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エレンの視点 ────── 「な、なんだ!!!この化け物はぁ!!!?」 「こんな……!!こんな戦い方があるか……!!」 通路の先で、研究員たちが恐怖に歪んだ顔で叫んでいる。 化け物、か。 そう見えるだろうな。 「はぁっ!!!!」 俺は、目の前でたじろぐ男の頭を掴むと、その顔面へと、容赦なく強烈な膝蹴りを叩き込んだ。 ゴシャッ!!! 鼻骨が砕け、前歯が弾け飛ぶ感触が、膝を通して伝わってくる。 「がはぁ……っ……!」 男の身体を、そのまま前方の集団へと蹴り飛ばす。 それは、まるで肉の砲弾。 「ぐわぁ!!!」 蹴り飛ばされた男は、後方の研究員たちを巻き込み、もんどりうって弾け飛んだ。 その一瞬の隙を突き、背後から俺の首を狙う、殺気の気配。 振り下ろされる剣の軌道を、紙一重で見切り、その剣を持つ腕を内側から掴む。 そして、そのまま、肘の関節を、くの字の反対側へとへし折った。 ゴキャッ!!!! 「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!お、俺の腕がァァ!!!」 ありえない方向に曲がった腕から、剣が滑り落ちる。 俺は、その落下位置を予測すると、こちらへ向かってくるもう一人の男目掛けて、つま先で蹴り上げた。 「がっ……!!!」 宙を舞った剣が、男の太ももに深々と突き刺さり、その場に縫い付ける。 俺が歩いた道は……血と悲鳴で彩られた、地獄と化していた。 もう、50人は軽く無力化しただろうか。 あれほど耳障りだった無機質なアナウンスも、いつの間にか聞こえなくなっていた。 *** そして、俺ははたどり着いた。 施設の最奥、ひときわ大きな鉄の扉の前へと。 中から、微かな呻き声が聞こえる。 躊躇なく、扉を蹴り破る。 そこは、先程の牢屋よりもさらに広く、薄暗い空間だった。 壁一面に並んだ檻の中には、虚ろな目をした、数多くの人間が捉えられている。 その中に、見覚えのある小さな姿を、私は見つけた。 「おい」 一番近くの檻にいたソウコに、声をかける。 「うわぁぁぁ!!!!!!!!」 彼は、血塗れの俺の姿を見て、甲高い悲鳴を上げた。 「叫ぶな。お前たちを助けに来た」 「た、たすけ……!? あなた、その血の量……大丈夫なの!?」 「心配するな。返り血だ」 「か、返り血……!?」 俺は、奪った剣で、ソウコの檻の錠前を、力任せに叩き斬った。 金属が断ち切れる甲高い音と共に、扉が開く。 「うっそぉ……」 俺はそのまま、他の者たちの牢屋の扉も、次々と破壊して回る。 「ね、ねぇ! 金髪の、優しそうなお姉さんは見なかった!?」 解放されたソウコが、俺の足元に駆け寄り、そう尋ねてきた。 エレナを、心配してくれている。 その事実に、……私の心の奥底で燃え盛っていた怒りの炎が、ほんの少しだけ、静かに揺らめいた。 「ああ。彼女なら、もう大丈夫だ。さあ、行くぞ」 「は、はい!!!」 ソウコに続き、他の者たちも、おずおずと私の後ろへと続く。 まあ、私の姿を見て恐怖に歪んではいるが、少なくとも、私が危害を加えるつもりはないということは、理解しただろう。 *** もう少しで、この忌まわしい建物から出られる。 光が見える出口へと、足を速めた、その時だった。 一人の男が、まるでずっとそこにいたかのように、静かに立っていた。 「これはこれは……。お久しぶりですね、エレンさん」 その、穏やかで、どこか学者然とした男の名を、私は知っている。 「ラムザス……」 「ふむ……。とんでもない強さの人間が脱獄し、記憶の塔が死屍累々のような状態になっている……と伺いましたが、まさか、あなただったとはね」 ラムザスは、私の後ろにいる者たちに、慈しむような視線を向けた。 