これは…産着にオムツ用の生地?エリンシアは夫のアーサーが巨人族の王都の街で買って来た品物を見て驚く「沢山のお買い物ね、アーサー」エリンシア達の自宅に偶然、立ち寄ったティンタル、黒の王女であるティンタルが無表情で呟くように言う。「そうですね、ふふ」にこやかに笑う「パパァ〜」小さな娘のティナが駆け寄る。「良い子だね、僕の可愛いティナ姫」小さな娘のティナを抱き上げそれから愛し気に抱きしめて、自分と同じ赤い髪を撫でた。「ティナはママ似てきたね、素晴らしい美人になるよ」「ティナはもう少ししたら、お姉さんだ、可愛い妹か弟がね」「たがら、少し気が早いけど…必要なものも買ったよ状況で手に入りにくい時もあるから」「そうなの?」「ああ」ティナに答える。エリンシアが蒼白になり、美しいオッドアイの瞳を見開く。「……」ティンタルは乱暴で傲慢な巨人族の王がエリンシアに夜伽をさせた事は知っている。アーサーが戦争に駆り出され、遠征中の留守に…。白の姫エリンシア小鳥のようにか弱い、優しいエリンシア姫に無論、アーサーも知っている。父親は何方か分からない…それは実はティナの時も同様だが…アーサーは小さなティナを降ろして今度は立ち尽くす妻で白の姫エリンシアを優しく見つめた後で抱きしめた。「愛しています、私の誰より美しい姫私のエリンシア」そうして、唇を重ね合うエリンシアの瞳からはそうして、涙が幾すじも溢れ落ちた。「お祝いのご馳走を作らなくてわね、でも、私は料理は苦手で出来ないからご馳走を食べるのは手伝うわ」まるで、当然、当たり前のように黒の王女ティンタルが言う確かに料理はエリンシアが作るが、召使い達も居て彼等が料理する事も多い。「ご馳走はやはり、鶏肉のチキンパイ、鮭のパイも良いわね…チーズをクリー厶ソースにしたものホースディッシュに赤ワインを使うモンスター肉か牛肉と野菜の煮込みシチューも欲しいかしら?玉ねぎのオニオンスープも悪くないわほうれん草や人参のパンも」「デザートには林檎のコンポートとか?黒スグリのパイも」ご馳走を食べる気満々の黒の王女ティンタル しかもエリンシア達が料理を作らせるのが前提アーサーにエリンシアは苦笑しながら、毎度の事なのかニコニコ顔である。「海老を茹でて、アボカドのクリー厶を添えたポテトに茹で玉子入りの
巨人族の街で雪の中を歩みゆく人々の中を深々とフード「やはり、手がかりは掴めなかったですね」「ええ、半年前の…黒の国での、あの事件、騒ぎで、黒の王女ティンタル姫と白の姫エリンシア姫が生きているという事は分かりましたが」一同は顔を曇らせる。「目的の一つでしたが…やはり、今回も難しいようです」「黒の王女ティンタル様は…呪いの入れ墨を刻まれたので、一度、あの時に…捕まえても逃げられて…」「白の姫エリンシア姫はどうなったのか?」◇ ◇ ◇「奴隷として戦などで連れ去られたもに拐われた者達は一部、救えましたが」「白の民の多くが病で死に…黒の民も奴隷兵士になった者達、過酷な鉱山で働く者達はこちらも多く死んだ」「黒の国に居た奴隷商人の多くは黒の王アーシュラン様に私の娘、アルディシアが捕らえましたが」行方不明の二人の探索、拐われた者達の救助巨人族の動向◇ ◇ ◇また、雪がちらつき、雪風が吹く「凍えるような寒さですな、老骨には少々、堪えますが、まぁ、大丈夫ですよ」「タルベリィ様」「タルベリィ殿」「御二人とも、変身の魔法で姿は変えられましたがお気をつけて下さい 此処は敵の巨人族の国」「はい…」「ええ」竜人のセルトは人族の大柄なスキンヘッドの戦士の姿リュース公は特徴ある長い耳を人族の耳に変え髪は黒に近い茶髪にしている。