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#2

Penulis: 七賀ごふん
last update Terakhir Diperbarui: 2025-09-24 14:33:55

終始気が気じゃなかったものの、無事に最後の授業を終えた。案の定、放課後は梼原継美先生と仲良くなろう会が開催している。

今日はもう疲れたから帰ろう……。

バラされたらどうしようとか考えるのもめんどくさくなってきた。

まぁそこまで外道じゃないと信じ、気づかれないよう彼らの前を通り過ぎようとする。しかしばっちり見透かされてたらしく、即座に名前を呼ばれた。

「」あ、ちょっと待って、崔本。時間あったら久しぶりに少し話さないか?」

「はい!?」

やはり、相手はつっ……梼原さんだった。

ニコニコしやがって、間違いなく良くないことを企んでる。

「おー、そうしなよ、一架も先生と話したいこと色々あるだろ?」

ないよ。

クラスメイトの気遣いが心苦しいというか、今はむしろありがた迷惑だ。

「すいません、今日は用事あるんで帰ります」

反応を待たずにそう言い捨てて、教室を出た。

はぁー……。

またしてもドッと疲れが押し寄せてきた。

無性に喉が渇く。帰る前に売店に寄って、ジュースを一気飲みした。暑い。全身が火照って熱い。

あの人を見てると、嫌でも後ろ暗いことを想像して、身体が疼いてしまう。

俺が他人のセックスに興奮するキッカケになった人……だから。

「一架!」

ボーッとしてたが、名前を呼ばれてビクッとする。

声の方を振り返ると、今朝俺をオトリに逃げた少年A君がいた。

彼は眉を下げ、申し訳なさそうに側へ寄ってきた。

「ごめんね。朝いたの、新任の先生だったんだね。大丈夫だった?」

「あはは、大丈夫だよ。心配してくれてたんだ?」

「うん、悪いことしちゃったなって思って……」

特に行き先もないけど、二人で廊下を歩き出した。

たった今知ったが、A君は赤沢と言うらしい。

「ねぇ、一架は何で男同士のセックスが見たいの?」

「何でそんなこと訊くの?」

「えっ……だって、こんなこと言うのはアレだけど、発想が普通じゃないし……」

人の裸を見せろとか言うお前も普通の発想してないけどな。

心の中でのみ毒づいたが、赤沢の言うことはもっともだ。

けど、それは俺が変態だから。変態に生まれたから、変態として追い求めている。理由なんてそれだけで充分だ。

「男同士のセックスが、この世に存在するからだよ。そこにあるから見るんだ。そもそも存在しなかったら見られないだろ?」

「それはそうだけど……まぁ、そうだね。……え? やっぱよく分かんない」

「無理に分かろうとしなくていいよ。ところで何か用?」

「あ、そうそう。ちょっと来て」

腕を掴まれ、またトイレに連れ込まれる。

「何だよ、外で良いだろ」

さすがに身の危険を感じて声を尖らせると、赤沢はさらに距離を詰めてきた。

「外じゃ駄目だ。朝の話だけど、前払いでお願い!」

「は!?」

「冷静に考えて、いまいちモチベ上がんないんだよね。だから先に報酬が欲しいっていうか」

赤沢の手が胸のボタンを外したところで、ようやく頭が働く。一架は全力で抵抗したが、赤沢ほ力は思ったより強く、どんどんボタンを外していった。

これはまずい。マジで逃げないと。

「ち、ちょっとやだって……!」

さすがに声を荒げたが、トイレのすぐ外で他の生徒の話し声が聞こえた。

「おい、誰か来るからっ!」

「しょうがないな……また今度ね」

赤沢も焦った顔を見せ、諦めて外へ出て行った。

何とか助かったが、最悪だ。他人に触られるのは本当に気持ち悪い。

……うわ。

なのに、わずかに反応している自分の身体も本当に気持ち悪い。脚の間が熱くて、思わず手を伸ばしそうになる。

いや、馬鹿なこと考えるな。ここは学校だ。

顔でも洗って冷やそうかと思ってると、また出入口に誰かが現れた。

「用事があるから帰るんじゃなかったのか? 何だ、その恰好は」

うげ……っ。

そして最悪なタイミングで現れる、教師の皮を被った変質者、梼原継美。

「お前まさか、いつも学校でそんな事してるのか? 正直幻滅……つうか、引いたぞ」

「お、襲われそうになったんだよ! 気持ち悪い勘違いしないでくれる!?」 

「本当に? ……そのわりには落ち着いてるな。実は下心があったんじゃないか」

「なっ、ない!」

今日は叫ぶことが多い。喉が地味に痛んだ。

ていうか実際、襲われかけたんだからもう少し心配するふりでもしたらどうなんだ。俺が騒がないからいいだけで、下手したら警察沙汰だぞ。

でもこの異常な青年に普通を求めるだけ無駄か……。

「はぁ……もうどっか行ってくれません?」

「何でそんなツンツンしてんだ。大人しくて優しい優等生なんだろ?」

彼の台詞はどう考えても馬鹿にしている。苛立ちのあまり舌打ちしたけど、息苦しくなって背を向けた。

……彼を見ていると、どうしたって嫌な記憶を思い出してしまう。

なのに、背中に温度を感じて絶叫した。

「ひあっ!!」

彼の手が一架の前に回り込み、熱の中心に添えられらる。そしていやらしい手つきで這い始めた。

「い、いやっ……何す……っ」

にわかに信じられないが、昂る熱の原因は明白だった。

後ろから抱き込まれ、下半身を悪戯されている。

「おいっ……教師だろ……っ!!」

「まぁな。でも学校で勃起するような悪い子にはお仕置きが必要だろ」

いや絶対正気じゃない。

服の上からだが、梼原の手はさらに激しい愛撫へと変わっていく。

くそ……っ。

困ったことに力が入らない。嫌で仕方ないのに、既に苦しく張り詰めたそこを触られると気持ちいい。

やりきれない思いが自己嫌悪に繋がる。

甲高い、媚びるような声を出している自分に吐き気がした。

「や、嫌だ……あっ!」

とうとう、彼の手がチャックを下ろした。

「……っ!!」

熱く滾った性器が、彼の掌に包まれてしまった。

冷たい。身体は熱すぎて溶けてしまいそうだったが、おかげで目が覚めた。

「は……、やめろよ、頭おかしいんじゃねえの……!?」

「あぁ。お前と同じぐらい、頭はおかしいよ」

話が通じない。絶望している一架の顎に、彼は手を回した。無理やり口を開かされ、一架は口腔内を指で犯される。その間も容赦なく下半身を弄られている為、保っていた理性もぶっ飛びそうだった。

だらしなく口を開け、唾液を垂らす。腰はビクビクと揺れ、先端から濡れてきていた。

「あはは、さっきまでの減らず口はどうした?」

「こ……の……」

叶うなら殴って張り倒したい。だけどとても無理だった。

この抗えない快感は、誰よりも知ってる。強すぎる快楽は、どんな暴力よりも絶大だからだ。

「自分の身体を触られるのは大嫌いだったな。それは今も変わってないか……」

古い記憶が蘇る。彼の声で語られると、より鮮明に色づく。

「昔っから犯罪的だったよ。お前はまだ十一歳だったのに」

「ん……っ」

……いやだ。言わないでほしい。そう思うのに。

彼は、無情にもその続きを声にする。

「俺が誰かとセックスしてるところを見たいって、いつも強請ってきてたもんな?」

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