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災難

Penulis: 七賀ごふん
last update Terakhir Diperbarui: 2025-09-25 16:34:29

それは今から六年前。

うわ……!!

当時十一歳だった俺は、ドラマ撮影の為スタジオにいた。本番前に緊張からトイレへ行こうとして、そこで偶然見てしまった。

『んっ……あっ、あっ……!』

見覚えのある人が、知らない男性と互いの性器を擦り合っている姿を。

性の知識なんてほとんどないけど、彼らが“普通”とは違うことは瞬時に理解できた。

だけど目を離がせない。むしろすごく興味津々で、釘付けになった。好奇心に突き動かされ、最後まで彼らの行為を盗み見た。

それでバレたんだ。混乱の渦中にいたせいか、何で見つかったのかは忘れたけど。

そんなことより、俺を支配していたのは生まれて初めて抱く強過ぎる願望。

奇異な目を向けられてもまるで気にせず、青年に頼んだ。

もっと今の行為を見せてほしい。……と。

「どうした? 気持ち良すぎて飛んだか?」

「やっ!?」

極限まで反り返った先端を爪で引っ掻かれ、今度は痛みに呻く。

「ん……っ!」

どれほどの時間が経っただろう。まだ梼原に主導権を握られたまま、身体を逸らして天井を睨んでいる。背中を預けながら、呼吸を整えることに集中した。

「他人のセックスに興奮したって、直接かまってやれば感じるに決まってんだろ。不感症じゃないならな」

とか言ってるけど、誰もかまってくれなんて言ってない。

むしろ近寄らないでほしいのに。

「……っ!」

けどもう本当に限界だ。一瞬でも力んだらイきそう。

「やっ……人が来たら……見られちゃう……っ」

「心配すんな。もう終わりだろ」

終わり?

意味が分からず聞き返そうとする。だが一層激しく擦られ、絶頂に達した。

「あっ……! ひ、あ……っ」

白い飛沫が彼の掌の中に放たれる。その瞬間だけは恥も外聞もなく、守るべき理性は消え去った。

膝の力が抜け、床に崩れ落ちそうになったところを支えられて壁に押し付けられる。

「気持ち良かった? ……って、訊くまでもない顔だな」

彼は本当に意地の悪い笑顔を浮かべ、満足そうに顔を覗かせた。

「ところで眼鏡いらないだろ、お前」

頭がボーッとしてる間に伊達メガネを外される。彼は俺の眼鏡をポケットに仕舞い、出口へすたすた向かっていった。

「ち、ちょっと! 返せ!」

「お前から話しかけてくれたら返すよ。それより早く綺麗にして、服ちゃんと着な。そのまま出てきたらさすがに庇えないぞ」

それだけ言い残すと、なんと本当に行ってしまった。

なっっ。何だあいつ!!

