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#5:討伐報告

작가: 渡瀬藍兵
last update 최신 업데이트: 2025-05-19 20:11:25

「本当に……本当に、ありがとうございました! エレナ様、そしてエレン様にも、どうかよろしくお伝えください!」

ギルドの受付カウンター。

分厚いオーク材のデスクから身を乗り出すようにして、馴染みの受付嬢が深々と頭を下げた。

彼女の声には、心からの感謝と、張り詰めていた糸が切れたような安堵が滲んでいて、酒場の喧騒の中でもひときわ真っ直ぐにエレナの胸へ届いた。

「依頼を受けたのは、エレンですから。次に本人が夜に顔を出したとき、直接お礼を伝えてあげてください。……きっと、喜びますから」

エレナはにっこりと微笑み、彼女の手をそっと包み込むように言葉を添える。

「もちろんです! 必ず、感謝をお伝えします! ……それにしても」

受付嬢は顔を上げ、ふと声を潜めるような仕草を見せた。

周囲の冒険者たちに聞かれぬよう、身を寄せて囁く。

「今回の特殊個体のグール……討伐後の調査チームから、信じられない報告が上がってきているんです。『もし、ギルドに所属する他の冒険者が担当していたら、単独での討伐は不可能だったかもしれない』と」

(ベテランの冒険者の方々でも……? 不可能?)

エレナは思わず、小さく息を呑んだ。

この国の上位冒険者といえば、一国が抱える“戦略級兵器”にも等しい、選ばれし実力者たちだ。

魔法の粋を極めた彼らですら、苦戦必至の相手だったというの?と、エレナは戸惑う。

「そんなに……手強い個体だったのですか……?」

驚きと戸惑いが、素直に声に出てしまう。

受付嬢は、神妙な面持ちで、こくりと頷いた。

「ええ。回収した体組織を王立魔法研究所で緊急分析したところ……通常の魔物とは構造が根本から異なる、『魔法耐性』の反応が出たそうです」

「──!」

彼女の言葉に、背筋が凍るような感覚を覚える。

魔法研究所。その名は、あの下水道で出会った奇妙な研究員、ミストの姿を連想させた。

「だからこそ……皮肉な話ですけど、その規格外の怪物を無傷で、かつ完璧な形で処理できたのは、この国で唯一“魔法が一切使えない”エレンさんだったからこそ……というのが、ギルドマスターの正式な見解なんです」

ドクン、と心臓が大きく脈打った。

もし、他の高名な魔人たちが挑んでいたら?

既存の魔法理論に縛られ、効かない攻撃を繰り返し、あの強靭な肉体にすり潰されていたかもしれない。

(たしかに……そうかもしれない)

エレナ自身、慢心していた。「グール程度なら浄化の光で祓える」と、心のどこかで高を括っていたから。

けれどエレナは、エレンの五感を通じて“視て”しまった。

あの異形には、常識も、経験則も、魔法の理すら通用しなかったことを。

だからこそ──魔法を持たない「持たざる者」であるエレンだけが。

己の肉体と剣技、そして極限まで研ぎ澄まされた戦術眼だけを頼りに、“物理的に断ち切る”という原始的な解法で勝利をもぎ取れたのだ。

(ふふ……。要するに、私は時代遅れの蛮族というわけだ。褒め言葉として受け取っておこう)

心の奥底で、彼らしい自嘲と、乾いた笑いが響いた。

けれどその響きには、確かな自負が混じっている。

「でも本当に……あんな怪物を相手に、被害者を一人も出さずに解決するなんて。エレンさん、やっぱり素敵です! 実は、ギルドの女性職員の間でも『隠れファン』が多いんですよ?」

受付嬢が頬をほんのりと紅潮させ、瞳をきらきらと輝かせて言った。

(……ね、エレン。聞こえた? やっぱり皆、エレンのことちゃんと見てくれてるんだよ。憧れの的なんだって)

(……フン。私がその場にいなければ、そういう世辞も、まあ……悪くはない響きだ)

(ふふっ、素直じゃないなぁ)

