の中追い詰められて、不幸だと感じながらみんな必死に生きているのですよ」

 女神は私の半分も生きていない20代くらいに見えるのに悟っている。

 確かに、私は勝手に自分が一番不幸だと思い込んでいた。

「では、1つ目の断罪直前の悪役令嬢を選びます。私は経済的にも苦労したことがありません。自分の人生を一度リセットして、同じ状況で詰んだ彼女の人生で戦いたいと思います」

 公爵令嬢、一択だと思った。

 他、2人は貧乏過ぎる。

 食べるものにも困りそうな生活をするのだけは嫌だ。

「ふふ。どうぞ、ご勝手に! それでは転生します。ご機嫌よう」

 そう告げると女神のようなカイと名乗ったその方は光の中に消えていった。

♢♢♢

「マリア・リンド公爵令嬢、君との婚約を破棄する。君は身分を理由にアカデミーに入学してきたナタリアを虐め抜いた。そのような女が次期王妃にふさわしいとは思わない!」

 これは悪役令嬢ものでよくある、婚約破棄イベントだろう。

 いかにも王子様と言った金髪碧眼の男がピンク髪の女を抱きしめながら、断罪してくる。

 みんなが私に注目している。

「私も自分が次期王妃にふさわしいなどと思いません。しかし、このような場所で女を血祭りにあげるあなたも次期国王にふさわしいのでしょうか? 婚約者がいながら、他の女を抱きしめるあなたなど私の方から願い下げです。下半身で物事を考える浮気男が国王になるこの国ともお別れしたいです。ぜひ、私を断罪して国外追放にでもなさってくださいな」

