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9. 浮気

last update publish date: 2026-09-09 23:14:41

 大学二年生になった。

 里親サークルには、かわいい新入生たちが入ってきて、純也を見る。

『先輩って、純也先輩と仲が良いですよね。

 もしかして、付き合ってたりとか、するんですか?』

『まさか。純也とは、ただの同期よ』

『本当ですか?! 良かったぁ~。

 実は私、純也先輩のことが好きなんです。

 でも、純也先輩モテるから……。

 先輩、私のこと応援してくれます?』

 今更、”NO”と言える筈がない。

 私は、いつの間にか、純也と女の子たちの恋のキューピット役に選ばれてしまっていた。

 つまりは、そうやって牽制しておくことで、ライバルを一人でも減らそうという魂胆なのだろう。

 それでも私には、どうしても純也と付き合っていることを彼女たちに言う勇気がなかった。

 水谷みずたに百合ゆりも、その中の一人だった。

 最初は、私のことを”先輩”と呼んで、慕ってくれる可愛い後輩だと思っていた。

 でも、彼女から純也への気持ちを打ち明けられてから、彼女は、毎日のように純也とのことを私に逐一報告してくるようになった。

『今日、純也先輩から”可愛い”って言ってもらえたんです』

『純也先輩にランチをご馳走になっちゃいました~』

『純也先輩が私の頭をなでなでしてくれて……きゃあ~もうどうしようかと思っちゃいました~!』

『実は、今度、純也先輩を思い切って、デートに誘ってみようかと思うんです』

 百合からのメッセージを見る度、私の心はすり減って、荒んでいった。

 私を慕ってくれる百合へ、純也との関係を隠していることの罪悪感。

 そして、私の知らないところで二人の距離が近づいていくことへの焦りと嫉妬。

 そんな気持ちで、私の心はぐしゃぐしゃだった。

(やっぱり、純也が私なんかを本気で好きになるわけがないのよ。

 今まで付き合った女の子とは、毛色の違うタイプで珍しかっただけ……きっとすぐに捨てられる)

 サークルの活動中も、純也と百合が二人一緒に居る姿を見かけるだけで、私はうまく呼吸ができなくなった。

 百合は、愛嬌もあって可愛くて、屈託なく誰とでも打ち解けられて、私よりも純也に釣り合っているように見えた。

 純也は、私に対して優しかったけど、彼の優しさは、私だけに向けられているものではないと、よくわかっていた。

 そのことが余計に、私の態度を頑なにした。二人でいても、百合の顔がちらついて、うまく前みたいに話せなくなった。

 喧嘩も増えた。

 純也は、私と一緒にいると、イライラしているように見えた。

『私、純也先輩にキスされちゃいました』

 その百合からのメッセージを見た時、私の心に残っていた僅かな自尊心と期待が音を立てて壊れた。

 もう無理だと思った。

 私は震える指先で、純也へメッセージを送った。

『ごめん、もう無理。別れよう』

 顔を見て伝える勇気はなかった。

 私は、純也を徹底的に避けるようになった。

 純也は、わけが分からないと言ったふうで、しつこく私に付きまとい、理由を尋ねた。

 百合とのことを責めるつもりはなかった。

 それが決定打ではあったけれど、そのことがなくても、きっといつかこうなっていたと思うからだ。

『最初から合わなかったのよ、私たち。

 私なら、もう何とも思ってないから、純也は、純也の好きにしたらいいよ』

 私のことは気にせず、百合と付き合いたいなら、そうしたらいい、という意味で伝えたつもりだった。

 でも、その言葉は、なぜか純也をひどく怒らせた。

『なんだよそれ…………お前って、そんなひでぇ女だったんだな』

 何がそんなに純也を怒らせてしまったのか、私には分からなかった。

 ただ、それ以来、純也が私に声を掛けることはなくなった。

 私は、就活を理由にサークルを辞めた。

 本当は、純也と百合のいる空間に、あれ以上居続けることは、耐えられなかったからだ。

 それでも、同じ大学の敷地で二人を見掛けることがあると、私は、胸がしめつけられるように痛くなり、動悸がして、息も苦しくなった。

 その内、大学へ行くのも億劫になり、単位ぎりぎりでの卒業、就活なんて散々だった。

 希望していた就職先のほとんどが内定をとれず、結局、好きでも何でもない職業に就く羽目になった。

 私の心は、ズタボロだった。

 せめての救いは、純也が就活組ではなく、大学院へ進学したことだ。

 私の就職先は、大学とは反対の方角にあったので、純也と顔を合わせることもない。

 お互いの住んでいる家は、二駅しか離れていないのに、卒業してから今日まで私たちが顔を合わせることも、連絡を取り合うことすらなかった。

(今更、何を送ってきたんだろう……)

 私は、恐る恐る純也からのメッセージを開いた。

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  • 【R18】拾ったワンコは獣人でした。~イケメン獣人に求愛されて困っています。~   6. ワンコとカレーライス

    「うおっ……なんだ、この美味いメシは?!」 コウヤは、目を輝かせながら、注文したカレーライスを食べている。 食欲をそそるスパイスの香りが私の方にまで漂ってくる。 今、私とコウヤは、レストランで向かい合って、座っていた。 朝からコーヒー以外何も口にしていないので、二人とも空腹だった。「美味しそうに食べるわねぇ。 あなたの異世界には、ないの? カレーライス」(私もカレーライスにすれば良かったかな) 私は、自分の注文したサラダとパスタを食べながら、コウヤに訊ねた。「俺のいた世界では、肉が主食なんだ。 こんな美味いメシを食べたのは、生まれて初めてだ」 コウヤは、あっという間にカレーライスを平らげると、お代わりを注文した。(っていうか、支払いするの私なんだけど) 私がパスタを食べ終わる前に、コウヤは、2皿目のカレーライスを平らげてしまっていた。 3皿目を頼もうとするコウヤを止めて、私は、ずっと聞きたかったことを聞いてみた。「それで......コウヤは、いつ自分のいた世界へ帰るの? っていうか、帰れるものなの?」「ああ、帰れる。 でも、帰る時は、ファムも一緒だ」 にこっと笑いかけられて、思わずつられて私の頬も緩む。「......って、違う違う。 なんで私も一緒に行かなきゃいけないのよ。 ってか、さっきから気になってたんだけど、その〝ファム〟って呼び方、何?」「<運命の女神>のことだ。 あんたは、俺の番になる女だからな」「つまり、愛称ってわけね。......いや、ならないからね? ってか、番って、意味分かって言ってる? 結婚するってことよね??」 もしかしたら、コウヤのいた世界では、別の意味をもつ可能性もあるかもしれない。 そう思い、念ため聞いてみた。「番は、共に子を生し、一生を添い遂げる相手という意味だ。 俺たち<獣人>は、生涯をただ1人の相手だけと決めたら、死ぬまで離れることはない」 コウヤが真っ直ぐ私を見つめて言うので、私は、どきっとした。「ふ、ふぅーん......ロマンチックなのね。 でも、そんな大切な相手を簡単に決めちゃっていいの? 私たち、知り合ったばかりよ」「簡単なんかじゃない。行き倒れてた俺を助けてくれたのは、ファムだ

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