ぶっきらぼうな言葉とは裏腹に、どこかくすぐったそうな、満更でもない気配が伝わってくる。

そんな微笑ましいやりとりを心の中で交わしていた、その時だった。

受付嬢がふと何かを思い出したように、ポンと手を打った。

「そうだ! エレナ様、もうすぐこの国で“魔法闘技マギ・アーツ”が開催される時期ですけど、ご存知ですか?」

「あ……はい、そういえば。街の掲示板にもポスターが張り出されていましたね」

“魔法闘技”──。

王都魔法研究所が年に一度だけ主催する、王国公認の実戦競技会。

自らの魔法の腕に覚えのある魔導師たちが、その技と誇りを懸けて激突する、“魔導の祭典”とも呼ばれる国一番のイベントだ。

「実は今回……なんと、あのエレンさんにも『特別推薦枠』での招待状が届いているんです! まだ公表前の極秘情報なんですけどね!」

受付嬢の声が、興奮で一段と弾む。

その表情からは、隠しきれない期待が溢れ出ていた。

「えっ……で、でも……エレンは魔法が全く使えないのに、その……“魔法闘技”に出場できるんですか? ルール違反では……」

(おいエレナ。今、私が密かに楽しみにしていた可能性を、真っ向から否定したな……!?)

拗ねたような、それでいて冗談めかした抗議の声が脳内に響く。

(ちょ、ちょっと落ち着いてよエレン! 悪気はないの、本当に素直な疑問だから!)

エレナは慌てて内心で弁解する。

「ご安心ください! その『特別枠』があるのは、後にも先にも“エレンさんだけ”なんです」

受付嬢は胸を張り、自分のことのように誇らしげに言い切った。

「魔法全盛のこの時代に、剣技のみで最強という域に到達したのは……ベルノ王国の長い歴史上、ただ一人だけ。だからこそ、観客も、そして主催者たちも見てみたいんです。魔法を持たない異端の剣士が、魔人だらけの祭典で“魔法をどうねじ伏せるのか”を!」

その言葉には、熱があった。

魔法こそが絶対とされる世界で、剣一本で理不尽に立ち向かう姿。それは人々に、未知の興奮を与えるのだろう。

(……どうする、エレン? 断る理由もなさそうだけど……目立つの、嫌いじゃなかった?)

(……愚問だな。こういう催しは“逃す理由がない”。それに、魔法使いどもがふんぞり返る鼻をへし折るには、絶好の舞台だ)

彼の声には、隠しきれない好戦的な闘争心と、ニヤリと笑う気配が満ちていた。

(……了解。なら、私は全力で応援するだけだね)

「わかりました。帰ったらエレンにそのお話、しっかり伝えておきますね。きっと、『面白そうだ』と剣を磨き始めると思います」

「はいっ! ぜひお願いします! エレンさんの出場が決まったら、私たちギルド職員も総出で応援に行きますから!」

受付嬢はぎゅっと拳を握りしめ、満面の笑みで見送ってくれた。

ギルドを後にし、夕暮れの街へ出る。

エレナは小さく息を吐き、空を見上げた。

“魔法の祭典”に、魔法を全く使わない剣士が挑む。

それは、この世界の常識に対する挑戦だ。

観客や参加者が、本当にそれを受け入れてくれるのか、不安がないわけではない。

けれどエレンはもう、その舞台に立つことを決めている。

その魂が、静かに、しかし熱く燃えているのがわかるから。

(なら、私がすべきことはただ一つ)

彼を信じ、祈り、その背中を見守ることだけだ。

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최신 챕터

  • Soul Link ─見習い聖女と最強戦士─   第115話:立ちはだかる二人

    ────エレナの視点──── 石造りの螺旋階段を、私たちは息を切らしながら駆け上がっていた。 ごつごつとした壁が、手に持つ灯りの光を不気味に反射している。下層から響いていた激しい戦闘音は、もう聞こえない。石段を踏みしめる足音と、荒い息遣いだけが、神殿の静寂を破っていた。 「グレンさん、大丈夫ですかね……!?」 ミストさんの不安そうな声が、静寂に包まれた階段に響いた。その声には、仲間への深い心配が込められている。 「……きっと、大丈夫!」 何の確証もない。けれど、私の胸の奥で、温かい光のようなものが「大丈夫だ」と囁いていた。それは昔から私の中に宿る、聖女としての直感のようなもの。 「私の直感が、そう告げてるの!」 「えぇ!? そ、そんな直感が……!?」 ミストさんが驚きの声を上げる。 (私も原理は分からんが……エレナには、その力が間違いなく備わっている。運命そのものを、その祈りの力で強引にねじ曲げてしまうような、不思議な力がな。だから、今回もきっと大丈夫だ) エレンの声が、私の内側で静かに響いた。 (うん……!) 彼の言葉が、私の直感を後押ししてくれる。 「それなら良いが……慢心はするなよ」 シイナさんが、冷静に釘を刺した。 「未来が見えるからと、それに胡坐をかいて行動するようでは、今の暗明の聖女と何も変わらないからな」 「……うん、そうだね。私は、この直感を絶対に正しいなんて、傲慢なことは思わないよ」 私にできるのは、この直感を信じつつ、でも決して過信しないこと。神様のお導きを感じながらも、自分の足で歩むこと。 「そこが、エレナさんの素敵なところですね」 シオンさんが、静かに微笑んだ。 その時、長く続いた階段が終わり、私たちの目の前に、だだっ広い広間が見えてきた。天井は高く、月光が差し込む窓から、青白い光が石床を照らしている。 「きっと、ここにも残りの騎士が待ち構えていることだろう」 「その時は、私が残ります」 シオンさんの言葉に、ミストさんが待ったをかける。 「いやいやいや! そこは私でしょうー!!」 「……?」 シオンさんが、心底不思議そうに首を傾げた。 「そのお顔はなんですかァァ!?」 「いえ……だってあなたは、戦いがあまり得意な方ではないでしょ