数人の部下達もまた、それぞれ変装していたのだった。「まぁ、無敵のセルト殿を倒せるのは黒の王か、数十万の兵士、魔法兵士か…」「ティンタル王女様の魔法は…人族の母を持つ異母兄の黒の王よりも…」「剣技も、なかなか…黒の王の相手で一歩も譲らなかったですね」「もう一人だけ…私を簡単に倒せるのは…」「白の姫、黒の王の婚約者…エイル、エルトニア姫の手料理のお菓子一つ」「数日間、トイレ地獄に叩き落とされました」「あの恐ろしい破壊力…何かに応用出来れば戦局も…」その一言で、リュース公は思わず笑いを堪えるのに必死 廻りも同様「ふふっ、セルト殿…リュース公様、では…明日には黒の国へ…」「潜伏している者達の山小屋に今晩は泊まりましょう」リュース公は自分の記憶にあるエリンシア白の姫エリンシアのはにかんだ笑顔に…羽琴を演奏する姿が浮かんたのだった。乱暴な巨人族の王に側室にされたとも聞いた…救助した者達は奴隷とされた者達は片
「あら、エリンシアは遅いわね」「…大丈夫ですよ、ティンタル姫、エリンシアは多分」アーサーは暖炉に薪を投げ入れながら答える。窓辺から白い…夜の中の雪景色少し眉を寄せて、いぶしがる黒の姫ティンタルに微笑した。小さな娘のティナも、魔法画の幻獣達も既にスヤスヤとお眠…お休みモード赤い子竜が寝ぼけて、羽を軽くバタつかせその様子に…アーサーに黒の姫アルディシアから笑みが溢れるのだった。アーサーはゆっくりと次に小さなティナ、幻獣達に薄い毛布をかける。「今晩は遅いので泊まられて下さい、ティンタル姫、暖かなサウナも準備します」「あら、いつも悪いわね、ありがとう」「妻のエリンシアもティンタル姫に沢山、料理をご馳走したいと申してました、楽しみにされて下さい」「確か、エリンシアの筆談からの話ではチーズ厶ース添えの魚の煮込みに人参と玉ねぎのマリネにワイン煮込みの肉のシチューだったかな?」そんな会話をしながら、アーサーは思う夫のアーサーは妻であるエリンシアが娘ティナを懐妊した時の様子を良く覚えているからそして、時期的に懐妊した子供の父親が自分か脅して乱暴した彼の主君である王か…どちらか分からない事も…アーサーには…彼の気持ちの中では全ては受け入れるつもりであったのだからそうして、アーサーの思考エリンシア…彼女のつわりが酷くなるようならば薬師に相談しないと…それに何より極寒、一年の長い時が冬の季節の国冬の王国でエリンシアは体調を崩しがちだ一定年齢で成長が止まる不老の種族でもあるエリンシアだが、奴隷として連れて来られた白の国の民の多くは病で命を落としたと聞いたため息が漏れ出るアーサー◇ ◇ ◇「ところで、黒の国は勢いが良く、ますます繁栄してますね」「ええ、そうよね…私の異母兄」「若く稀な赤い瞳の黒の王アーシュランが一度は滅び去った黒の王国を見事に復興させ白の王国に恩を売り、礼として一部の領土からの収益に…」「国内を取り仕切り、支える廻りの配下には黒の王の曽祖父、四代続けて仕えた側近側近のタルベリィ」「それに亡国になった時に庇護者でもあったリュース公に娘のアルディシア姫」「辣腕な彼等に」「巨大族の王達に魔法の魔具で操り人形抱っこ無敵で朴訥な竜の人型、竜の顔を持つセルトは今は黒の王に仕え、その力を敵
