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第361話
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離婚カウントダウン、クズ夫の世話なんて誰がするか！ 第401話
一難去ってまた一難とはこのことだと、悠良は身をもって思い知らされた。彼女は眉間に深い皺を寄せた。「史弥が通報したの？」「そう。おそらく悠良のお父さんが病院で意識を取り戻したのを知ったから。今の状態で検査を受けて、もし拘留を免れられなかったら......」「すぐに史弥のところへ行く！」「悠良、落ち着いて。今すぐ行ったって無駄よ。あいつはわざとあんたに報復してるに決まってる」史弥は今回、かなりの痛手を負っていた。会社の問題がまだ片付かないうちに、自分まで留置場に何日も押し込められたのだ。あそこでの暮らしが楽なはずもない。悠良の胸は今や火がついたように焦っていた。「じゃあどうすれば......」「史弥には叔父がいるでしょ？彼、その叔父をかなり恐れてるらしい。調べてみるのどうかな」その言葉でようやく悠良は腑に落ちた。そういえば、以前に史弥にはかなり苦手にしている叔父がいると聞いたことがあった。しかも、その男には彼と対抗できる力もあるらしい。白川家の人間とは一通り顔を合わせたことがあるが、当主の性格からして彼女を助けるはずがない。今の白川家は皆、彼女を憎んでいる。「わかった。じゃあ葉も周りに聞いてみて」「安心しな。何か掴んだらすぐ連絡するよ」電話を切ったとき、ちょうど光紀の車が病院の入口に着いた。悠良は振り返って伶に言った。「寒河江さんはお仕事を優先してください。夜になったらまた来ます」最後の一言には、自分は逃げたりしないという意図が込められていた。だから、この男もそこまで監視しなくていい、と。それに、孝之の件を片付けずに立ち去れば、本当に空が崩れ落ちるような事態になる。だが伶は車のドアを開けて言った。「構わない。ちょうど俺も、おじさんに話しておきたいことがある」「あなたが、お父さんと？」彼女は不思議でならなかった。伶は春代と縁が深いことは知っていたが、父とどこで親しくなったのかまでは知らなかった。伶は車を降り、ゆるんだシャツに、くっきりした顔立ちがどこか眠たげで気だるげな雰囲気を漂わせながら、目元に遊び心をにじませて彼女を一瞥した。「何の話か、知りたいか？」悠良は一瞬立ち止まった。彼が本気で教えるつもりなのか、それともまた罠を仕掛けているのか、
離婚カウントダウン、クズ夫の世話なんて誰がするか！ 第400話
今はもう状況が違う。彼女の契約期間はすでに満了しており、会社としても彼女の個人情報を隠す必要はなくなっていた。このタイミングであれば、伶が調べようと思えば、そんなの造作もないことだ。悠良は、自分の契約がまだ完全に終わっていないことを考えると、ここで拒否するのは得策ではないと思った。まして本人が目の前にいる以上、断る余地などあるはずもない。しばし考えた末、余計な面倒を避けるため、彼女は承認ボタンを押した。すぐに振込記録が表示される。悠良が金額を数えると、なんと20万円だった！彼女は横目で注意を促す。「このシャンプー、そんなに高くありませんよ」伶が渡した金額なら、十本以上は買えてしまう。「ふうん。じゃあ、その時ついでに他の物も買えばいい。例えば君の洗面用品とか」伶は気にも留めない様子で言った。その言葉に悠良は警戒心を抱き、視線を上げて彼を見た。「私、また寒河江さんの家に泊まるんですか？」「時々、夜中まで会議が入ることがある。その時、君はわざわざ真夜中に帰るつもりか？」悠良としては、伶の家に泊まりたくなかった。男女が二人きりで夜を過ごすというのは、やはり良くない。まして今、史弥は彼女を逃がそうとせず、広斗は今日大恥をかかされたばかりだ。あの二世ボンボンの性格からして、このまま黙っているはずがない。結局、悠良は彼の申し出を断った。「結構です。後で代わりの車を買いますから、夜はそれで帰れます」伶は少し眉を上げる。「そこまで？」悠良は冷静に答えた。「どうせ父の病気は、まだしばらくは長引くでしょうから......私もここにしばらく滞在することになるでしょうし、車を買っても損はありません」もし最終的に不要になれば、葉に譲ればいい。子どもの送り迎えにも便利だ。だが今の問題は、葉の仕事のことだ。史弥は彼女と悠良がつながっていると知った以上、もう受け入れはしないだろう。性格的に、彼女の評判をあちこちに悪く吹聴し、再就職をますます難しくするに違いない。伶はすぐにその裏事情を察し、目元をわずかに険しくした。「まだ行くつもりなのか？」悠良は口元を引きつらせた。「父が亡くなったら、ここでの未練もなくなります。残っても意味がありませんからね」伶の声は、氷のよう