 いつも人に合わせて来た自分と決別したい思いで、私は高らかに声をあげた。

 誰かが拍手を始め、それに合わせて周りがみんな拍手をしだす。

「なんだ、リンド公爵令嬢、君の仕業か?」

 私を断罪した王子様がうろたえている。

「まさか、これは皆の総意ではございませんか? 浮気男は地に落ちろということでございます。私の人格とあなたの浮気は無関係です」

 婚約者がいながら浮気をする。

 私のトラウマを抉る行為、許す訳にはいかない。

「その通りだ。リンド公爵家を侮辱したお前は廃嫡とする!」

 参列していた国王陛下だと思われる方が高らかに宣言する。

「ち、父上。」

「え、王子様じゃなくなるの。だったら私もいらないわよ」

 壇上で王子とナタリアの痴話喧嘩が行われている。

 私はどうして今まで自分の意見を言わなかったのだろう。

 人に合わせて笑顔でいれば幸せになれると勘違いしていた。

 そっと会場の外に出ると1人の男が私を待っていた。

 黒髪に澄んだ青い瞳が美しい青年だ。

 格好からして、相当身分の高い人間だろう。

「マリア・リンド公爵令嬢、あなたに惹かれた隣国の王子です。来賓として訪れましたが、あなたの堂々とした振る舞いに惚れました」

「ふ、迷惑な人。私はそのようなことを言われて、簡単についていく女ではないのよ」

 私は彼の登場を嬉しいと思いながらも、これからは思ったことを言っていこうと決意していた。

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1.1つ目の断罪直前の悪役令嬢を選びます。
 私は異世界転生案内人『カイ』。今日も私の元に来客が来る。死んだ人間に私は選択肢を示す。異世界に転生できるなら、貴方は次はどんな人生を選びますか?    今日もお客様が来た。  堺若菜49歳。  私から見ればとても幸せな人。「妹にも、親友にも裏切られました。もう私アラフィフですよ。信じられない。私が幸せになろうとすると皆が邪魔するんです」 私は人生を詰んだと思い命を絶とうとして、処方されていた睡眠薬1ヶ月分を一気に飲んだ。 朦朧としていく意識の中、真っ白な空間に目の前に女神のような存在が現れた。  20代前半くらいの金髪碧眼の美しい女性だ。「堺若菜さん。人生詰んだと死ぬ気なら、異世界で新しい人生を歩みませんか? その代わりあなたの人生はこちらの商品にさせて頂きます」 私の人生を商品にするとはどういうことだろうか。  30歳くらいまでの私の人生は人も羨むような人生だったように思う。 中学生から彼氏は途切れたことがないし、とてもモテていた。  友人関係も良好で、半年に一回は親友の茜と旅行に行っていた。 (まさか茜に婚約者を取られるなんて⋯⋯) 私は声を出そうとするも、全く喉が詰まって声が出なかった。  女神はそんな私を見てうっすらと笑った。 (まあ、まずは話を聞けってこと?)「あなたは美人です。性格も悪くない。なのに、いつも男からは選ばれません。今は昔美人だった女になっていることに気がついてください。何が悪かったたと思いますか? それは若い頃、顔だけで寄ってくる男の相手をまともに相手してしまったこと? 性格が優しすぎるあまり、いつも相手に合わせていたこと?」 確かに、私はいつも彼氏ができると相手に合わせていた。  元々、長女気質で面倒見が良い方だと思う。 妹の玲奈が、私と当時付き合っていた学と同棲していた家に泊まりに来たいと行った時も快く受け入れた。 (まさか、玲奈が私の彼氏を寝取るなんて⋯⋯)  真夜中、水を飲みに起きると玲奈と学がキッチンで真っ最中だった。「全てです。周りを見てください。あなたより不美人で性格最悪な女が幸せになっています。男はバカなのです。本当の美人より美人ぶった女に惹かれ、自分に合わせてくる女より、振り回してくる女を選びます」 風が吹いて、女神の長いウェーブ髪がふわっとあがる。「いつも、私が幸せ
last updateLast Updated : 2025-06-10
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2.ビューティーハイパーアドバイザー前島カナ。
私は異世界転生案内人『カイ』。今日も私の元に来客が来る。死んだ人間に私は選択肢を示す。異世界に転生できるなら、貴方は次はどんな人生を選びますか?    今日もお客様が来た。  前島カナ34歳。  私から見ればとても幸せな人。   私はビューティーハイパーアドバイザー前島カナ、34歳、独身だ。   「こだわりが強すぎるから結婚できない」、「若い頃は綺麗だった」と言われて5年は経っていた。 余計なお世話だ。 皆が野球選手だの、アイドルになるだの夢があるように私は美を極めることが夢だった。    美しさに自信がないものに魔法をかけて人が綺麗になり自身を持ち笑顔になる瞬間、私の心は満たされていた。 モデルの園田守は私がその美を掘り起こしたことで売れた。  私たちは公私共に離れられぬ関係になり、来月には結婚する予定だった。 著書の『あなたはまだ自分の美しさを知らない』、『美しさは努力が100%』、『女の就活は見た目採用』はベストセラーだ。メディアにも引っ張りだこで私は忙しい毎日を過ごしていた。 大阪出張がなくなり、私は守を驚かそうと2人で住んでるマンションに帰宅した。 そこにいたのはリビングのソファーで半裸で絡み合う守と若い女だった。「守、これ⋯⋯どういうこと?」 「いや、これは浮気だよ。本気じゃないよ。そのこれは男の甲斐性だから⋯⋯」  見覚えはないが、若い女は量産型アイドルだろう。  彼女は私に見つかると、面倒そうに私をすり抜け玄関に向かった。  おそらく彼女も本気ではなくて、面倒な事にはなりたくないのだろう。「浮気か⋯⋯ごめん、そういうの無理なんだ。出てってくれる?」  ここは私が購入したマンションで、守はヒモ状態だった。  守は一度は売れたものの、だらしのない性格で現場受けは最悪で干されてしまった。「はぁ? こだわり強すぎの売れ残りババアの相手してるんだから、浮気くら良いだろう!」 優しい物わかりの良い年下男を演じていた守が急に私に牙を剥いてきた。 彼が言った言葉は私が毎日裏で囁かれていた陰口だ。 好きな美容を極めたら何が悪いのか⋯⋯34歳で周りがうるさくなってきて、付き合っていた男と婚約したのが間違いだった。 本当は結婚なんて全く興味はなくて、誰かと一緒に生活するのも苦痛だ。  ただ、大好きな美容だけを
last updateLast Updated : 2025-06-10
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last updateLast Updated : 2025-06-13
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last updateLast Updated : 2025-06-16
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last updateLast Updated : 2025-06-18
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