「そこを退け」 「お姉さん……! アイツ、強いから気をつけて……」 ソウコが、怯えたように私の服の裾を掴む。 「被験体の皆さん。元の牢屋にお戻りなさい。そうすれば、甘い記憶を与えてあげましょう。家族との、幸せな記憶をね」 その言葉に、しかし、誰も動かない。 「……どうやら、お前の言葉に乗る愚か者はいないようだな」 「……残念です」 ラムザスは、心底残念そうに、小さく息を吐くと、腰から一本の金属の棒のようなものを取り出した。 その棒に、彼が魔力を流し込むと、銀色の光が走り、瞬く間に一本の美しい直剣へと姿を変える。 「……魔具か」 「その通り」 魔具……私には縁のない代物だが、魔力を与えることで強力な力を発揮する、便利な道具。市場には滅多に出回らず、所有者は極僅かだ。 これを持っているということは、こいつは……只者ではない。 「はっ!!!」 ラムザスが、炎を纏った剣で突撃してくる。 私はそれを、剣で受け止めた。 キィンッ、と甲高い音が響き、灼熱の空気が肌を焼く。 「ほぉ!!この速度を、難なく受け止めますか!!」 「ふっ………!!!」 火花が散り、鍔迫り合いになる。 だが、今持っている剣に、ミシリ、と嫌な感触が伝わった。ヒビが入ったか。 無理な扱いをしたのだ、仕方ない。 だが……愛着が湧き始めた物が、こうも容易く壊れるのは、気分の良いものではないな。 私は、ヒビの入った剣で力任せに弾き返すと同時、全力でラムザス目掛けて投擲した。 鋭く縦回転しながら飛んでいく剣を、ラムザスは驚いた顔で、どうにか自身の剣で弾き飛ばす。 その、一瞬の隙。 それで、十分だった。 「なっ!?」 ラムザスが、私を視界に捉えた時には、もう遅い。 私は、司祭から受け取った、真新しい二本の短剣を両手に構え、既に奴の目の前に迫っていた。 「ぐぅ……ぉ!!!」 振り下ろされた二本の短剣を、ラムザスはどうにか受け止めたが、その衝撃を殺しきれず、後方へと大きく吹き飛んでいった。────エレナの視点──── 石造りの螺旋階段を、私たちは息を切らしながら駆け上がっていた。 ごつごつとした壁が、手に持つ灯りの光を不気味に反射している。下層から響いていた激しい戦闘音は、もう聞こえない。石段を踏みしめる足音と、荒い息遣いだけが、神殿の静寂を破っていた。 「グレンさん、大丈夫ですかね……!?」 ミストさんの不安そうな声が、静寂に包まれた階段に響いた。その声には、仲間への深い心配が込められている。 「……きっと、大丈夫!」 何の確証もない。けれど、私の胸の奥で、温かい光のようなものが「大丈夫だ」と囁いていた。それは昔から私の中に宿る、聖女としての直感のようなもの。 「私の直感が、そう告げてるの!」 「えぇ!? そ、そんな直感が……!?」 ミストさんが驚きの声を上げる。 (私も原理は分からんが……エレナには、その力が間違いなく備わっている。運命そのものを、その祈りの力で強引にねじ曲げてしまうような、不思議な力がな。だから、今回もきっと大丈夫だ) エレンの声が、私の内側で静かに響いた。 (うん……!) 彼の言葉が、私の直感を後押ししてくれる。 「それなら良いが……慢心はするなよ」 シイナさんが、冷静に釘を刺した。 「未来が見えるからと、それに胡坐をかいて行動するようでは、今の暗明の聖女と何も変わらないからな」 「……うん、そうだね。私は、この直感を絶対に正しいなんて、傲慢なことは思わないよ」 私にできるのは、この直感を信じつつ、でも決して過信しないこと。神様のお導きを感じながらも、自分の足で歩むこと。 「そこが、エレナさんの素敵なところですね」 シオンさんが、静かに微笑んだ。 その時、長く続いた階段が終わり、私たちの目の前に、だだっ広い広間が見えてきた。天井は高く、月光が差し込む窓から、青白い光が石床を照らしている。 「きっと、ここにも残りの騎士が待ち構えていることだろう」 「その時は、私が残ります」 シオンさんの言葉に、ミストさんが待ったをかける。 「いやいやいや! そこは私でしょうー!!」 「……?」 シオンさんが、心底不思議そうに首を傾げた。 「そのお顔はなんですかァァ!?」 「いえ……だってあなたは、戦いがあまり得意な方ではないでしょ
