「アデリナ!アデリナ……しっかりしろ!」
どうして無理に迫ったりしたんだ。
自分を止められなくて、嫌がるアデリナを追い詰めてしまい、彼女は床に派手に倒れ頭をぶつけて意識を失った。
すぐに抱き寄せ、心臓の鼓動を確かめた。
……何の音もしない。どうして………!
途端に世界が暗闇に覆われてしまったような、果てしない恐怖に襲われた。
「アデリナ……!アデリナ!!」
真っ青な顔の彼女に何度もよびかけ、小さな胸の膨らみに耳を押し当てる。
「っ、くっ………!アデリナ」
さっきまで確かにキスをしていたのに。
その細い体を抱きしめていたのに。 その体温がはっきり伝わっていたのに。「……っ、」
後頭部の髪の間に何かある。
抱き締めたままアデリナの頭を少し傾け、髪をかき分けた。「……傷跡……?」
かなり深い傷跡だ。
だが血は出ておらず、既に塞がっている状態だった。この傷は一体何だ………?
嫌な予感がした。
とにかくアデリナの息がない。 焦った私は、ぐったりとしたアデリナを抱え、激しく呼び鈴を鳴らした。「どうなされましたか、陛下……!」
飛んできた侍従達は、私に抱き抱えられたアデリナを見て、少し慌てたようだった。
「すぐに侍医を呼べ……!
寝てようが構わないから叩き起こせ……!」「は、はい………!」
……アデ
ただ、今はこの者が目を覚ますのを今か今かと待っている。 早くお前の、正体もよく分からないこの者のあの元気で生意気な顔が見たい……。 そうして戻ってきたアデリナの———この者の顔を見て私は思わず泣いた。 それほどまでに嬉しかったのだ。 死んで欲しくなかった。 例えこの者がアデリナでなかったとしても。 これまでを鑑みれば、この者が私や周囲に害を与える存在だとは思えなかった。 とにかく何かやむ得ず正体を明かせない事情があるのだろう。知らないふりをして置こう。 まだ、側にいてくれるのならば。 例え騙されていたとしても。 「ローランド?泣いてるんですか?」 「……泣いてなど。私は氷の王だぞ? 涙なんか流さない。」 散々人を詰った後、馬鹿ですね〜と言った風ににこり、と笑うアデリナ……の中の者。 やっとその、弾ける様な笑顔を私にも向けてくれたのだなと思った。 せめて名前だけでも知る事ができたら、心の中でその名を密かに呼べるのに。 彼女を抱き締めている私の方が、まるで温かな彼女に守られているような気分になった。 ……どうしてこんな気持ちをお前は私に与えるんだ。 どうしたらもっと彼女と触れ合えるんだ? そんなことを思ってついまたいつもの様に軽い口論をしていると。何と彼女が。 大胆にも私をベッドに押し倒して組み敷こうとしたのだ…………! しかもキスは唇だけにするものじゃない、だと? そんなの私だって分かってる。 子供扱いするな。私の方が年上だぞ。 いや、この者の年齢は分からない。 だが、何故かその雰囲気に逆らえず言いなりになり、上から勝ち誇ったように私を見つめてくる彼女を見て、思わずごくりと唾を飲み
弟子医者が色々と説明をしてから部屋を去り、残された私はベッドに横たわるアデリナを食い入るように見つめた。 そして、思わず冷たい彼女の手を両手で握りしめた。 こうしてアデリナが生きていた事に感謝したものの、後から後から様々な疑問が湧いてくる。 アデリナの寝顔は、ただ寝ているだけにも見えた。 最近、やたら気になって見てしまう顔。 青みがかった黒髪が枕に広がっている。透き通るほど綺麗な肌。完璧に整った容姿。 目が離せなくるくらい、やはり何もかもが美しい。 それにしたって、二ヶ月前だと……? それはアデリナが突然変わってしまったあの頃なのでは? それにアデリナが頭をぶつけた直後、彼女は確かに呼吸をしていなかった。 だから私はあのとき本当に絶望したんだ。 しかし、今はゆったりとしたリズムで呼吸を刻んでいる。 