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chapter40

作者: 水沼早紀
last update 最終更新日: 2025-07-01 06:54:45

 そう言われると難しいけど、何か不安が拭えないのは確かなんだ。

「んー……なんていうか、課長には課長の生活がある訳だし……」

「なによ。課長がいいって言ってるなら、そうすればいいじゃないの」

 沙織にそう言われたけど、なんだか心のモヤモヤが取れない気がしている。

「……そんなんじゃ、なくてね」

「え? じゃあ何よ?」

「ほら課長は、誰にでも優しいから。だから私以外の人と話してたり、仲良かったりとかするとさ。ちょっと悲しいっていうか……寂しくなるっていうか……」

 なんて言ったらいいのか分からないけど、なんだかもどかしくて……。

 チラッと沙織を見ていると、沙織は私の話を聞きながら、黙々とスパゲティを口に運んでいる。

「もちろん仕事上、それは仕方のないことだって分かってるの。……でもやっぱり、寂しいんだ。そういう時やっぱり、他の人に優しくしてたりすると、私なんかより、その人の方がいいのかなって思ったりするし……」

「……ふーん」

「もう、私って本当にイヤな女だよね。 もう自分が嫌いになりそうだよ……」

 私が「はあ……」とため息をこぼすと、沙織は真剣な顔で口を開いた。

「瑞紀、アンタさ」

「ん?」

「もしかして、嫉妬してる?」

「えっ……?」

 し、嫉妬……!? 私がっ!?

「アンタ、さっきから私に愚痴ってるけどさ。……それって単純に、アンタが嫉妬してるってことじゃないの?」

「そ、それは……」

 ちょっと待ってよ……。沙織はなんで私のこと、分かるの……?

 そんな私を見かねたのか、沙織から「ほら、やっぱりそうなんじゃない。 まあアンタのことだから、最近膨れてるのはそれが原因なんだろうなとは、思ってたけどね」 と言われてしまう。

  やっぱり沙織は私のお母さんだ。私の考えてること、なんでも分かるんだもん。

「言っとくけど、アンタは自分が思ってるよりも、かなり分かりやすいからね?」

「えっ!?」

 ウソッ! ま、まあ、しょうがないよね……。それは昔からよく言われることだし。

「今のアンタ、ちょっと課長に対して嫉妬しすぎかも。 周りに見え見えよ」

 沙織にそう言われて、私は思わず「えっ……ウソ?」と沙織を見る。

「本当よ。分かりやす過ぎるわ」

「はあ……。よく言われる」

 と言葉を口にすると、沙織は私に「アンタがそんなんだと、アンタが課長のことを好きだっ
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