会議タイトル:第一回・国家戦略会議(仮)
副題:逆ハーレム計画、倫理と実務とときどき胸キュン。場所:グランフォード中央議事堂・小ホール
参加者:エリシア、カイラム、ユスティア、クレイン、ネフィラ、ヴァルド、リビア、アゼル、シハール、ライハルトオブザーバー:エリシア父母(差し入れ担当)、市民代表×2(くじ引きで選出)――開会の鐘――
エリシア「はいっ!本日の議題、『逆ハーレム計画を真面目に詰める』よ!」
リビア「国家会議で言う文言ではないと思うが……。」
ユスティア「先に前提を確認する。私の理解では“多夫型の同意に基づく共同体モデル”だ。人格尊重と政治的中立、労働と感情の公平分担を条件に成立……で合っているか。」
エリシア「要するに“みんなで幸せになろう計画”よ!ただし恋愛は自由意志、強制なし、仕事はちゃんと分ける、嫉妬は話し合いで解消すること!」
ヴァルド「規則は大事だが、まずは腹が減った。議題よりスープを寄越せ。」
クレイン「了解。今日は“和風だし春野菜ポタージュ”。脳に優しい。」
ネフィラ「では実務からいきましょう。募集・選考・配置・教育・評価。響きの国際交流も含め、枠は『戦・文・芸・食・政・学』の六部門で。」
エリシア「部門長案、読み上げるわ!
戦:カイラム(現場総指揮)文:ライハルト(古語解読と外交文)芸:アゼル(音律と式典)食:クレイン(厨房総責任者)政:リビア(宰相。反対意見は受付つつも最後は押し切る)学:ユスティア(結界・教育・テスト作成)監査:ネフィラ(耳と足。舞いながら歩く)安全衛生:ヴァルド(全部でかい声でOK)」カイラム「“逆ハーレム”と言いながら半分は政務だな。」
エリシア「国家事業だからね!恋はインフラよ!」
【資料1:評価指標(KPI)】
・幸福度(本人第三層の扉は、音もなく口を開いた。内側は石ではなく、薄い殻のような膜が幾重にも重なった半透明の空洞だ。踏み出すたび、床が微かにたわみ、足裏から脈が伝わってくる。ユスティアが短く観測式を走らせる。「ここは“風書庫(エアロテカ)”。風の記憶を層で保存している。第三層の要件は……“名”。」「名?」エリシアが首をかしげると、ライハルトが古語を指でなぞった。「『名無き風は、誰のものでもあり、誰のものでもない。名付けられた風は、責を負って流れる』。要は、風に“役目”を与える儀式だ。」リビアが羽根を広げる。「公的資源の割当て、ということだな。乱暴に言えば、風の予算編成だ。」「ふふ、風の家計簿……。」エリシアは笑い、すぐ真顔に戻る。「でも、間違えたら誰かの生活が傾く。慎重にいきましょう。」螺旋の回廊を下ると、広間の中央に四つの環と一本の柱。環には『奏』『護』『記』『饗』が刻まれ、柱には空白の円盤が嵌っている。ユスティアが頷く。「四音の鍵をもう一度使う。そして、最後に“名盤(めいばん)”へ名を刻む。」ネフィラが耳を澄ます。「……誰かの息が混じってる……市場の匂い、港の笑い、鍋の音……。」アゼルが弦を弾くと、空気の奥から微かなざわめきが浮かび上がった。前回エリシアが選んだ“南東の還流”に乗って、街の音がここまで届いているのだ。「皆の暮らしを聞きながら決めろ、ってことね。」そのとき、環の外縁が黒く揺れた。灰外套──沈黙の集団が膜を破って現れる。今回は小隊。先頭の女が面布をかすかに上げ、乾いた笑みを浮かべた。「名は呪い。名付けは支配。あなた方は自分の徳を疑わぬらしい。」