**────エレナの視点────** 「じゃあ皆、各々準備してくれ。五分後にはここを出て、リディアさんを助けに行くぞ」 シイナさんの力強い言葉に、私たちは一斉に頷いた。この小さな家の中に、静かだが確固たる決意が満ちている。みんなの表情に迷いはない。先ほどまでの混乱が嘘のように、今は一つの目標に向かって心が結束していた。 五分という短い時間の中で、私たちはそれぞれの装備を確認し、心の準備を整える。月光が窓から差し込み、武器の金属部分を青白く照らしていた。この静寂が、嵐の前の静けさのように感じられてならない。 「準備はいいか? 今回、ジンが大方の騎士は無力化してくれたという話だ。恐らく…すぐに四騎士との戦闘になるだろう」 シイナさんの声に緊張が走る。四騎士——この国の最強戦力との戦いが待っているのだ。 「ここの騎士たちの数は多かったからね。でも、気を付けて」 ジンさんが軽やかに言葉を続ける。 「流石に全部を倒すわけにもいかなかったから、十人程度は残ってるはずだから」 「それでも、そんなに多くの騎士を戦闘不能にするなんて……」 私は驚きを隠せなかった。一人でそれほどの騎士を相手にするなんて、どれほどの実力者なのだろう。 「はは、聖女様に褒めてもらえるなんて。なんだか嬉しいよ」 ジンさんの表情に、子供のような無邪気さが浮かんでいる。しかし、その奥に潜む何かが、私の心に小さな不安を芽生えさせた。 「ね、念の為に聞くのですが……殺しはしてないですよね……?」 恐る恐る尋ねた私の質問に、ジンさんの表情がふっと変わった。まるで別人のような、冷たい光が瞳に宿る。 「……剣を抜いた以上、お互いの命が尽きるまで刀を振り合うべきだと僕は思っているんだ」 その一言に、背筋が凍りつくような恐怖を感じた。ジンさんの声音には、戦いへの狂気じみた情熱が込められている。私の心臓が、ドクドクと激しく鼓動を刻んでいた。 「でも……今回は大丈夫。殺してないよ」 そう言って見せる笑顔は、まるで何事もなかったかのように穏やかだった。しかし、その急激な変化が、かえって不気味さを増している。 (今回は……? ということは、普段は……?) 心の奥で、暗い想像が渦巻いていた。 * * * 五分後。静寂を破って、私たちは行動を開始した
**────エレナの視点────**「という訳なんだ」ジンさんの軽やかな口調で語られた残酷な現実に、私の心は氷のように凍りついてしまった。リディアさんが捕らえられて、処刑される。その事実が、どうしても受け入れることができなかった。「そ、そんな……嘘ですよね??」私の声が震えている。まるで悪夢から覚めたいと願うかのように、その言葉にすがりついた。「……こんな時に嘘なんてつかないよ」ジンさんの飄々とした口調が、現実の重さをより一層際立たせる。「……くっ!!!」シイナさんが拳を強く握りしめ、歯を食いしばっている。その青白い顔に、激しい怒りと悲しみが刻まれていた。「皆は先にこの国を脱出してくれ……!俺は……俺はリディアさんを助けに行く!!」シイナさんが勢いよく立ち上がり、扉に向かって歩き出そうとする。その瞳に宿る決意の炎は、誰にも止められないほど激しく燃えていた。「待てよ!!そんなの俺たちだって同じ気持ちだ!」グレンさんが力強く立ち上がる。彼の声には、シイナさんに負けないほどの強い意志が込められていた。