離婚カウントダウン、クズ夫の世話なんて誰がするか！ 第399話
悠良は彼の距離の詰め方を感じ、反射的に一歩後ずさった。「寒河江さんのカードじゃないですし、あなたとは関係ないでしょう？」彼女は少し不思議に思った。なにしろ伶は、余計なことに口を出すタイプではないはずだ。だが、次の一言で彼の意図がわかった。男の漆黒の瞳は、鷹のように鋭く光った。「俺が、正体もはっきりしない人間をそばに置くと思うか？」悠良の目がぱっと輝く。「つまり新しい人を探すつもりってことですか？」伶の冷たい瞳が悠良を射抜く。普段の軽薄さは影を潜め、その黒い瞳には一片の感情も宿っていない。「そんなに俺から離れたいのか？それとも小林家の人間は皆、恩をあだで返すのが好きなのか？」悠良は口を尖らせた。伶の視線に背筋がゾクっとし、思わず顔をそらす。しかし彼はまっすぐ顎をつかみ、強引に視線を合わせさせた。「どうした、後ろめたいことでもある？」不意に、底知れぬ冷たい瞳に引きずり込まれ、鼓動が急に早まった。この五年間、外で色々経験してきた彼女は、男という存在に対しては心が動じないと思っていた。この間も彼女を口説く男はいたが、誰に対しても何も感じなかった。以前伶の前で心臓が早鐘を打ったのは、単にやましさからだとずっと思っていた。あの頃は史弥と夫婦だったし、外の異性と関わるのは好ましくなかったからだ。だが今は違う。なぜ彼が近づくだけで、こんなにも心拍が乱れるのか。彼女はまぶたを伏せ、心を落ち着けた。「いいえ。寒河江さんが私の素性を心配するなら、他の人に代えても構いません。前にも言いましたけど、契約の違約金は必ずお支払いします。必要であれば、後任が決まってからでもいいです」「今のところ代えるつもりはない。そんな考えはさっさと捨てろ」その一言で、彼女の考えは打ち砕かれた。悠良は五年前、この男のことが分からなかった。そして今もやはり分からない。分からないなら、無理に詮索するのも面倒だと、率直に尋ねた。「なぜ私じゃなきゃいけないんですか？」「君の歌は下手すぎて、これ以上下手なやつは見つからないからだ」伶は眉を軽くこすり、低くからかうように言った。悠良は唇を引き結び、自分を殴りたくなった。この男の口からまともな言葉が出るわけがないのに、なぜわざわざ聞いてしまった
離婚カウントダウン、クズ夫の世話なんて誰がするか！ 第398話
彼女はただ、悠良がこの五年間、外で心の傷を癒やしていたのだと思っていた。何しろ史弥と玉巳から受けた傷はあまりにも深かったからだ。だが今になってみると、この五年間、悠良はただ療養していただけではなく、ほかにも何か経験してきたらしい。悠良は葉に多くを語らなかった。結局のところ、部外者である彼女があまり事情を知りすぎるのもよくないからだ。「道で拾ったものよ」「えっ......？そんな運がある？あのカードって、世界限定版でしょ。無くした人、焦らないのかな？」葉は悠良の答えに驚いたが、それでも信じた。悠良はさらりと作り話を続けた。「たぶんお金持ちすぎて、カードが多すぎて気づかなかったんじゃない？」「確かに。そんな人じゃないと、世界限定版のカードをポンと落としたりしないよな」伶が車のドアにもたれ、気だるげにその会話に口を挟んだ。悠良は細めた目で、探るような視線を送ってくる伶の瞳を淡々と見返す。あまりにも迫力のあるその眼差しに、ほんの一瞬で視線を逸らしてしまった。だが、背中に針が刺さるような感覚は消えない。悠良はその不快感を紛らわすため、別の行動を取った。手に持っていた券の一枚を葉に差し出す。「はい。子どもたちが休みになったら、食べていって」「悠良......」葉は差し出された券を見て驚き、少し迷ったあとで首を振った。「いいの。悠良にはたくさん助けてもらったし、これ以上もらうわけにはいかないわ」「大丈夫、気にしないで。もらえるものはもらっとかないと」そう言って、悠良は無理やり葉の手に押し込んだ。光紀が葉を家まで送り届けると、悠良も降りようとした。だが、足を出す前に、伶が彼女の襟をつかみ上げた。「どこへ行く？」悠良の体が固まる。毎回こうして持ち上げられると、小鳥かヒヨコをつかまれているような気分になる。この男、少しは人を尊重できないのだろうか。いや、そうだ、伶はいつも独断専行。自分を省みることなどない。彼はいつも、原因を他人に求めるのだ。「葉の家に、ちょっと話を」伶は腕時計にちらりと目を落とす。「さっき医者から電話があった。君の父親、もう目を覚ましたそうだ。行かないのか？」これまで何度も彼に騙されてきた悠良は、まず疑いの目を向けた。「父が目
