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エレンの視点 ────── 「お、お姐さん……とんでもなく強いんだね……」 背後から、ソウコの呆然とした声が聞こえる。 「いやはや……本当にお強くて」 ラムザスは、吹き飛んだ衝撃でついたであろう服の汚れを、優雅に払いながら立ち上がった。 「骨が折れますよ」 その言葉を合図に、私とラムザスは、一瞬で互いの間合いをゼロにした。 「そらそらそらそらぁ!!!!!」 「ふっ!はっ!せいっ!!!」 激しい火花が、薄暗い通路を閃光のように照らし出す。 互いの剣がぶつかり合う度に、金属の悲鳴が甲高く木霊する。 振り下ろされる炎の斬撃を、二本の短剣で受け流し、弾き、いなす。 何度も、何度も、私たちは剣を打ち合った。 私は、この打ち合いに、純粋な興奮を覚え始めていた。 (この男……まだ何かを隠しているな。攻撃のひと振りひと振りに、妙な余裕を感じる) だが、 甘い。 お前の剣筋、呼吸、重心の移動……その全てを、私の魂が記憶していく。 ラムザスが、今までで一番の大振りで剣を振り下ろした、その瞬間。 私は、二本の短剣をX字に交差させ、その一撃を正面から受け止めた。 ギィンッ、と耳障りな音が響き、足元の石畳に亀裂が走る。 「ぬぅ!?」 「詰めが、甘い!!」 私は、受け止めた力を利用し、奴の剣を勢い良く上へと弾き飛ばした。 がら空きになった、その胴体。 私は、その腹部と膝に、寸分の狂いもなく、短剣の柄を叩き込んだ。 「がはっ……!!!」 くの字に折れ曲がったラムザスの身体。 私は、そのまま押し出すように、その腹に強烈な膝蹴りを叩き込む。 きりもみ回転しながら吹き飛んだラムザスの身体は、私たちが目指していた出口の壁を、轟音と共にぶち抜いていった。 「えぇ……。あの人が、まるで相手になってない……」 誰かが、信じられないといった様子で呟く。 「ソウコ。お前に頼みがある」 「えっ? なに??」 「お前は、動きが速い。その脚なら、容易くは捕まらないだろう。エレナの仲間を呼んでくるんだ」 「あっ…! あの人たちだね……! わかった……!」 「よし、行け!!」 その言葉を受け、ソウコは身体に雷を纏って駆け出した。 だが、その刹那。 壁の瓦礫の中から、ラムザスが猛烈な速度で飛び出し、ソウコの前に立ちはだかる。 妙だ。急に動きが変わった。 さっきまでの、どこか芝居がかった大振りな動きじゃない。 一切の無駄を削ぎ落とした、洗練された戦闘者の動きになっている。 奴が、ソウコに剣を振り下ろす。 「う、うわっ!!」 キィンッ!!! また激しく火花が散った。 ラムザスが剣を振り下ろしきるより前に、私がその剣を二本の短剣で受け止めたからだ。 だが、 「咄嗟の判断、素晴らしい!! だが!!!!」 「くっ……!」 純粋な、力で押し込まれる。 技術ではない、圧倒的な膂力。私の腕が、ミシミシと悲鳴を上げた。 「ソウコ……! 早く行け!」 「う、うん!」 だが、このままでは押し切られる。 私は、一瞬、腕の力を弛めた。 「なっ……!」 わざと、体勢を崩す。 背後に倒れ込むほどの、完全な脱力。 それによって、前のめりになったラムザスの顎が、がら空きになる。 私は、倒れ込みながら、その顎目掛けて、渾身のサマーソルトキックを叩き込んだ。 ゴッ、と鈍い音がして、よろめくラムザス。 だが、彼は凄まじい爆発力で体勢を立て直すと、また私目掛けて突っ込んできた。 「くっ…!!!」 「ふふふ…! 貴女の弱点……! それは、体格差、そして純粋な力ですね!!」 ちっ……面倒だ……! 再び鍔迫り合いになる中、ラムザスは片手で、私の二本の短剣ごと、押し込み始める。 そして、空いたもう片方の手で、私に殴り掛かってきた。 「ちぃ…!!!」 