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ハンドルはふたりの誓いのリング11

作者: 相沢蒼依
last update 公開日: 2026-05-21 06:38:53

橋本のセリフに耳を傾けながら、店でのやり取りを思い出す。言葉巧みに責められっぱなしな上に、自分との見た目の比較など、落ち込む要因しかなかった。それだけに、宮本は目から鱗が落ちた。

「なるほど……」

「今度店に顔を出したとき、胸を張って言ってやれ。『陽さんを抱いてます』ってな。腰抜かすかもしれねぇぞ!」

「ついでに、陽さんの腰を抜かしてあげたいんですけど」

とても小さな声でのおねだりだったが密閉空間ゆえに、橋本の耳にしっかりと聞こえてしまった。

「何を言ってやがる……」

「見てわかるでしょ。俺の――」

言いながら自身の下半身に指を差す宮本の姿に、橋本はギョッとして顎を引いた。

「今夜は陽さんがやめろって言っても、めちゃくちゃにしちゃうかもしれません」

「俺、明日も仕事なんだぞ。ちょっとくらいは手加減してくれ」

濡れた髪をかき上げて立ち上がり、そっぽを向く。頬だけじゃなく耳まで赤くなっている様子に、宮本の笑みが隠しきれなくなった。声を立てて笑うと、浴室に反響しまくる。

「雅輝……」

「やっぱり陽さんには敵わないな。沈んでいた俺の心を、一瞬で持ち上げるんだから」

宮本は勢い良く立
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    *** リビングのソファに、向かい合って座る。間に置かれたティーカップは、口をつけてもすぐ冷めてしまうほど、熱のやりとりがまだたどたどしい。 九条さん――いや司が、ひとつ呼吸をおいた。「昔ね。僕には“音楽しかない”って時期があった。家の事情とかいろいろ……まあ音楽に携わる人間なら、よくある話だけど」 笑おうとしたその顔に、どこか陰りが差す。俺は黙って耳を傾けた。「ピアノの前にいれば、音に集中するだけでよかった。誰かにどう思われるか、なにを失うか……そういう雑念が、全部音に溶けていく気がした」 「……はい」 「でもね一度だけ、全部壊れかけたことがあるんだ。大きな演奏会でミスして。それだけならよくあることなんだけど、僕は……そこから立ち直れなかった」 その言葉に、思わず目を見開く。完璧なピアニスト九条司が、そんな脆い瞬間を持っていたなんて。「ひとつの音がズレただけで、世界が簡単にぐらついた。僕には“それしかない”と思ってたから。なのにその音さえ、ちゃんと弾けなかった」 「司さん」 「司って呼んで」 訂正された瞬間、頬が僅かに熱くなる。小さく頷き、声を絞り出す。「……司」 「うん。ありがとう」 その小さな“ありがとう”に、確かな痛みと感謝が混じっていた。「それからは怖かった。コンサートを開くことも、誰かと深く関わるのも、またなにかを失うのも……でも陽は違った」 司は俺の名前を呼び、嬉しそうに瞳を細めた。「気づいたら、君に話しかけてた。君が来た夜は、不思議と音が温かかった。よく眠れたんだ」 その言葉に、胸の奥でなにかが熱を灯す。まるで調律がうまくいったときの、ピアノの弦が震えるような静かな喜び。「俺はただ、調律をしただけです。でも、もし少しでも司が“音を好きでいられる”手伝いができてるなら、すごく嬉しい」 司が目を伏せる。そのまま、少し肩を揺らして笑った。その笑みには、どこか切なげな光が宿っていた。「ねぇ、陽」 「はい」 「――また、来てくれるだろうか?」 まっすぐな問い。でもそれは、音を確かめるように揺らめいたものだった。「もちろんです。何度でも来ます」 俺の言葉に、司の肩がほんの少し緩む。その表情に今まで見えなかった素顔が、静かに滲んだ気がした。「ありがとう……その言葉、今の僕には、ずるいくらい沁みる」 司は冷

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