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12.連行

Penulis: 神木セイユ
last update Terakhir Diperbarui: 2025-06-18 17:00:00

 蛍はご遺体から警察官へ視線を移すと、相手のパーソナルスペースを全無視で踏み込む。

「お巡りさん、ご遺体に触れないでください」

 横にピタリと張り付き、不安そうな面持ちで見上げる。幼い顔つきも相まって、思わず巡査も毒気を抜かれてしまう。

「うんうん。大丈夫。まずは話を聞かせてね」

 取り乱すと思いきや、冷静に対応する蛍に椿希の腹ワタが煮える。

 坂下  椿希には強い野心があった。

 梅乃の椅子を継承した男なのだ。そしてこの地位を手にした事に迷いは無かった。

 自分は梅乃を超える。

 規模も、人望も。

 その最初の踏み台として選んだのは、ボスである梅乃を殺した、蛍へのペナルティだった。

「連絡したのは君 ? 名前は ? 」

「はい、坂下 椿希です。こいつの家に遊びに来たらぁ、途中でいなくなってー。覗いたら変なことしてたんですよ〜」

 椿希は梅乃がゲームに参加した理由も、蛍が死にかけた事も知っている。蛍が梅乃を殺す動機は十分だと読んでいた。

 しかし蛍もシラを切り続ける。

「俺は遊びになんて呼んでない。仕事中でした。父親から指示を受けて仕事の手伝いしてました」

「じゃあ、一人づつ話聞こうか。

 おい、そっちは ? 」

 ペアの巡査はご遺体を確認していたが、目を丸くして答える。

「いえ……。確認出来る場所に遺留物等はありませんね。その……ご遺体でしょ ? そんなまさか……」

 そこへ重明が顔を出した。

「ああ、お巡りさん。お待たせしてしまいすみませんでした。うちの斎場に、なにか問題がありましたか ? 」

「あ〜……涼川 重明さんですね ? すみませんが……息子さんとは後からお話してください」

 そういい、警察官は重明と蛍を離す。告別式をやっているホールから来たばかりの重明も、まだ仕事の気の張り方が抜けきっていない。何を言われても冷静で、動じ

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  • PSYCHO-w   12.連行

     蛍はご遺体から警察官へ視線を移すと、相手のパーソナルスペースを全無視で踏み込む。「お巡りさん、ご遺体に触れないでください」 横にピタリと張り付き、不安そうな面持ちで見上げる。幼い顔つきも相まって、思わず巡査も毒気を抜かれてしまう。「うんうん。大丈夫。まずは話を聞かせてね」 取り乱すと思いきや、冷静に対応する蛍に椿希の腹ワタが煮える。 坂下 椿希には強い野心があった。 梅乃の椅子を継承した男なのだ。そしてこの地位を手にした事に迷いは無かった。 自分は梅乃を超える。 規模も、人望も。 その最初の踏み台として選んだのは、ボスである梅乃を殺した、蛍へのペナルティだった。「連絡したのは君 ? 名前は ? 」「はい、坂下 椿希です。こいつの家に遊びに来たらぁ、途中でいなくなってー。覗いたら変なことしてたんですよ〜」 椿希は梅乃がゲームに参加した理由も、蛍が死にかけた事も知っている。蛍が梅乃を殺す動機は十分だと読んでいた。 しかし蛍もシラを切り続ける。「俺は遊びになんて呼んでない。仕事中でした。父親から指示を受けて仕事の手伝いしてました」「じゃあ、一人づつ話聞こうか。 おい、そっちは ? 」 ペアの巡査はご遺体を確認していたが、目を丸くして答える。「いえ……。確認出来る場所に遺留物等はありませんね。その……ご遺体でしょ ? そんなまさか……」 そこへ重明が顔を出した。「ああ、お巡りさん。お待たせしてしまいすみませんでした。うちの斎場に、なにか問題がありましたか ? 」「あ〜……涼川 重明さんですね ? すみませんが……息子さんとは後からお話してください」 そういい、警察官は重明と蛍を離す。告別式をやっているホールから来たばかりの重明も、まだ仕事の気の張り方が抜けきっていない。何を言われても冷静で、動じ