私はそれを、頭をコンマ数ミリ倒して回避すると、短剣を瞬時に逆手へと持ち替えた。 そして、左の短剣でラムザスの剣を受け止めたまま、右の短剣で、その首筋を狙って横薙ぎに振り払う。 「おおっと!」 ラムザスは、それを最小限の動きで躱した。 どういう事だ? 動きが、まるで別人だ。 さっきまでの、大振りで、どこか芝居がかった動きじゃない。 これは、幾多の死線を潜り抜けてきた、本物の戦士の動き……。 「お前…なにをした?」 「ふふふ。冥土の土産に、教えて差し上げましょう」 ラムザスは、心底楽しそうに、その唇を歪めた。 「過去に存在した、高名な戦士の記憶……それを、この身にインストールしたのですよ!」 「つまり!!! 今の私は、Sランク冒険者と同じくらい……いえ、それ以上に強い!!!!」 「はーっはっはっはっ!!」 高らかな笑い声が、通路に響き渡る。 なるほど。そういう事か。 「ふふふ…!! 都市メモリスには、この様に、誰しもが戦士に! 騎士に! なれる可能性を秘めているのです!! どうですか!? 素晴らしいでしょう!!」 興奮気味に、ラムザスが叫ぶ。 だが、その言葉を聞いて、私の心は、急速に冷めていく。 燃え盛っていた怒りの炎が、消えたわけではない。 それは、絶対零度の氷塊へと、その姿を変えただけだ。 「……くだらないな」 「は???」 信じられない言葉を聞いた、と言わんばかりに、ラムザスが目を見開く。 「そんな、薄っぺらい物差しで、戦士を測るな」 私の声は、自分でも驚くほど、静かだった。 「戦士とは、己が命を懸けて、守るべき者の為に戦うものだ」 「それは、騎士だって同じ事だ。」 「友人、仲間、恋人、家族……それらが背にあるからこそ、戦士は、戦士たり得るのだ」 「くっ……!! そんなものが無くとも!! この記憶の欠片さえあれば!! 誰にだって、戦士や騎士になり得るのです!!」 「それを……!! これから、貴女のその身をもって、証明して差し上げましょう!!」 ラムザスの絶叫が、虚しく響いた。────エレナの視点──── 石造りの螺旋階段を、私たちは息を切らしながら駆け上がっていた。 ごつごつとした壁が、手に持つ灯りの光を不気味に反射している。下層から響いていた激しい戦闘音は、もう聞こえない。石段を踏みしめる足音と、荒い息遣いだけが、神殿の静寂を破っていた。 「グレンさん、大丈夫ですかね……!?」 ミストさんの不安そうな声が、静寂に包まれた階段に響いた。その声には、仲間への深い心配が込められている。 「……きっと、大丈夫!」 何の確証もない。けれど、私の胸の奥で、温かい光のようなものが「大丈夫だ」と囁いていた。それは昔から私の中に宿る、聖女としての直感のようなもの。 「私の直感が、そう告げてるの!」 「えぇ!? そ、そんな直感が……!?」 ミストさんが驚きの声を上げる。 (私も原理は分からんが……エレナには、その力が間違いなく備わっている。運命そのものを、その祈りの力で強引にねじ曲げてしまうような、不思議な力がな。だから、今回もきっと大丈夫だ) エレンの声が、私の内側で静かに響いた。 (うん……!) 彼の言葉が、私の直感を後押ししてくれる。 「それなら良いが……慢心はするなよ」 シイナさんが、冷静に釘を刺した。 「未来が見えるからと、それに胡坐をかいて行動するようでは、今の暗明の聖女と何も変わらないからな」 「……うん、そうだね。私は、この直感を絶対に正しいなんて、傲慢なことは思わないよ」 私にできるのは、この直感を信じつつ、でも決して過信しないこと。神様のお導きを感じながらも、自分の足で歩むこと。 「そこが、エレナさんの素敵なところですね」 シオンさんが、静かに微笑んだ。 その時、長く続いた階段が終わり、私たちの目の前に、だだっ広い広間が見えてきた。天井は高く、月光が差し込む窓から、青白い光が石床を照らしている。 「きっと、ここにも残りの騎士が待ち構えていることだろう」 「その時は、私が残ります」 シオンさんの言葉に、ミストさんが待ったをかける。 「いやいやいや! そこは私でしょうー!!」 「……?」 シオンさんが、心底不思議そうに首を傾げた。 「そのお顔はなんですかァァ!?」 「いえ……だってあなたは、戦いがあまり得意な方ではないでしょ