どういう事なのだろうか。 「アデリナ………?お前………… 本当にアデリナ………なのか?」 とある仮説が浮かび、私は思わずアデリナの手を力強く握った。 もしかして———王妃の体に別の誰かの魂が入った……? そんな馬鹿な。いや、しかし。 でもそれなら、ここニヶ月あまりのアデリナの奇妙な行動の辻褄が合う。 唐突に打算も企みもなく、離婚宣言をしたアデリナ。 それまで傲慢で我儘ではあったものの、さすが元皇女。マナーは完璧だった。 だがあの日を境に、急に王妃としての振る舞いが雑になった。 食事のマナーはなってないし、たまに猫背で歩くし、奇妙な言葉は使うし、まるで私を本当に嫌っているかのように振る舞うし。 以前は人との交流を嫌い、接待すらしなかった。 しても、他人を前にお茶を飲みながら笑うなんて絶対なかった。 あんな風に宮を修繕したり、庭を美しく整えたり。 純粋なホイットニーだけを信頼し、自分に悪意を持つ侍女には賢いやり方で制裁を加える。 セイディとかいう女は、確かにいかにも打算的で、実は私も嫌いだった。 元皇女なのに自ら看病したり、食事を作ったり、それに食事を考案したりするのもおかしい。 派手な買い物もしなくなり、自分に悪意を持つ者以外には丁寧な態度を取った。 何より、私を極力敬うようになった。 子供達と楽しげに教会跡地を駆け回り、熱い瞳で見つめる少年からキスを——— 「私以外の誰かからキスされるなんて……
「アデリナ!アデリナ……しっかりしろ!」 どうして無理に迫ったりしたんだ。 自分を止められなくて、嫌がるアデリナを追い詰めてしまい、彼女は床に派手に倒れ頭をぶつけて意識を失った。 すぐに抱き寄せ、心臓の鼓動を確かめた。 ……何の音もしない。どうして………! 途端に世界が暗闇に覆われてしまったような、果てしない恐怖に襲われた。 「アデリナ……!アデリナ!!」 真っ青な顔の彼女に何度もよびかけ、小さな胸の膨らみに耳を押し当てる。 「っ、くっ………!アデリナ」 さっきまで確かにキスをしていたのに。 その細い体を抱きしめていたのに。 その体温がはっきり伝わっていたのに。 「……っ、」 後頭部の髪の間に何かある。 抱き締めたままアデリナの頭を少し傾け、髪をかき分けた。 「……傷跡……?」 かなり深い傷跡だ。 だが血は出ておらず、既に塞がっている状態だった。 この傷は一体何だ………? 嫌な予感がした。 とにかくアデリナの息がない。 焦った私は、ぐったりとしたアデリナを抱え、激しく呼び鈴を鳴らした。 「どうなされましたか、陛下……!」 飛んできた侍従達は、私に抱き抱えられたアデリナを見て、少し慌てたようだった。 「すぐに侍医を呼べ……! 寝てようが構わないから叩き起こせ……!」 「は、はい………!」 ……アデ
「……っ、はあ。アデ……リナ。」 甘ったるいローランドの囁きや吐息が耳元に届き、熱い体が上半身を包み込む。 アデリナの(ていうか私の)意外に小さな胸を隠すように、ローランドは真上から覆いかぶさってくる。 熱い肌でギュッと抱き締められて思わずキュンとなり、私も思わず抱き締め返した。 「っ、ロー……ランド……っ」 何でローランドがこんなに私に盛ってるのか分からない。 ヤりたい盛り的な……? まあ、そうだよね!いくら王と言ってもまだ20代だもんね! まだヒロインのリジーに出会ってない以上、欲を発散させる為には妥協して妻のアデリナを抱くしかないからね! し、仕方ない!一応夫(仮)だし付き合ってあげようかな! ……ていうかこんな誘惑に負けない女がこの世にいる? この世界にいる訳ないでしょ……!! よし、覚悟はできた!どっからでもかかって来なさいよ!(?)ローランド! そうよ。ヴァレンティンはこの小説では超重要ポジ。言ってみれば国宝級アイドルである。 