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使徒と世界樹⑭

last update Dernière mise à jour: 2025-05-11 17:00:24

結界の中へと入ると聳え立つ世界樹が一層神々しく見えた。

地球には存在しないレベルの大きさに僕はポカーンと口を開けてしまう。

「どうしたんだい?カナタ君。もしかして君の世界には世界樹がないのかな?」

「え?そうですね、世界樹なんて植物は僕のいた世界ではありませんでした」

ペトロさんが不思議そうな顔をしているがこんなファンタジーの塊みたいな植物が地球にあってたまるかってんだ。

「世界樹がない世界か……興味深いね」

「そうなんですか?」

「もちろん。世界樹は世界を支える柱みたいなものだからね。柱のない世界がどうやって存在しているのか、そっちの方が不思議でならないよ」

そう言われると確かにと妙に納得してしまう。

世界樹がないから魔法という概念も存在しなかったのだろうか。

そもそも世界樹はどうやって誰が生み出したものなんだろう。

……考え始めるときりが無いな。

世界樹の根元まで来ると壁が目の前にそり立っているような感覚に陥る。

太さだけでも田舎町くらいなら入りそう大きさだ。

「凄い……これが世界樹なのね」

ソフィアさんもうっとりしたような声を漏らしている。

多分世界樹にここまで近づく事が出来たのはエリュシオン帝国初の人間になるんじゃないか?

「これほど巨大とはのぉ……世界広しといえどもこんな大きな樹は初めて見たわい」

「おい、近付くな」

クロウリーさんも興味が尽きないのか世界樹に触れようとしてヨハネさんに怒られていた。

神聖なものみたいだし勝手に触ろうものなら殺されてもおかしくはない。

「じゃあ中に入ろうか」

「中に、ですか?」

「そう。もちろん入っていいのは願う者だけだよ」

となると入れるのは僕だけか。

何かあった時にアカリやアレンさんが側に居ないのは不安だな。

ペトロさんと共に世界樹の巨大な入り口に立つと、ゆっくりと重い扉が開かれていく。

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