２５話　鑑定板？

　——ギルドの適性鑑定♢レティアの秘密

　受付の人がふと思いついたように、いたずらっぽい笑みを浮かべながら言う。

「ふふ……お嬢ちゃんの適性を見てあげようか？」

「うん！ てきせー？」

　レティアは目を輝かせて首を傾げる。冒険者に関わることなら何でも知りたいという気持ちがあふれていた。

「特別だぞー。こっちに入っておいで。」

　受付の人は手招きしながら、カウンターの奥に案内する。カウンターが高すぎて背伸びしても届かないレティアを見て、受付の人は笑顔で入口のドアを開けて中に通してくれた。レティアは嬉しそうに飛び跳ねるような足取りで奥へと進んだ。

「わーい♪」

　レティアは「特別」という言葉に目を輝かせ、カウンターの中に案内されると、他の職員たちも笑顔で迎えてくれた。

「あはは……可愛らしい冒険者さんだな。」

　職員の一人が微笑みながら声をかけると、レティアは嬉しそうに笑顔を返した。

「わぁー可愛い。こっちにおいで～お姉さんのお膝に座らない？ ナデナデしてあげるよー♪ お菓子もあげちゃうっ！」

　受付のお姉さんが優しく手を差し伸べると、レティアはその手に飛び込むようにして膝に座り、目を輝かせた。

「わぁーい。お菓子だぁ♪」

　その無邪気な反応に、周囲の職員たちも思わず笑みを浮かべる。

　しかし、若い受付のお姉さんがジト目で受付のオジサンを見つめると、彼は焦った様子で弁解を始めた。

「え？ あ、いや……冒険者になりたいって言うから適性を見てあげようかと……暇だしな。問題ないだろ？ ウロウロされてたらガラの悪い連中に絡まれるし、保護しただけだぞ！」

『え？ あれれ？ あぁ、わたし……保護されたんだ？』

　レティアはその言葉に少し驚きながらも、状況を理解しようと首を傾げた。

「あぁ、なるほど……それ、面白そうねぇー♪」

　受付のお姉さんもニヤッと微笑み、楽しそうにレティアを見つめた。その視線には、どこかいたずら心が混じっているようだった。

　物珍しさとレティアの可愛らしい姿に惹かれ、職員たちは次々と彼女に声をかけ、囲むように集まってきた。レティアはその中心で、まるで小さなアイドルのように注目を浴びながら、無邪気な笑顔を振りまいていた。

「お嬢ちゃん、この透明な板に触れてごらん。適性がわかるからさ。」

　受付の人が透明な板を差し出してきた。レティアは興味津々の表情でその板を見つめ、そっと手をピトッと触れた。

「ん……こおかなぁ？」

　すると、透明な板がふんわりと緑色に輝き始めた。その光景に受付の人は目を丸くし、驚きの声を上げた。

「は？ いやいや……ありえんって……おっかしーな……」

　その瞬間、板がピキピキと音を立て、光が一層強くなったかと思うと、突然パリーンと砕け散った。

「きゃっ！」

　レティアは思わず声を上げ、手を引っ込めた。

「だ、大丈夫か！？ それ、古かったからな……。こっちで試してみろよ。」

　受付の人は慌てて別の鑑定板を取り出しながら、砕け散った板を片付け始めた。周囲の職員たちも驚きの表情を浮かべていたが、砕けた板を見て「古いから誤作動だろう」と拍子抜けしたような顔に変わっていった。

　一方、レティアは何が起きたのか理解できず、受付の人の顔をじっと見つめて首を傾げた。

「どーしたの？ わたし……へん？」

　心配そうな顔で尋ねるレティアに、受付の人は少し困ったような笑みを浮かべた。

「いやいや、鑑定板の調子が悪くてな。レベルが36だと表示されてな……」

　受付のオジサンが少し慌てた様子で言う。だが、その言葉を聞いたレティアは心の中で焦り始めた。

『わ、わわぁ……レベルがバレちゃう！？ ん？ でも……36だと普通だよね？ でも、って、えっ……336になってる！？』

　オジサンが眉をひそめて言葉を続ける。

「そんな可愛らしい女の子が36なワケがないだろう！」

　その言葉にレティアは目を丸くしながら、内心で冷や汗をかく。

『あ。でも、冒険者なら30以上で活躍できるって言ってたんだったぁ……でも6歳で、活躍できるレベルはおかしいよぉ……。』

　その後、受付のオジサンが新しい鑑定板を手に取り、レティアの前に差し出す。

「まあ、もう一回試してみろよ。この新しいやつなら大丈夫だろ。」

　レティアは内心で戸惑いながらも、拒否するのは不自然だと感じて再び手を伸ばす。そして透明な板に触れると、再び緑の光がふんわりと輝き出した。さらにしばらくすると、同じ結果が表示され、最後にはまたしても板がパリーンと砕け散る。

「はぁ？ 今、適性も……全職業の適性も表示されてたぞ。しかも、初めて見た職業もあったな……」

　オジサンは目を見開き、驚きの声を上げる。周囲の職員たちもその様子にざわめき始めた。

「キミ、えっと……レティアちゃんだっけ？ 誰の子供なんだ？ 身分証もってるかな？」

　困惑しつつも真剣な表情でオジサンが尋ねる。

　レティアは状況に困りながらも、いつもの無邪気な笑顔を浮かべて首を傾げる。

『……わたし、どうしたらいいのぉ……！？』

　レティアは、ポケットから一枚の身分証を取り出すと、受付のオジサンに差し出した。

「あ、これかなぁ……？」