  • PSYCHO-w   11.残党 - 坂下 椿希

    「おいっ ! 」「おー。死んでる死んでる ! 」「やめろよ ! もうご遺族に返さないといけないんだ」 椿希は作業場をキョロキョロと見回し、勝手に入ってきた。「ん〜。けいくん。なぁ〜んか、隠してないかなぁ〜って思って来たんだ」「はぁ ? 」 全く噛み合わない会話。  隠し事とは ? 蛍は最悪の事態を覚悟する。「ここは遺族の前で出来ない作業を職員がする部屋なんだ。皆さんのいる前で布団を捲ってあれこれしない一つの計らいなんだ」「知ってるよ。 けいくん一人で作業出来んの ? 」「流石にそれは無いよ。今日は立て込んでて……俺がやらされてるだけ。この後、ちゃんと社員さん呼んで二重にチェックするんだ」「そっか。俺らまだ高校生だしねぇ、そこまで任されないか」「当然だよ。  で、何 ? 忙しいんだけど。普通連絡してから来るじゃん」「だってアカウント知らないし」 襖を開けたり、物置スペースを覗いたり。椿希の様子は蛍の案じた事とは関係の無い行動をしていた。「何してるんだ ? 」「ん〜。探してるんだよぉ」「だから……何をだよ」 椿希は大きな目をにゅるりを歪ませ答えた。「梅乃様の死体〜」「はぁ ? 」 ──ああ。こいつ梅乃のところの奴なのか……。 女子高生マフィアのボスの部下。  国際的犯罪組織を追う結々花に比べたら、当然コンタクトも雑。この有様である。 梅乃の死体はルキの部下が始末した。ルキの命令と手慣れた部下たち。問題は無いはずだ。  梅乃の中身は既に、ほぼ蛍の胃の中に収まった。調理も自宅のキッチンや道具は使用していない。ルミノールや他の抗体検査をされても証拠は出ないという蛍の自信。「梅乃さんのこと ? なにか知ってるのか ? 始業式の日、俺……帰りに話したんだけど、その時は何も……」「はは

  • PSYCHO-w   10.ルーティン

    帰宅後、蛍は家業に駆り出された。「よし。急いでアイス交換」 作業室にご遺体を運び込んだ重明が蛍に告げた。「終わったらすぐ、ご遺族のいる安置室に帰す。親族の方も次々到着されているから手早くな。終わったら告別式のホールに社員さんいるから呼んで、必ずチェックをして貰う ! いいか ? 一人で済ますなよ ? 」「分かった」 台車に乗せられた、ドライアイス入りの布袋。ご遺体が傷まないように各所を冷やし続けるのだ。特に夏は交換作業が多めに入る。 その作業の際、涼川葬儀屋では遺族の目に触れることのないように作業部屋で手早く済ませる。遺族の前で行う業者もいるが、ここでは裏方の作業となる。 涼川葬儀屋の遺体安置室は小さな平屋が三つ並び、小綺麗でレンタルも安い。その為自宅で通夜、告別式を行わず、病院から直接葬儀屋へ遺体を搬入するのは一般的である。通夜に参列する方々は『○○の間』と命名された平屋の安置所に次々と訪れる。 そんな隙間を縫って行うアイス交換作業。 搬送台車に乗ったご遺体。 三十三歳 男性で、力強い太眉。厚めの唇がなんとも人の良さそうな印象だ。 納棺前で、まだ湯灌後に着せられた浴衣の姿だった。 蛍は踏み台からズボンだけ脱ぎ捨て床に落とす。そして静かに台車に上がると、男に跨った。「はぁ……っ」 故人の身体が蛍の膨らみを冷やす。 時刻は19:00。 まだまだ夏の夕焼け雲の広がる時間だが、小さな灯りしかない作業室は薄暗く湿っぽい。静まり返った部屋の中、蛍から漏れる吐息が響き続ける。 手のひらで自分を包み込み、男の体に覆い被ったまま快楽の赴くままに指を秘部の内に這わせる。「……ん……っ」 どうしてもルキの指の感覚が忘れられない。嫌悪感より先に感じる、言い知れない程の淫らな記憶。全身が覚えてしまった苦痛。「はぁ……っ……あぁ…&hell

  • PSYCHO-w   9.警戒

     しかし次の瞬間、蛍はパッと顔を上げて美果を見つめた。「あ ! ……そういえばさ……」 蛍は美果の身体をジッと見る。 美果のお気に入りのサマーポンチョは、今はハンガーにかかっている。いつも美果は黒のシャツ一枚で作業する。「え !? な、何 !? 」 その視線に慌てて胸部を腕で隠す美果だが、蛍はそれを笑い飛ばす。「美果……。くく……そんな、無いものを隠したところで……」「な !! 無くはないわよ ! 寧ろ、程良くあるわよ !! ケイくん見たでしょーが !! 」「無ぃ……ってか、見てない ! 俺あの時はちゃんと目、逸らしてたじゃん ! 」「見てた ! 全身 ! その……開いた時も ! 」「あれはルキが……違う ! その話終わったじゃん。あ〜 !! 忘れるってさっき、言ったばかりなのに ! 」「〜〜〜っ ! だって !! そんなジーッと見るからさぁ ! 」「そうじゃないんだよ。 えーっと……今日の転校生が美果を紹介してって言った時『ポンチョに絵の具がついてる人』って言ったんだ」「へぇ……そうなの…… ? 」 美果と蛍はハンガーにかかったポンチョを見る。麻で編まれた一点物。「美果のポンチョっていつも柄物じゃん。訳わかんないウネウネ模様の」「今日はゲリ柄。わたし、民族衣装柄の服を集めてて……」「いや、エスニックファッションが好きなのは分かるけどさ。 あいつ、あんな柄の主張が激しい生地に付いた絵の具なんて、どうして気付いたのかなって思ったんだ」 聞いた瞬間、美果の腕が鳥肌立つ。「え……っと。それだ