  • Soul Link ─見習い聖女と最強戦士─   第114話:行動開始

    **────エレナの視点────** 「じゃあ皆、各々準備してくれ。五分後にはここを出て、リディアさんを助けに行くぞ」 シイナさんの力強い言葉に、私たちは一斉に頷いた。この小さな家の中に、静かだが確固たる決意が満ちている。みんなの表情に迷いはない。先ほどまでの混乱が嘘のように、今は一つの目標に向かって心が結束していた。 五分という短い時間の中で、私たちはそれぞれの装備を確認し、心の準備を整える。月光が窓から差し込み、武器の金属部分を青白く照らしていた。この静寂が、嵐の前の静けさのように感じられてならない。 「準備はいいか? 今回、ジンが大方の騎士は無力化してくれたという話だ。恐らく…すぐに四騎士との戦闘になるだろう」 シイナさんの声に緊張が走る。四騎士——この国の最強戦力との戦いが待っているのだ。 「ここの騎士たちの数は多かったからね。でも、気を付けて」 ジンさんが軽やかに言葉を続ける。 「流石に全部を倒すわけにもいかなかったから、十人程度は残ってるはずだから」 「それでも、そんなに多くの騎士を戦闘不能にするなんて……」 私は驚きを隠せなかった。一人でそれほどの騎士を相手にするなんて、どれほどの実力者なのだろう。 「はは、聖女様に褒めてもらえるなんて。なんだか嬉しいよ」 ジンさんの表情に、子供のような無邪気さが浮かんでいる。しかし、その奥に潜む何かが、私の心に小さな不安を芽生えさせた。 「ね、念の為に聞くのですが……殺しはしてないですよね……?」 恐る恐る尋ねた私の質問に、ジンさんの表情がふっと変わった。まるで別人のような、冷たい光が瞳に宿る。 「……剣を抜いた以上、お互いの命が尽きるまで刀を振り合うべきだと僕は思っているんだ」 その一言に、背筋が凍りつくような恐怖を感じた。ジンさんの声音には、戦いへの狂気じみた情熱が込められている。私の心臓が、ドクドクと激しく鼓動を刻んでいた。 「でも……今回は大丈夫。殺してないよ」 そう言って見せる笑顔は、まるで何事もなかったかのように穏やかだった。しかし、その急激な変化が、かえって不気味さを増している。 (今回は……? ということは、普段は……?) 心の奥で、暗い想像が渦巻いていた。 * * * 五分後。静寂を破って、私たちは行動を開始した