**────エレナの視点────** 「じゃあ皆、各々準備してくれ。五分後にはここを出て、リディアさんを助けに行くぞ」 シイナさんの力強い言葉に、私たちは一斉に頷いた。この小さな家の中に、静かだが確固たる決意が満ちている。みんなの表情に迷いはない。先ほどまでの混乱が嘘のように、今は一つの目標に向かって心が結束していた。 五分という短い時間の中で、私たちはそれぞれの装備を確認し、心の準備を整える。月光が窓から差し込み、武器の金属部分を青白く照らしていた。この静寂が、嵐の前の静けさのように感じられてならない。 「準備はいいか? 今回、ジンが大方の騎士は無力化してくれたという話だ。恐らく…すぐに四騎士との戦闘になるだろう」 シイナさんの声に緊張が走る。四騎士——この国の最強戦力との戦いが待っているのだ。 「ここの騎士たちの数は多かったからね。でも、気を付けて」 ジンさんが軽やかに言葉を続ける。 「流石に全部を倒すわけにもいかなかったから、十人程度は残ってるはずだから」 「それでも、そんなに多くの騎士を戦闘不能にするなんて……」 私は驚きを隠せなかった。一人でそれほどの騎士を相手にするなんて、どれほどの実力者なのだろう。 「はは、聖女様に褒めてもらえるなんて。なんだか嬉しいよ」 ジンさんの表情に、子供のような無邪気さが浮かんでいる。しかし、その奥に潜む何かが、私の心に小さな不安を芽生えさせた。 「ね、念の為に聞くのですが……殺しはしてないですよね……?」 恐る恐る尋ねた私の質問に、ジンさんの表情がふっと変わった。まるで別人のような、冷たい光が瞳に宿る。 「……剣を抜いた以上、お互いの命が尽きるまで刀を振り合うべきだと僕は思っているんだ」 その一言に、背筋が凍りつくような恐怖を感じた。ジンさんの声音には、戦いへの狂気じみた情熱が込められている。私の心臓が、ドクドクと激しく鼓動を刻んでいた。 「でも……今回は大丈夫。殺してないよ」 そう言って見せる笑顔は、まるで何事もなかったかのように穏やかだった。しかし、その急激な変化が、かえって不気味さを増している。 (今回は……? ということは、普段は……?) 心の奥で、暗い想像が渦巻いていた。 * * * 五分後。静寂を破って、私たちは行動を開始した
**────エレナの視点────**「という訳なんだ」ジンさんの軽やかな口調で語られた残酷な現実に、私の心は氷のように凍りついてしまった。リディアさんが捕らえられて、処刑される。その事実が、どうしても受け入れることができなかった。「そ、そんな……嘘ですよね??」私の声が震えている。まるで悪夢から覚めたいと願うかのように、その言葉にすがりついた。「……こんな時に嘘なんてつかないよ」ジンさんの飄々とした口調が、現実の重さをより一層際立たせる。「……くっ!!!」シイナさんが拳を強く握りしめ、歯を食いしばっている。その青白い顔に、激しい怒りと悲しみが刻まれていた。「皆は先にこの国を脱出してくれ……!俺は……俺はリディアさんを助けに行く!!」シイナさんが勢いよく立ち上がり、扉に向かって歩き出そうとする。その瞳に宿る決意の炎は、誰にも止められないほど激しく燃えていた。「待てよ!!そんなの俺たちだって同じ気持ちだ!」グレンさんが力強く立ち上がる。彼の声には、シイナさんに負けないほどの強い意志が込められていた。