  • PSYCHO-w   8.ピンポンマムの不安

     数十分。  図鑑や画像を見ながらピンポンマムを描き続ける。  美果も手本を描き、蛍の様子を伺う。 美果は山王寺 梅乃が行方不明になった事を地元新聞の小さな記事で知った。  そして容易く想像が付いてしまった。  ルキが梅乃を始末したのかとも考えたが、蛍の様子を見ていると殺ったのは蛍だと確信する。  以前より伸びやかな線の勢い。濃淡のはっきりした力強いコントラスト。そして繊細な毛髪の描写。今までには無い伸びやかさが絵に出ていた。 ただし、今日のスケッチは様子が違った。  まるで初めて鉛筆を握る幼児のように手元が落ち着かない蛍。何度も握り直し、大きさの揃わない花弁を描き、何度も消しゴムをかける。「ケイくん。自分のストレスが絵に出るね」「え…… ? そんな事までわかるの ? 気味が悪いんだけど」「気味が悪いって……もう。『悩みがあるんじゃないの ? 』って言っただけよ。その転校生の事 ? 」「……気には……なってる。  だってさ。おかしすぎるじゃん。俺、元々ゲームにのめり込むタイプじゃないし、香澄と梅乃以外とは、プライベートの会話する奴いなかったし」「確かにね。ルキからの監視者は結々花さんでしょ ? 友達関係もそんなに希薄なら、学校まで監視するとは思えないよね……」「だから腑に落ちないって事」「……ケイくんの私生活にも興味があって気が変わったとか ?  ルキって、外見だけはイケメンの部類よね。ケイくん、ああいう感じ好き ? 」「……それ、どういう意味 ? 」 流石に蛍の逆鱗に触れる話題だった。  だが美果も遠慮は無い。ルキの様子からして、蛍に対する好感度が高いのを知っているからだ。「そのままよ。だってルキは絶対ケイくんを特別視してるしさ。案外、学校も監視したくなっちゃったとか ? 」「絶対、無いから。どう考えればそうなるわけ ?  俺が目の前で絡まれてんの見たでしょ ? 」「確かに酷いとは思うけど……あいつただの

  • PSYCHO-w   7.噂と防犯カメラ

    放課後の図書館。 話を聞いた美果はトートバッグを抱えたまま固まってしまった。「え ? じゃあ、わたし……その子に紹介されるの ? 」 困惑した顔色で蛍と向き合う。 多目的ルームの鍵を借りる為に、学生証を出した蛍が首を横に振る。「いや。そんな事があったってだけ。そいつの距離感がおかしいから、ちょっと関わりたくない。『変な繋がり』かなって警戒したんだ」「ああ……成程」 ルキからの監視なら蛍に付き纏いもありうることだ。しかしそれは結々花の仕事なはずである。トラブルもなく大人しい蛍の学校生活において、ルキが知りたいことなど何も無いはずなのだ。「うーん。転校生がピンポイントでケイくんに話しかける……かぁ。不思議よね」「ほんとに鬱陶しい……」 考え込む二人の背後。「あ、あれ。山本 美果じゃん ! 」 自動ドアをくぐって入館した男女数人のグループが声を上げた。「ほんとだ ! そばの弟 ? 」「さぁ ? 」「うわ、普通にしてるし。まじか神経図太〜 ! 」 声をかけてくる訳でもない。無遠慮に美果の背後で騒ぎ出している。「行きましょ」 美果は振り向きもせず、蛍を連れ多目的ルームへ入った。「はぁ……全く」「なにあれ。大学の人 ? 」「ん……。そう」 苦い顔で頷く。「わたしさ、なぜか大学の防犯カメラに拉致されるところ……映像に残っててさ……」「学校ゲームの時 ? 」「そう。多分、最初はルキもわたしが生き残るとは思ってなかったのかなって」「そうかな…… ? 証拠を残すって事が、絶対有り得ないよ。ルキ側の落ち度だ」「……だよねぇ。あの防犯カメラ、かなり際どい所にあったから見逃したのね。 学校で拉致されてから、かなり時間が経ってたみたい。……起きたらケイくんが来てたって感じ。 その間、噂話に尾ヒレがつきまくっちゃって。あんな風に騒がれてんの」「今は映像は無いんだよね ? 」「うん。見つかったとも報道無いし、行方不明になったのは無かったようになってる。 でも最初に映像見た連中が録画してたりで……止めらんないわ」「大学……行けてるの ? 」「平気。元から他人と群れるの苦手だし。好きなだけ言えばって所に落ち着いたわ」「ならいいけど……一日あんなの言われてるの我慢ならないね」「まぁね。さてと ! 」 美果が椅子を整

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