  • Soul Link ─見習い聖女と最強戦士─   第113話:助けたい心は皆同じ

    **────エレナの視点────**「という訳なんだ」ジンさんの軽やかな口調で語られた残酷な現実に、私の心は氷のように凍りついてしまった。リディアさんが捕らえられて、処刑される。その事実が、どうしても受け入れることができなかった。「そ、そんな……嘘ですよね??」私の声が震えている。まるで悪夢から覚めたいと願うかのように、その言葉にすがりついた。「……こんな時に嘘なんてつかないよ」ジンさんの飄々とした口調が、現実の重さをより一層際立たせる。「……くっ!!!」シイナさんが拳を強く握りしめ、歯を食いしばっている。その青白い顔に、激しい怒りと悲しみが刻まれていた。「皆は先にこの国を脱出してくれ……!俺は……俺はリディアさんを助けに行く!!」シイナさんが勢いよく立ち上がり、扉に向かって歩き出そうとする。その瞳に宿る決意の炎は、誰にも止められないほど激しく燃えていた。「待てよ!!そんなの俺たちだって同じ気持ちだ!」グレンさんが力強く立ち上がる。彼の声には、シイナさんに負けないほどの強い意志が込められていた。「ええ……彼女には計り知れないほど多大な恩があります。なので……グレンと私でリディアさんを救出に向かいます」シオンさんの顔に、鋼のような決意が浮かんでいる。「シイナ、あなたこそエレナさんやミストさんと共に先に脱出してください」「だめだ!今回はパーティリーダーの責任として、俺が行く!」「シイナ!」「俺が、彼女を助けてすぐに戻ればいいことだろう!」「おいシイナ!俺がやられたテッセンとかいうやつの事を忘れたわけじゃないだろ!?少し落ち着け!」三人の激しい言い争いが、小さな家の中に響き渡る。誰も一歩も引かない様子で、感情のままに言葉をぶつけ合っていた。「あわわわわ……みなさん!こんな時に言い争ってる場合じゃないですって!」ミストさんが慌てて三人の間に割り込もうとするが、激しい感情の渦に巻き込まれ、弾き飛ばされてしまう。「ぎゃー!!」(みんな……冷静さがすっかり抜けて、これじゃあ救える命だって救えないよ……!)(それに……私だってリディアさんを助けたいのに……)私の心の中で、やりきれない想いが渦巻いている。みんなの気持ちは痛いほど分かるけれど、このままでは誰も救えない。そう考えていた、まさにその瞬間だった。私の意識が、まるで深い

  • Soul Link ─見習い聖女と最強戦士─   第112話:リディアの交渉

    **────ジンのの視点────** やる気か、と。僕は心の中で、小さく呟いた。 ここは冒険者ギルド。依頼と情報が交差する、いわば中立の聖域だ。そんな場所で騎士が刀を抜き、殺し合いを演じようというのだから、面白い。実に、面白い。 僕は向かってきた騎士の剣戟をいなすどころか、その勢いを逆に利用して体ごと弾き飛ばした。空中で無様に体勢を崩した彼の喉笛へ、僕は逆手に持ち替えた刃を、まるで吸い込まれるかのように滑らせる。「がぁっ……!」 声にならない呻きを漏らし、騎士が床に崩れ落ちた。口からごぼりと泡を吹き、痙攣する手足が、彼の命が尽きかけていることを示している。 仲間の一人が一瞬で無力化されたというのに、残された騎士たちは状況が飲み込めていないらしい。驚愕に見開かれた目が、滑稽なほどにこちらを向いていた。「き、貴様っ! 正気か!?」「あはは、面白いことを言うね、君。先にその物騒な鉄の獲物を抜いたのは、そっちじゃないか」「そ、それにしてもだ! 我々騎士に刃向かうなど、あってはならないことだぞ!?」「残念だけど、僕はそんな立派な冒険者様じゃない。僕はジン。世界を渡り歩く、ただの傭兵だからね」「ジン……!?」 その名に、騎士の一人が息を呑んだ。どうやら僕の名も、多少は裏の世界に知れ渡っているらしい。「くそっ……! やられて黙っていては、騎士の名が廃る! こいつも捕縛しろ!」 別の騎士が、その手に蒼い水の魔力を纏わせながら、僕へと突進してくる。ギルドの中で属性魔法を放つ? ああ、本当に、愚かだな。「はぁ……後悔しても、知らないよ」 僕は腰に差した愛刀「雪月花」の鯉口を切ると、一閃、抜き放った。 (鳴神式抜刀術――神威の型。) 空気を切り裂く音だけが響き、騎士の右腕が、ごとり、と鈍い音を立てて石床に転がった。「ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!!!! お、俺の腕がァァァァッ!!」 やかましいね。腕の一本や二本、飛んだくらいで喚くなんて。自分から仕掛けておきながら、いざ返り討ちに遭えば獣のように吠え立てる。弱者の典型だ。「お、お前……! 自分が何をしたか、分かっているのか!?」「さっきも言ったはずだよ。先に始めたのは、そっちだってね」 僕は刀身に付いた血を振るい、ゆらり、と笑みを浮かべた。「まだまだ足りないな。……もっと、殺り合おうよ」 ああ、い