風の祠から水晶を保全して帰還した翌朝、グランフォードの作戦室には、低く澄んだ音が響いていた。机上の水晶が、規則的に淡光を鼓動させている。ユスティアが解析式を走らせる。「脈動は四拍子。方位と連動している。東—上昇、西—沈降、南—拡散、北—収束。祠は二層構造だ。第一層は“鍵穴の公開”。次は“鍵の回転”だな。」ライハルトが古語の頁を指す。「第二層に入るには“四音の鍵”が必要です。奏者、護り手、記録者、供饌(きょうせん)──祈りの膳を捧げる者。」クレインが顔を上げる。「……俺だな。」エリシアは頷いた。「行こう。嵐が来る前に。」港で両親が見送る。母は肩掛けに小さな鈴を結び、父は包みを渡した。「非常食だ。甘いのも辛いのも入れた。」三日行程の山道は、前回より風が荒い。岩稜を回り込む度に、遠雷のような低音が谷を渡った。祠に着くと、入口の石扉に薄青の渦紋が浮き出ている。シハールが掌を当てる。「反応している。第一層の共鳴が、道を開いた。」扉が吸い込まれるように沈み、冷気が滲み出る。内壁は滑らかな石で覆われ、一定間隔で穿たれた孔から風が吹き、通路全体が巨大な笛のように鳴っていた。リビアが囁く。「“音迷路”だ。耳で道を選べ。」四差路に出る。ユスティアが短く指示する。「高音は東の導き。中域は南、低域は北、無音は罠。」エリシアが笛で短い合図を返し、隊は滑るように迷路を進む。壁面の譜線はやがて四段譜に変わり、交点には小さな供物台が現れた。「ここだ。」ライハルトが台座の刻印を読む。「供饌は“風を鎮め、腹を満たし、心を柔らげる一皿”。火気は最小、香りは清らか、塩は海の記録から。」クレインが背負子を降ろす。父の包み、干し魚、麦、野草、少量の海塩。携行鍋に水を張り、掌に魔
会議タイトル:第一回・国家戦略会議(仮)副題:逆ハーレム計画、倫理と実務とときどき胸キュン。場所:グランフォード中央議事堂・小ホール参加者:エリシア、カイラム、ユスティア、クレイン、ネフィラ、ヴァルド、リビア、アゼル、シハール、ライハルトオブザーバー:エリシア父母(差し入れ担当)、市民代表×2(くじ引きで選出)――開会の鐘――エリシア「はいっ!本日の議題、『逆ハーレム計画を真面目に詰める』よ!」リビア「国家会議で言う文言ではないと思うが……。」ユスティア「先に前提を確認する。私の理解では“多夫型の同意に基づく共同体モデル”だ。人格尊重と政治的中立、労働と感情の公平分担を条件に成立……で合っているか。」エリシア「要するに“みんなで幸せになろう計画”よ!ただし恋愛は自由意志、強制なし、仕事はちゃんと分ける、嫉妬は話し合いで解消すること!」ヴァルド「規則は大事だが、まずは腹が減った。議題よりスープを寄越せ。」クレイン「了解。今日は“和風だし春野菜ポタージュ”。脳に優しい。」ネフィラ「では実務からいきましょう。募集・選考・配置・教育・評価。響きの国際交流も含め、枠は『戦・文・芸・食・政・学』の六部門で。」エリシア「部門長案、読み上げるわ!戦:カイラム(現場総指揮)文:ライハルト(古語解読と外交文)芸:アゼル(音律と式典)食:クレイン(厨房総責任者)政:リビア(宰相。反対意見は受付つつも最後は押し切る)学:ユスティア(結界・教育・テスト作成)監査:ネフィラ(耳と足。舞いながら歩く)安全衛生:ヴァルド(全部でかい声でOK)」カイラム「“逆ハーレム”と言いながら半分は政務だな。」エリシア「国家事業だからね!恋はインフラよ!」【資料1:評価指標(KPI)】・幸福度(本人
風の王子ライハルトが示した“音律の源泉”と“グランフォードの記録”。それらの言葉は、まるで過去と未来をつなぐ糸のように、エリシアたちの胸に引っかかっていた。「まずは、グランフォードにある“記録”とやらを探さないとね」エリシアは地図を広げながら言う。「だが、どこを探せばいい? 記録なんて王家の書庫にも、魔王の遺産にもなかった」ユスティアが眉をひそめる。「あるとすれば……建国以前の文書、もしくは失われた言語で記された何か。あの旧図書塔が怪しいかもな」そう言ったのはリビアだった。彼は長く宰相として国中の資料に目を通してきたが、古文書のなかでも未解読の一群があったという。「ライハルト様、少しお時間いただけますか? あなたの王国で使われている古語と、我々の文書を照合したいのです」ライハルトはすぐに頷いた。「もちろんです。私の兄がかつて古語研究をしておりました。