「ええ……彼女には計り知れないほど多大な恩があります。なので……グレンと私でリディアさんを救出に向かいます」シオンさんの顔に、鋼のような決意が浮かんでいる。「シイナ、あなたこそエレナさんやミストさんと共に先に脱出してください」「だめだ!今回はパーティリーダーの責任として、俺が行く!」「シイナ!」「俺が、彼女を助けてすぐに戻ればいいことだろう!」「おいシイナ!俺がやられたテッセンとかいうやつの事を忘れたわけじゃないだろ!?少し落ち着け!」三人の激しい言い争いが、小さな家の中に響き渡る。誰も一歩も引かない様子で、感情のままに言葉をぶつけ合っていた。「あわわわわ……みなさん!こんな時に言い争ってる場合じゃないですって!」ミストさんが慌てて三人の間に割り込もうとするが、激しい感情の渦に巻き込まれ、弾き飛ばされてしまう。「ぎゃー!!」(みんな……冷静さがすっかり抜けて、これじゃあ救える命だって救えないよ……!)(それに……私だってリディアさんを助けたいのに……)私の心の中で、やりきれない想いが渦巻いている。みんなの気持ちは痛いほど分かるけれど、このままでは誰も救えない。そう考えていた、まさにその瞬間だった。私の意識が、まるで深い
**────ジンのの視点────** やる気か、と。僕は心の中で、小さく呟いた。 ここは冒険者ギルド。依頼と情報が交差する、いわば中立の聖域だ。そんな場所で騎士が刀を抜き、殺し合いを演じようというのだから、面白い。実に、面白い。 僕は向かってきた騎士の剣戟をいなすどころか、その勢いを逆に利用して体ごと弾き飛ばした。空中で無様に体勢を崩した彼の喉笛へ、僕は逆手に持ち替えた刃を、まるで吸い込まれるかのように滑らせる。「がぁっ……!」 声にならない呻きを漏らし、騎士が床に崩れ落ちた。口からごぼりと泡を吹き、痙攣する手足が、彼の命が尽きかけていることを示している。 仲間の一人が一瞬で無力化されたというのに、残された騎士たちは状況が飲み込めていないらしい。驚愕に見開かれた目が、滑稽なほどにこちらを向いていた。「き、貴様っ! 正気か!?」「あはは、面白いことを言うね、君。先にその物騒な鉄の獲物を抜いたのは、そっちじゃないか」「そ、それにしてもだ! 我々騎士に刃向かうなど、あってはならないことだぞ!?」「残念だけど、僕はそんな立派な冒険者様じゃない。僕はジン。世界を渡り歩く、ただの傭兵だからね」「ジン……!?」 その名に、騎士の一人が息を呑んだ。どうやら僕の名も、多少は裏の世界に知れ渡っているらしい。「くそっ……! やられて黙っていては、騎士の名が廃る! こいつも捕縛しろ!」 別の騎士が、その手に蒼い水の魔力を纏わせながら、僕へと突進してくる。ギルドの中で属性魔法を放つ? ああ、本当に、愚かだな。「はぁ……後悔しても、知らないよ」 僕は腰に差した愛刀「雪月花」の鯉口を切ると、一閃、抜き放った。 (鳴神式抜刀術――神威の型。) 空気を切り裂く音だけが響き、騎士の右腕が、ごとり、と鈍い音を立てて石床に転がった。「ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!!!! お、俺の腕がァァァァッ!!」 やかましいね。腕の一本や二本、飛んだくらいで喚くなんて。自分から仕掛けておきながら、いざ返り討ちに遭えば獣のように吠え立てる。弱者の典型だ。「お、お前……! 自分が何をしたか、分かっているのか!?」「さっきも言ったはずだよ。先に始めたのは、そっちだってね」 僕は刀身に付いた血を振るい、ゆらり、と笑みを浮かべた。「まだまだ足りないな。……もっと、殺り合おうよ」 ああ、い
(この声に気配……覚えがある)エレンの意識が、私の奥底で警戒の炎を燃やし始める。