「ええ……彼女には計り知れないほど多大な恩があります。なので……グレンと私でリディアさんを救出に向かいます」シオンさんの顔に、鋼のような決意が浮かんでいる。「シイナ、あなたこそエレナさんやミストさんと共に先に脱出してください」「だめだ!今回はパーティリーダーの責任として、俺が行く!」「シイナ!」「俺が、彼女を助けてすぐに戻ればいいことだろう!」「おいシイナ!俺がやられたテッセンとかいうやつの事を忘れたわけじゃないだろ!?少し落ち着け!」三人の激しい言い争いが、小さな家の中に響き渡る。誰も一歩も引かない様子で、感情のままに言葉をぶつけ合っていた。「あわわわわ……みなさん!こんな時に言い争ってる場合じゃないですって!」ミストさんが慌てて三人の間に割り込もうとするが、激しい感情の渦に巻き込まれ、弾き飛ばされてしまう。「ぎゃー!!」(みんな……冷静さがすっかり抜けて、これじゃあ救える命だって救えないよ……!)(それに……私だってリディアさんを助けたいのに……)私の心の中で、やりきれない想いが渦巻いている。みんなの気持ちは痛いほど分かるけれど、このままでは誰も救えない。そう考えていた、まさにその瞬間だった。私の意識が、まるで深い
**────ジンのの視点────** やる気か、と。僕は心の中で、小さく呟いた。 ここは冒険者ギルド。依頼と情報が交差する、いわば中立の聖域だ。そんな場所で騎士が刀を抜き、殺し合いを演じようというのだから、面白い。実に、面白い。 僕は向かってきた騎士の剣戟をいなすどころか、その勢いを逆に利用して体ごと弾き飛ばした。空中で無様に体勢を崩した彼の喉笛へ、僕は逆手に持ち替えた刃を、まるで吸い込まれるかのように滑らせる。「がぁっ……!」 声にならない呻きを漏らし、騎士が床に崩れ落ちた。口からごぼりと泡を吹き、痙攣する手足が、彼の命が尽きかけていることを示している。 仲間の一人が一瞬で無力化されたというのに、残された騎士たちは状況が飲み込めていないらしい。驚愕に見開かれた目が、滑稽なほどにこちらを向いていた。「き、貴様っ! 正気か!?」「あはは、面白いことを言うね、君。先にその物騒な鉄の獲物を抜いたのは、そっちじゃないか」「そ、それにしてもだ! 我々騎士に刃向かうなど、あってはならないことだぞ!?」「残念だけど、僕はそんな立派な冒険者様じゃない。僕はジン。世界を渡り歩く、ただの傭兵だからね」「ジン……!?」 その名に、騎士の一人が息を呑んだ。どうやら僕の名も、多少は裏の世界に知れ渡っているらしい。「くそっ……! やられて黙っていては、騎士の名が廃る! こいつも捕縛しろ!」 別の騎士が、その手に蒼い水の魔力を纏わせながら、僕へと突進してくる。ギルドの中で属性魔法を放つ? ああ、本当に、愚かだな。「はぁ……後悔しても、知らないよ」 僕は腰に差した愛刀「雪月花」の鯉口を切ると、一閃、抜き放った。 (鳴神式抜刀術――神威の型。) 空気を切り裂く音だけが響き、騎士の右腕が、ごとり、と鈍い音を立てて石床に転がった。「ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!!!! お、俺の腕がァァァァッ!!」 やかましいね。腕の一本や二本、飛んだくらいで喚くなんて。自分から仕掛けておきながら、いざ返り討ちに遭えば獣のように吠え立てる。弱者の典型だ。「お、お前……! 自分が何をしたか、分かっているのか!?」「さっきも言ったはずだよ。先に始めたのは、そっちだってね」 僕は刀身に付いた血を振るい、ゆらり、と笑みを浮かべた。「まだまだ足りないな。……もっと、殺り合おうよ」 ああ、い
(この声に気配……覚えがある)エレンの意識が、私の奥底で警戒の炎を燃やし始める。