私も少し心得があります」それから始まった、深夜の解読作業。図書塔の地下室に集まったのは、エリシア、カイラム、ライハルト、リビア、そして文書管理長の老魔族レメルド。埃をかぶった巻物、朽ちかけた羊皮紙、微かに魔力の残る石板……それら一つ一つに目を通していく。「これは……風の祠に関する伝承文か?」カイラムが読み上げたのは、かろうじて解読できた一文。『東より吹く風は、旋律を呼び覚まし、眠れる神を揺り起こす』「眠れる神……それが音律の源泉の守護者というわけね」エリシアが目を細めた。そして、夜明け前のこと。ライハルトが声を上げた。「ありました!“鍵”に関する記述です!」皆が駆け寄る。その文にはこう記されていた。『音の鍵とは、奏者の魂に宿る共鳴なり。真なる音を奏でし時、門は開かれん』
神殿の事件から数日後、グランフォードの中央議事堂には珍しく静かな緊張が漂っていた。「王都からの報告書……やはり、音律魔法の再興は諸外国にも波紋を広げているみたいね」エリシアは届いた文書を見つめながらため息をついた。「風の王国からも正式な使者が派遣されるって噂がある。東方との関係も……難しくなるぞ」ユスティアが真剣な顔で告げる。だがエリシアの目は、窓の向こう──神殿のあった丘を見ていた。あの場所には、まだ秘密が残されていると感じていた。そんな折、リビアが部屋に飛び込んできた。「お嬢様、例の“風読みの石版”が反応を示しました!」「……まさか、風の記録がまた?」石版は古代より“風の預言”を記すとされる神器で、過去に一度だけエリシアの夢と連動して動いたことがある。今回は“交差する運命と、風に舞う誓い”という文言が浮かんでいた。「これは、あの丘にもう一度行けって言ってるのかもしれないわね」エリシアは静かに立ち上がった。その夜、エリシアは再び神殿の丘を訪れた。草木の揺れる音だけが響く静かな場所。だが、その静寂のなかで“誰かの足音”がした。「……来たのか」現れたのはカイラムだった。珍しく、彼の表情は複雑だった。「どうしたの?また神殿のこと?」「いや……俺のことだ」カイラムは少し黙ってから言った。「俺がこの地で果たすべき役目が、やっと見えた。だが、それを選べば……もう、戻れない気がする」「選ぶのが怖いの?」「……違う。失いたくないものがあるんだ」その瞳に浮かんだのは、迷いでも恐れでもなく、決意の火だった。「でも、俺は
東方諸島連邦の王子・シハールとの協定を経て、エリシアたちは彼の案内で、かつて封印された“音の神殿”へと向かうこととなった。神殿があるのは、グランフォードの北西──魔王領との境界付近。森を抜け、霧が常に立ち込める山のふもとに、その古代遺跡は眠っている。「ここが……音の神殿?」ユスティアが呆然と呟く。神殿は思った以上に小さく、石碑といくつかの柱だけが辛うじて形を保っていた。だが、空気が違う。重く、粘るような静けさがあたりを包んでいる。「この“静寂”……何かが封じられている気がする」リビアが警戒を強めた。シハールは一歩進み、指先で神殿中央の祭壇をなぞった。「封印の音は、いまもここに残っている。だが解くには、“失われた旋律”を奏でなければならない」「その旋律って、アゼルが探してた……?」エリシアが問うと、アゼルが小さく頷いた。「今なら……奏でられる気がします」彼は静かに楽器ケースを開き、銀糸のような弦の張られた竪琴を取り出した。ひとつ、指が触れた。――ポロン。微細な振動が空間を伝い、霧がわずかに揺れる。続けて弾かれた旋律は、決して華やかではない。けれど胸の奥を撫でるような、懐かしい音色だった。風が吹いた。神殿の天井にあたる部分がわずかに震え、古い文様が浮かび上がる。「これは……地図?」「いや、“記憶”だ」シハールが息を呑む。「この神殿自体が、音を通して記憶を保存していたんだ」浮かび上がった光は、やがてひとつの光景を映し出す──それは、かつてこの地にあったもうひとつの王国の記憶だった。「この場所……