「パパ、ママ〜ティンタル様は今度はいつ来られるの?」小さな娘のティナが笑顔で聞く「黒の姫、ティンタル様は大事なお仕事で遠い国によく行かれるからね…ティナ」アーサーは自分と同じ赤い髪をした娘小さなティナの頭を撫でながら優しく答える。そんな二人の様子を頬笑みながら見てエリンシアはいつも通り、暖炉の傍で皆や自分が飲む為の蜂蜜入りのホットミルクを小鍋で作っていた。「ママ、また今度、料理と琴を教えてパパにママに…ティンタル様に食べて貰いたいの、琴の演奏も」ティナの言葉に微笑して、小さなティナを抱きしめるエリンシアまだまだ…小さなティナには料理は少し難しい、勿論、琴の演奏も…少しづつではあったが、ティナは習った事を覚えはじめていた。他の勉強は父親のアーサーに世話好きで優しい叔父夫婦達も教えている。いつも通りの穏やかな時間の中そんな時だった雪が降る夜の時間トントン…ドアを叩く音「誰だろう?」アーサーがドアを開くと赤い子竜の幻獣、白鳥の幻獣にそれから…黒の王女ティンタルが立つていた。「ひさしぶりね、魔法画の幻獣達を連れて遊びに来たわ」少しぶっきらぼうに…いつも通りのティンタルティンタルの傍では、雪がちらつく中に赤い子竜が羽を広げ、飛び回り四つの羽を持つオッドアイの白鳥も「わぁーい、ティンタル様た!」嬉しそうに声を上げる小さなティナ「少し見ない間に大きくなったわね、ティナ」「ティンタル様、焼き菓子、クッキーを作れるようになりました!今度、食べて下さい」「ええ、愉しみだわ、私はエリンシアやティナと違い、料理は苦手だものそれに二人の料理は美味しいから」「ちょっとお腹が空いたの、エリンシア」チラリと…エリンシアを見る黒のティンタル笑顔で言葉を話せないエリンシアは細い彼女の身体を抱きしめる。暖かなシチューなどに焼きたてのパン果実のコンポート、林檎のコンポートはティンタルの大好物幻獣達はティナとティンタル達と遊び楽しそう…二人もまた…。「きゃあ、きゃあ、また頭の上に乗るだから」ティナ次にはティンタルの胸にセクハラ中の赤い子竜「……」楽しい時間…小さな暖かな輪の中にエリンシアも…悲劇の姫ティンタルも居て、ひと時の幸せを噛み締めてだが…胸のムカつきにそっとエリンシアは席を立つしばらく前から続く…症状
「お土産があるの、小さな肖像画」ティンタルがそう言って手渡した小さな肖像画◇ ◇ ◇あの晩 先の黒の王・金の瞳をした竜の王 私を抱いた王は言った夢うつつの中で聞いた・・あの言葉「そなたの実の子供・・エイル、エルトニアはとても面白い運命をたどる 息子のアーシュランと深く結ばれる運命とはな」とうの昔にエリンシアに触れて、 エリンシアの過去を そしてエイル、エルトニアの未来を 過去見の力と先読みの力を持った あの方は そう言った◇ ◇ ◇「ああ、エイルとアルテイシアはとても仲が良いそうよエイルがアルテイシアの為に リュートを弾いてあげたり アルテイシアはよく黒の王宮を訪ねたり 少し前に 自分の湖畔にある城にエイルやリアンを招いて宴をしたそうよアルテイシアは アーシュラン兄様の事は諦めてないらしくて 第二王妃の座を狙ってるみたい、噂話だけど」 首をすくめるアムネジア◇ ◇ ◇「そちらの絵は今のアーシュラン兄様とエイル・エルトニアにアルテイシアよ」三人の人物の絵若い男性が左側に立っていて 真ん中に置かれたソフアに二人のまだ17,8歳の娘が仲良く座っていた。