  • Soul Link ─見習い聖女と最強戦士─   第111話:届いた悲報

    (この声に気配……覚えがある)エレンの意識が、私の奥底で警戒の炎を燃やし始める。(私もそう感じてた……なんだか、すごく(身に覚えがあるような……)(確か、夜の街で我々を襲撃してきた傭兵……名は確かジン……と言ったか)その名前を耳にした瞬間、あの記憶が、鮮血のように鮮やかに脳裏へと蘇ってきた。霊たちが彷徨う夜の街で、昼間の平穏な探索が一変した瞬間。突如として現れた謎の傭兵——。その圧倒的な実力は私には理解の範疇を超えていたけれど、エレン曰く、これまで戦った敵の中でも別格の強さを誇っていた……と。(そ、その人がなんでこんな場所に!? まさか、私たちを追ってきたの!?)(さあな。だが……敵意は微塵も感じられない。それに何か重要な情報を知っているようだ)(ここは一か八か、直接対峙してみるのも選択肢の一つだろう)「エレンが敵意は感じないから……出てみるのも一つの手だって……」私はシイナさんに、内心の不安を隠しながらそう告げる。「敵意を感じない……か。グレンもミストも意識を取り戻したことだし、直接話してみるか?」シイナさんの声に、慎重な判断力が込められている。(ああ、そうしてみてくれ)「そうして見てほしいって……」エレンの助言をそう伝えると、シイナさんが深く頷き、警戒を込めて扉の前へと歩を進めた。「何用だ」シイナさんの声が、扉越しに響く。「あれ、やっぱりいるんじゃないですかー」その飄々とした口調に、底知れない余裕が滲んでいる。「やあ、僕はジン。リディアっていう方からの重要な伝言があるんだけど、扉を開けてもらえないかな?」「残念だが、こちらにも複雑な事情があってな。このままでお願いしたい」シイナさんの慎重な対応に、扉の向こうから軽やかな笑い声が響く。「……あーそっか、いまこの国から追われてるんだっけ。それなら心配しなくていいよ」「大体の騎士は僕が片付けたから」「な、何だと!?」シイナさんの声が、驚愕に震える。「えっ!??」私も思わず声を上げてしまった。「ま、待て! この国の騎士一人一人は精鋭と言っても過言ではないほどに優秀だ。それをお前は単身で制圧したというのか?」「はは。まぁ確かにこの国の騎士はよく鍛錬されていたね。でも、僕も実力には自信があるんだ」その軽やかな口調で語られる内容の恐ろしさに、私たちは言葉を失った

  • Soul Link ─見習い聖女と最強戦士─   第110話:二人の目覚め

    **────エレナの視点────**次の日。「みなさん!!!!本当にご迷惑をおかけしました!!!」「本当に面目ねぇ……!!!今回迷惑かけた分は、必ず挽回するぜ!」二人が目を覚ましたんだ。あんなに傷だらけで、ずっと目を覚まさなかったグレンさんも元気になって、本当に良かったと思う……。でも……。聞かないといけない。二人に、何があったのか。「それより……二人に何があったんですか?なんで……グレンさんはあんなに傷だらけだったんですか……?」私がそう尋ねると、グレンさんが急に口を噤んでしまう。数秒の重い沈黙が部屋を支配すると、やがて言いにくそうにグレンさんが口を開き始めた。「お前たちが情報収集に行った数時間後、とんでもなく強い奴が現れたんだ」「とんでもなく強い奴?」シイナさんの声に、緊張が走る。「ああ。全身に見たこともない鎧を着て、刀を使っていた」(見たこともない鎧に刀……か)エレンの声が、意識の奥で静かに響く。「そいつは……全く俺の攻撃が通じなかった」「なに!?グレン、お前の攻撃がか!?」シイナさんは心底驚いたような様子を見せる。グレンさんの実力を知っている彼だからこその驚きだった。(…………)エレンが沈黙している。何かを考えているみたいだ。「ああ、正直全く底が見えなかったぜ。戦ってる感触としては……エレンに近かったかもな」「エレンに……?」私の声が震える。エレンと同じくらい強いなんて……。「それは……かなり厄介そうですね」シオンさんの美しい顔に、珍しく深刻な表情が浮かんでいる。「厄介なんてもんじゃねぇよ。あいつは俺の攻撃を全部受け止めやがった」グレンさんは、私たちのパーティ内でも屈指の攻撃力を持つ

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