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性格の悪い妻に憑依したので、迷わず離婚します

Author: Kaya
last update Last Updated: 2025-06-09 19:27:34

 何にも……!?

 私は何っんにも企んでませんけどね!?

 それはお宅の奥さんでしょ(この体の持ち主の)!?

 私は単にアデリナに憑依してる、日本生まれ日本育ちのふつーの主婦ですからね!

 ついさっきまで、自宅で推しのアイドルグループのライブ配信見てましたけど何か?

 ちなみに現実の我が家でも冷え切った夫婦関係で、夫は常に浮気相手優先にしてたクズ野郎でしたけど何か!??

 ていうか私、死んじゃったの?

 ライブ配信見てたその後の記憶が、サッパリないんだけど。

 気が付いたらアデリナの顔と体になっていて、この小説の世界の住人に……

 あー…それにしても、この小説の男主人公だっけ?

 アデリナの夫、ローランド王!

 人の話をろくに聞こうともしないで。

 そんなだから平気で浮気なんてするのよ。

 本当にムカつく男………!!!

 ◇

 「アデリナ様……今夜はどうなさったのですか?

 そのようにおやつを深夜に食べると…」

 「は?」

 「……ひいぃっ!」

 あの後——————。

 『また何か悪いことをしでかす前なんだろう?

 お前は本当にろくでもない女だ。』

 それはそれはご丁寧に……!

 あの男、ローランド王にまるで害虫でも見てるみたいに睨まれ、辛辣に毒を吐かれ、どんなに取り繕っても全く相手にされず、気づいたら邪魔者扱いされて部屋を追い出されていた。

 ろくでもないって何よ!!

 ……言ってやりたかった、それはお宅のアデリナさんでしょ!って。

 ただでさえその怒りが収まっていないのに、今度は別の侍女から「王妃陛下、夕飯の時間です。お急ぎ下さい。」とか言われ、強引に食事の席に誘導されてしまう。

 幸いあの男はまだ仕事があるらしく、食事中にまであの顔を見なくて済んだからよかったけどね!

 やたら広く、長いテーブルのある部屋。

 映画とかでしか見た事ないような高い天井。

 大きなシャンデリア。

 かなり豪華な食事が並んでいたけれど、マナーも分からないし本当に困った。

 ただ周囲はアデリナが怖いのか、誰も何も言ってこなかった。

 食後、たくさんの侍女達にお風呂に入れられて、あっという間に夜のシュミーズドレスというやつに着替えさせられていた。

 アデリナの部屋はこれまた超豪華で、金色に輝く装飾品ばかりが置かれていた。

 ベッドも童話のお姫様とかが寝ている、あの天蓋付きベッドというやつだ。

 カーテンまで黄金色にキラキラと輝いてて、はっきり言って眩しすぎ。

 妙に殺伐としている侍女達は、「お休みなさいませ」とか言って皆一斉に下がっていった。

 ああ、彼女らのあの態度って。

 アデリナこの国の人々に、とことん嫌われてたもんなあ。

 ……とか思っていたら、すぐ近くに一人の侍女が取り残されている事に気がついた。

 どうやら、夜食のクッキーを私が恐ろしい顔して爆食しているのを見て、怖がっているみたいだ。

 誰だっけ?この人。

 それに、そんなに震えるほどアデリナが怖いのだろうか。

 ただウエストが、めっちゃ細くて羨ましい!

 「あ……ごめんなさい。怖がらないで?そんなに脅かすつもりはなかったの。

 それに怒ってるのは貴方に対してじゃないわ。

 私が頭にきてるのは……ローランドよ!」

 またさっきの出来事を思い出しては怒りが再燃する。

 いけない!

 最近血圧が高めだったのよね。

 健康診断もなんか引っかかってたし……

 侍女はただ口をポカンと開け、私をまるで謎の生命体でも見るような目で見つめていた。

 「……珍しいですね。アデリナ様がローランド様の事をその様に仰るなんて。」

 「え………?」

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