離婚カウントダウン、クズ夫の世話なんて誰がするか！ 第397話
これは世界限定版のブラックカードじゃないか？彼女はこの店で長く働いているが、こんなカードは見たことがない。これはただの金持ちや権力者が持てるものではなく、その背後には相当な権勢が必要だ。白川家ですら持っていないのに、この目の前の女性は一体何者で、なぜこのカードを持っているのか。悠良は、凜が完全にその場で固まっているのを見て、軽くテーブルを指で叩き、促した。「会計するんじゃなかったの？」凜はもう本当に会計する勇気などない。もし会計を通してしまったら、自分がこの雲城で生きていけるかどうかも分からない。彼女はすぐに顔色を変えて悠良に謝罪した。「申し訳ありません、小林さん。先ほどは私が不注意で仕事を怠りました。どうかお許しを......ご覧のとおり、私たちのような下働きは楽じゃないんです。それに今日のお客が多くて......」悠良は相変わらず冷たい表情のまま答えた。「それが私に何の関係が？それがあなたの仕事でしょう。仕事でミスをして、客に尻拭いさせるつもり？」凜は顔を真っ赤にし、唇を強く噛んだ。「そんなつもりじゃ......あなたほどお金があるなら、私たちのような労働者を困らせる必要はないでしょう。もし見逃してくれれば、この仕事を失わずに済むんですし......」悠良は冷笑し、問い返した。「つまり、私があなたの仕事を失わせたってこと？」凜は黙っていたが、その表情には明らかに不満が滲んでいた。少し離れたところで光紀がこの様子を見ながら、ずっと立って見物していた伶に尋ねた。「寒河江社長、いつ小林さんにカードを貸したんですか？」伶は視線を落とし、光紀を一瞥した。「誰が。俺のカードならここにある」光紀の目は飛び出しそうになった。「えっ、寒河江社長のじゃない？ではあのカードは......」「知らないな」伶は興味深そうに悠良を見つめた。今の彼女はまるで金色の光を帯びているかのように輝いて見える。彼は腕を組み、口元をわずかに上げた。こういう彼女こそ、ますます面白く感じる。これが植村先生の娘らしい姿だ。光紀は事態がどんどん大きくなっていくのを見て、「寒河江社長、止めないんですか？」と尋ねた。「彼女なら自分で対処できる」伶はむしろ試すつもりだった。悠良が一体どれだけ
離婚カウントダウン、クズ夫の世話なんて誰がするか！ 第396話
光紀は思わず立ち上がった。「行ってみよう」もし悠良ちゃん様が何か理不尽な目に遭っていたら、寒河江社長が必ず自分に責任を追及してくるに違いない。葉と光紀は一緒にその場へ向かった。悠良はちょうど圭吾と話し合っていた。「あなたがこの店のマネージャーですよね。監視カメラを確認してください。こちらの店員は明らかにキャビアとロブスターを出していないのに、私たちが食べておきながら認めないと言い張っているんです」「申し訳ございません、小林様。すぐに確認いたします」凜はその言葉を聞き、少し驚いて圭吾を見た。「万丈さん......？」「彼女が誰だか分かってるのか」凜はきょとんとした。「ただ客でしょう？まさか金持ちってわけじゃ......」この場になっても、凜の目は悠良を見下す色を帯びていた。なぜなら、この店に来る客は一皿二皿の料理で揉めるようなことは決してせず、ましてや人前で口論して恥をかくようなことはないからだ。ここで食事をする客は誰よりもプライドが高く、損をしても顔を潰すことは絶対に避ける。圭吾は冷たく鼻を鳴らした。「金持ちのメンツどころの話じゃない」凜が「それってどういう意味ですか？」と聞こうとしたその時、厨房の者が慌ててやって来た。「万丈さん、本当に申し訳ありません。厨房側のミスです。今日は忙しくて、新人が一人入っていたんですが、別のテーブルの注文を間違えて、このお客様のテーブルに二品多く入れてしまいました」圭吾は即座に尋ねた。「多く入れたのは？」厨房の者は正直に答えた。「キャビアとオーストラリア産ロブスターです」凜の顔色は一気に曇った。圭吾もすぐに判断した。「緒方。突っ立ってないで、お客様に謝罪しなさい」凜はなおも強情を張った。「でもこれは厨房の問題で、会計係の私に関係ありません」厨房の料理長はすぐに悠良へ頭を下げた。「お客様、これは私どもの不手際です。本当に申し訳ございません」圭吾も言った。「当店の誠意として、本日のご飲食代は全て無料とさせていただきます」悠良が口を開く前に、隣で凜がまた嫌味をつぶやいた。「どうせただ食いしたいだけでしょ。本当にお金持ってる人はこんなはした金、気にしないし......」その言葉が終わるや否や、悠良は彼女の前に
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