彼なしではこの世界は語れない! あいらぶゆー ヴァレンティン! I need you ヴァレンティン! ヴァレンティン誕生のためにローランドとヤるわ!(ある意味、私最低!) そして……ヴァレンティンを産んだらローランドと離婚して、息子と2人で幸せに暮らすの! 夢の推しとの生活が待ってる……!(やっぱり最低!) 原作通りローランドはリジーにあげるから! ヴァレンティン誕生だけは許して! 「アデ……リナっ……」 「ローランド……っ」 さっきまで人を殺す気かと思うくらい、私を強く抱き締めていたローランド。 その腕の力が、なぜか急激に弱まっていく。 「え………?」 だらんと伸び切った手は、シーツの上に人形のようにボトっと落ちた。 「ローランド……さん?」 体温が高いローランドは、その
◇ 薄暗い寝室。 ローランドのイメージカラーにピッタリな、青白い照明がぼんやりと室内を灯す。 時間の感覚がない。深夜は回っていたはず。 「ん、っ、いやっ、……あっ」 あれからウィンドウの確認はしてないけど、暴走モードという謎設定に突入したんじゃないかと思うほど、ローランドは、執拗に私の体のあらゆる部分にキスをしまくる。 一体この小説は何と戦ってるんだ。 そして私は何と格闘してんの? 「……っ、アデリナ。どうだ? 気持ちいいか………?」 「っ、そんなの知らなっ……ンンッ」 荒々しく人の夜着を剥ぎ取り、懸命に隠そうとした胸を散々眺めて、触ったり、味わったりしながらローランドは更に私のお腹の奥へと舌を這わせていく。アデリナの体はもうすっかり、私の体として馴染んでいた。 ああ、そう。 あの淡白なローランドがリジーに出会い、彼女を抱く時は毎回ひつこい執着攻めをするのが堪らなかったんだよね。 それ…アデリナに…私に適用してる!!? ノー!R18!NO!18禁! 私はこれからこの男と離婚して、実家で悠々自適生活を手に入れる予定なのに(?)! 「アデリナ……私達そろそろ、本気で子供を作らないか?」 両腕を突っ張り、ローランドは私をベッドに押し付け、縋るように細い声を発した。 熱を含んだような瞳で私を見つめ、逞しくて骨張った手で、優しく頬を撫でた。 決してこの手から逃げる事は許さない。 行動がそう物語っている。 あ…………そんな顔しないで。 イケメンにそんな事言われたら……! ……それに子作りって事はつまり。
「まさか逃げようなんて思うな、アデリナ。 決して逃がさない。」 「………!!」 ああっ!!その台詞って!! 確か敵国で、瀕死状態だったローランドが、リジーに出会って命を救われ、互いに恋心を自覚したあと。 ローランドがクブルク国の王で、妻帯者だという事実を知ったリジーが、彼の前から逃げようとした時に言われた言葉だよね!! 健気なリジーの腕を掴み、ローランドが彼女をベッドに押し倒して言った… あのあのあのあのあの読者を悶えさせる、爆弾発言! あの冷静沈着なローランドが初めて見せた執着に、確か私も大興奮したよね! どうしてこんな序盤に! なぜにアデリナに!……いや、私に!? 「ローランド……さん?……ははは。 お、落ち着いて……」 何故こんな状況になっているのかと言われたら、それは明らかに私が悪いのだが。 とりあえず私だけでも落ち着こうと、ローランドの分厚い胸板を押しのける。 あの悶え台詞をまさか、ローランドが私に吐くなんて。 このバグのような原因追求のため、ステータス確認……しとく? 「ステータス、オープン……」 [ローランド▷クブルク国王 25歳 Lv99 今はとにかくアデリナが欲しい 暴走モード一歩手前 現在の親密度69 体温37.8] は?暴走モードとは…!? いや、そして体温。 ローランド熱あるよね……? ……しかもなぜか親密度が上がっている。 あの時は確かマイナス50だったよね? だとしたら100以上、上がってない? 逆にレベル99の方