長いウエーブのかかった金の髪 ストレートの長い耳元の辺りで左右の横の髪を少し切っている黒髪の少女金の髪の少女は長いウエーブのかかった髪をポニーテールにして 大きな瞳青と金に近い茶色のオッドアイの美しい少女 白を基調とした 裾の短い服を着ている・・胸元には 大きな金の飾り 裾には 金ラインの裾飾りこれがエイル・・エルトニアなのね涙ぐむエリンシア長い黒髪の少女は あのアルテイア姫アーモンド型の大きく少し吊り上がった瞳 淡い緑色の刺繍の入った 裾の短い服 大きめの胸元には少し開いて見えて 金のエメラルドの宝石の入ったネックレス◇ ◇ ◇左の人物 黒髪の青年 吊り上がった瞳 精悍な顔立ちあの不思議な焔の瞳・・王女テインタルと同じもの黒髪は肩より少し長い髪を紐で縛っている 金の輪を 頭に被り 金の縁取りをされた黒い服を身につけ 肩に深紅のローブを斜めにかけて その深紅のローブに細長い金模様のライン状のものがついている腰には同じく深紅の布でベルト代わりに縛っている。彼女二人を守るようにソフアの傍近くに立っていたのだった。◇ ◇ ◇そし
ティンタルの話は驚愕するものだった。「黒の王アーシュランは、兄様は、ただ一人を救いたいが為に恋した一人の白の姫、エイル、エル卜ニア姫…その為だけに白の国を救ったわ」え?今、なんとティンタル王女は言ったのだ?エイル、エルトニア?私の産んた、恋人との忘れ形見? ティンタルは言葉を続ける。「アーシュラン兄様、黒の王であるアーシュラン兄様が子供時代、白の国の人質の時代にエイルと親しくなって恋したみたい」「でも…でもね」ティンタル王女「当然、黒の王国を滅亡に導いた白の王国には皆は悪感情しか無い何より、二千年近く戦ってきた敵同士の仇(かたき)よ」「皆を説き伏せ、合意を得られぬらまま、白の王都を取り囲んでいた巨人族の大群、軍勢を蹴散らした」 「まあ、黒の大貴族リュース公は、白の王族達の血を引き、長い間、和平の為に尽力してきたのだけど」「それにリュース公もアルティシア姫もエリンシアが大好きで…」「エイルがエリンシアの血縁と知り、それは可愛がっているわ」「アルティシアは実の姉妹のような、仲が良い妹扱い」「大使と婚約者の名目でエイルは黒の国に居るわ」「何でも、両性のエイルは最初王子として、従妹のレリヤ姫と婚約してたらしいけどね、無理やり恩着せがましく、兄様が黒の国に連れ去ったらしくて」「天然で明るく、屈託のない性格に愛らしい姿のエイル」「アーシュラン兄様は料理が趣味なので、自分の専用のキッチンがあるのだけど」「私が、黒の王宮に女官として潜入してたら、アーシュラン兄様のキッチンをエイルは料理しょうとして、爆破させたみたい」え…?た、確かに料理は…それから勉強も不得意で、エイル、あの子は…何故、キッチンが爆発?「ああ、黒の国の言語はアーシュラン兄様がみっちり、叩き込んだらしいわ」「料理の腕前も最悪ね、お腹を下す者達が続出よ」ティナを抱き締める自分の手が震える…エイルには料理は…教えられなかった勉強も…得意は釣りとか木登り、楽器は少し扱えたのだけどティナには、料理などはしっかり教えなくては!「食事の準備をしなくてはね、エリンシア、白と黒の国の食材がまた、手に入ったわ夕方にはアーサーもご帰還よ」頷くエリンシアでも、あの子がエイルがあの時に見た黒の王子と…なんて運命の巡り合わせなのかしら?あ、そう言えば、誰かが…そんな先代の