(私もそう感じてた……なんだか、すごく(身に覚えがあるような……)(確か、夜の街で我々を襲撃してきた傭兵……名は確かジン……と言ったか)その名前を耳にした瞬間、あの記憶が、鮮血のように鮮やかに脳裏へと蘇ってきた。霊たちが彷徨う夜の街で、昼間の平穏な探索が一変した瞬間。突如として現れた謎の傭兵——。その圧倒的な実力は私には理解の範疇を超えていたけれど、エレン曰く、これまで戦った敵の中でも別格の強さを誇っていた……と。(そ、その人がなんでこんな場所に!? まさか、私たちを追ってきたの!?)(さあな。だが……敵意は微塵も感じられない。それに何か重要な情報を知っているようだ)(ここは一か八か、直接対峙してみるのも選択肢の一つだろう)「エレンが敵意は感じないから……出てみるのも一つの手だって……」私はシイナさんに、内心の不安を隠しながらそう告げる。「敵意を感じない……か。グレンもミストも意識を取り戻したことだし、直接話してみるか?」シイナさんの声に、慎重な判断力が込められている。(ああ、そうしてみてくれ)「そうして見てほしいって……」エレンの助言をそう伝えると、シイナさんが深く頷き、警戒を込めて扉の前へと歩を進めた。「何用だ」シイナさんの声が、扉越しに響く。「あれ、やっぱりいるんじゃないですかー」その飄々とした口調に、底知れない余裕が滲んでいる。「やあ、僕はジン。リディアっていう方からの重要な伝言があるんだけど、扉を開けてもらえないかな?」「残念だが、こちらにも複雑な事情があってな。このままでお願いしたい」シイナさんの慎重な対応に、扉の向こうから軽やかな笑い声が響く。「……あーそっか、いまこの国から追われてるんだっけ。それなら心配しなくていいよ」「大体の騎士は僕が片付けたから」「な、何だと!?」シイナさんの声が、驚愕に震える。「えっ!??」私も思わず声を上げてしまった。「ま、待て! この国の騎士一人一人は精鋭と言っても過言ではないほどに優秀だ。それをお前は単身で制圧したというのか?」「はは。まぁ確かにこの国の騎士はよく鍛錬されていたね。でも、僕も実力には自信があるんだ」その軽やかな口調で語られる内容の恐ろしさに、私たちは言葉を失った
**────エレナの視点────**次の日。「みなさん!!!!本当にご迷惑をおかけしました!!!」「本当に面目ねぇ……!!!今回迷惑かけた分は、必ず挽回するぜ!」二人が目を覚ましたんだ。あんなに傷だらけで、ずっと目を覚まさなかったグレンさんも元気になって、本当に良かったと思う……。でも……。聞かないといけない。二人に、何があったのか。「それより……二人に何があったんですか?なんで……グレンさんはあんなに傷だらけだったんですか……?」私がそう尋ねると、グレンさんが急に口を噤んでしまう。数秒の重い沈黙が部屋を支配すると、やがて言いにくそうにグレンさんが口を開き始めた。「お前たちが情報収集に行った数時間後、とんでもなく強い奴が現れたんだ」「とんでもなく強い奴?」シイナさんの声に、緊張が走る。「ああ。全身に見たこともない鎧を着て、刀を使っていた」(見たこともない鎧に刀……か)エレンの声が、意識の奥で静かに響く。「そいつは……全く俺の攻撃が通じなかった」「なに!?グレン、お前の攻撃がか!?」シイナさんは心底驚いたような様子を見せる。グレンさんの実力を知っている彼だからこその驚きだった。(…………)エレンが沈黙している。何かを考えているみたいだ。「ああ、正直全く底が見えなかったぜ。戦ってる感触としては……エレンに近かったかもな」「エレンに……?」私の声が震える。エレンと同じくらい強いなんて……。「それは……かなり厄介そうですね」シオンさんの美しい顔に、珍しく深刻な表情が浮かんでいる。「厄介なんてもんじゃねぇよ。あいつは俺の攻撃を全部受け止めやがった」グレンさんは、私たちのパーティ内でも屈指の攻撃力を持つ