(私もそう感じてた……なんだか、すごく(身に覚えがあるような……)(確か、夜の街で我々を襲撃してきた傭兵……名は確かジン……と言ったか)その名前を耳にした瞬間、あの記憶が、鮮血のように鮮やかに脳裏へと蘇ってきた。霊たちが彷徨う夜の街で、昼間の平穏な探索が一変した瞬間。突如として現れた謎の傭兵——。その圧倒的な実力は私には理解の範疇を超えていたけれど、エレン曰く、これまで戦った敵の中でも別格の強さを誇っていた……と。(そ、その人がなんでこんな場所に!? まさか、私たちを追ってきたの!?)(さあな。だが……敵意は微塵も感じられない。それに何か重要な情報を知っているようだ)(ここは一か八か、直接対峙してみるのも選択肢の一つだろう)「エレンが敵意は感じないから……出てみるのも一つの手だって……」私はシイナさんに、内心の不安を隠しながらそう告げる。「敵意を感じない……か。グレンもミストも意識を取り戻したことだし、直接話してみるか?」シイナさんの声に、慎重な判断力が込められている。(ああ、そうしてみてくれ)「そうして見てほしいって……」エレンの助言をそう伝えると、シイナさんが深く頷き、警戒を込めて扉の前へと歩を進めた。「何用だ」シイナさんの声が、扉越しに響く。「あれ、やっぱりいるんじゃないですかー」その飄々とした口調に、底知れない余裕が滲んでいる。「やあ、僕はジン。リディアっていう方からの重要な伝言があるんだけど、扉を開けてもらえないかな?」「残念だが、こちらにも複雑な事情があってな。このままでお願いしたい」シイナさんの慎重な対応に、扉の向こうから軽やかな笑い声が響く。「……あーそっか、いまこの国から追われてるんだっけ。それなら心配しなくていいよ」「大体の騎士は僕が片付けたから」「な、何だと!?」シイナさんの声が、驚愕に震える。「えっ!??」私も思わず声を上げてしまった。「ま、待て! この国の騎士一人一人は精鋭と言っても過言ではないほどに優秀だ。それをお前は単身で制圧したというのか?」「はは。まぁ確かにこの国の騎士はよく鍛錬されていたね。でも、僕も実力には自信があるんだ」その軽やかな口調で語られる内容の恐ろしさに、私たちは言葉を失った
**────エレナの視点────**次の日。「みなさん!!!!本当にご迷惑をおかけしました!!!」「本当に面目ねぇ……!!!今回迷惑かけた分は、必ず挽回するぜ!」二人が目を覚ましたんだ。あんなに傷だらけで、ずっと目を覚まさなかったグレンさんも元気になって、本当に良かったと思う……。でも……。聞かないといけない。二人に、何があったのか。「それより……二人に何があったんですか?なんで……グレンさんはあんなに傷だらけだったんですか……?」私がそう尋ねると、グレンさんが急に口を噤んでしまう。数秒の重い沈黙が部屋を支配すると、やがて言いにくそうにグレンさんが口を開き始めた。「お前たちが情報収集に行った数時間後、とんでもなく強い奴が現れたんだ」「とんでもなく強い奴?」シイナさんの声に、緊張が走る。「ああ。全身に見たこともない鎧を着て、刀を使っていた」(見たこともない鎧に刀……か)エレンの声が、意識の奥で静かに響く。「そいつは……全く俺の攻撃が通じなかった」「なに!?グレン、お前の攻撃がか!?」シイナさんは心底驚いたような様子を見せる。グレンさんの実力を知っている彼だからこその驚きだった。(…………)エレンが沈黙している。何かを考えているみたいだ。「ああ、正直全く底が見えなかったぜ。戦ってる感触としては……エレンに近かったかもな」「エレンに……?」私の声が震える。エレンと同じくらい強いなんて……。「それは……かなり厄介そうですね」シオンさんの美しい顔に、珍しく深刻な表情が浮かんでいる。「厄介なんてもんじゃねぇよ。あいつは俺の攻撃を全部受け止めやがった」グレンさんは、私たちのパーティ内でも屈指の攻撃力を持つ