教師として、じゃない。人としてやばい。

すぐにでも追いかけてぶっ飛ばしたかったけど、彼の言う通り今の姿は目も当てられなかった。誰かに見られたら自殺もんだ。

とりあえずティッシュで拭いて、いつの間にかメチャクチャに外されていたボタンを留めた。

「畜生……っ!」

こんな屈辱生まれて初めてだ。男がイく瞬間を見ることだけが生き甲斐の俺が、男の手でイかされた。

この時点で気が狂いそうだったけど、何とか心を殺して学校から帰った。

その日の夜、いつものホテルに来ていた。

「あぁ……っ!」

俺のファン同士で抱き合うところを、これ以上ない楽な立ち位置で眺めるため。 

ところが、困ったことに全然心が晴れない。いつもなら興奮してくるはずなのだが、全くと言っていいほど何も感じない。

気持ちが沈んでる。光が射し込まない深い海の中にいるみたいに。 

「ねぇ、もっと激しく突いてあげなよ」

「は、はいっ」

激しくいやらしいピストンを目の当たりにしても何とも思わない。むしろ恐ろしいことに冷めてきた。

これほど貪婪なパーティーの中心にいるのに……。

理由は明白。

この俺が、男にイかされたからだ。

「今日の一架は顔が怖いね。何かあった?」

いつから近くにいたのか分からないけど、俺の座るソファの肘掛けに朝間さんが座った。

「学校? 勉強……ではないよね。友達と喧嘩でもした?」

「友達じゃないけど、ちょっとムカつく奴がいてね。そいつもゲイ、なんだけど」

伏し目がちに頬杖をつく。詳しく話す気はなかったが、朝間さは想像以上に食いついてきた。

「へぇ、なら簡単じゃん。一架がここに招待してあげなよ」

「な、何で!」

「ここならやりたい放題でしょ? 好きな様に可愛がってあげて、一架は特等席で見物すればいい」

なるほど。でも、それは完全に犯罪じゃないか。ほとんどレイプだろう。

口を開けたものの上手く声にならず、また静かに閉じた。

「ま、一架のしたい様にしたらいいけどね」

そい言って微笑むと、彼は別のメンバーと部屋を出て行った。

複雑だ。……確かに、俺は人のセックスを見て喜ぶ正真正銘の変態だけど。

無理やり嫌がることをしてまで見たいわけじゃなくて。とにかく、ちょっと違うんだよな……。

翌朝は本気で起きるのが辛かった。高校に上がってから間違いなく一番の倦怠感。と 嫌々モード。

「学校行きたくない……」

布団から出るのがしんどく、制服を着るのがしんどく、家を出るのがしんどかった。脚が重いし、胃が痛い。

心なしか視界も暗い……。

「一架君、行ってらっしゃい!」

「行ってきます……」

申し訳ないけど響子さんの笑顔の見送りも元気に応えられず、放心状態で通学路を歩く。そんな時、後ろから背中を叩かれた。

「おーはよ、一架っ!」

「柊。おはよ」

明るい笑顔で隣に並んだのは、幼なじみの津久見柊《つくみしゅう》。小学校から高校まで同じという貴重な存在。今はクラスが違うけど、たまにこうして一緒に学校へ行く。

一架にとっては数少ない、心許せる相手だ。

「あれ、珍しい。今日はメガネかけてないんだ」

「え? あ、ほんとだ」

昨日眼鏡を継美さんに盗られたことを思い出した。

そういえばネクタイも締めてないし、色々抜けている。でも身なりを気にする余裕なんてとてもなかったから仕方ない。

柊は俺の反応を見て、不思議そうに首を傾げた。

「ホントだ、って……どうした? 寝不足か? 元気もないし」

「そうだなぁ。もともと元気ないけどね。空元気だから」

「あははっ! うん、お前は普通に素で良いと思うよ。無理に濃いキャラ作んなくていいって」

「濃いキャラ」

「真面目で固いだろ。ナルシスト……は元からだけど」

「元からなんだ……」

ちょっとショックだったけど、やっぱり柊が一番気楽に話せる。気を遣わなくていい友人がいることを内心有り難く思った。

こいつは普通でいてほしいし、ずっと友達でいたいから……本当の、黒い俺は知られたくない。

「そういえばお前のクラス、新しい先生来たんだよな。若い男の先生、名前何だっけ?」

「梼原継美」

嫌だったけど答えると、柊はスッキリしたように手を叩いた。 

「そうそう! しかも元子役なんだよな? イケメンだし、指輪してないけど、絶対彼女いるよな」

「彼女ぉ? はっ、一生できないよ」

「え、何か知ってんの?」

「知らない」

最後の最後に奴の話になってしまったのが不愉快な上、とうとう学校に着いてしまった。ああ、憂鬱。

「じゃ、またなー」

「ああ」

柊と別れ、重い足を引き摺りながら自分の教室に入る。

案の定ほとんどの生徒が席に座ってなくて、教卓には人だかりができていた。

昨日の今日ですごい人気だ。中央にいる青年を認識し、内心舌を出した。

ピチピチの男子高校生に囲まれ、さぞ幸せなことで。

人だかりを尻目に通り過ぎる。本当はこの空間にいたくないぐらいだけど、諦めて自席へ向かう。

それでも彼の甘い声がよく通る為、椅子に座っても話の内容が聞こえてきた。

「へー、梼原先生って軽音部の顧問になるんだ! じゃあさ、隣にあるからウチの部活も見に来てよ!」

「いいね。見に行くよ」

爽やかな(つくり)笑顔に優しい声音。やっぱり皆、継美さんに興味深々だ。

先生ねぇ……。

俺だけは違和感があって、納得できない。

朝のホームルームを知らせるチャイムが鳴り、そこでようやく教室の中は生徒達の大移動になった。

「……?」

彼らと違いのんびり席で寛いでいたが、何故か目の前に影がかかった。

『先生』の皮を被った継美さんが立ち止まったからだ。

「次回の面談の案内配るから、これは必ず保護者の方に渡すように。はい、後ろの人に回して」

びっくりした。

目の前に来たから何事かと思って焦ったけど、一安心して彼から列分のプリントを受け取った。でも。

「あの……?」

受け取ったはいいものの、絶妙に力が強い。彼がプリントを持った左手を離さないことに気が付く。

オイ……。

何のつもりだ、さっさと渡せ。

周りが不審に思うだろ、と睨みをきかせたところで、彼は俺にしか聞こえない声で囁いた。

「ちなみに、こっちの手だから」

それだけ。

「はい、どんどん回してー」

俺が完全に硬直している間に、彼は隣に移って先頭にプリントを渡して行った。

あ……あいつ……!!

何のことか、瞬時に理解した。あの時の色気を帯びた目と声で、わざわざあの手を誇示してきたからだ。

昨日のトイレで、俺のアソコを弄ったのはこっちの“手”だって。

信じらんねぇ……!

昨日のあの出来事を思い出したらそれだけで火がついたみたいに熱くなり、恥ずかしくてたまらなくなった。

俺が無様にイッたことを嘲笑ってるに違いない。視姦趣味があるだけでなく、男に触られただけで簡単に射精する淫乱野郎だと。

そう考えただけで悔しくて、とても顔を上げられなかった。

絶対仕返ししてやる。

俺が味わった屈辱を百倍返しで、だ。

改めて彼への復讐心に火がつく。情けなんて一ミリも必要ないと分かったし、むしろ好都合だ。

「先生、一架がプリント回してくれません……」

真後ろの生徒が呟く。

一番最初に貰ったにも関わらず、最後の席にプリントが回ったのは一架の列が一番最後だった。

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