Share

domの王子はsubの皇子を雄にしたい
domの王子はsubの皇子を雄にしたい
Author: fuu

第1話:条約婚の口火

Author: fuu
last update Huling Na-update: 2025-09-04 23:00:07

鐘が七つ。鳴り終える余韻までを合図に、王都の大聖堂に静けさが落ちた。彩色ガラスの青と赤が壇上の石肌を洗い、白い香煙が細くほどけて天井へ吸い込まれていく。中央で、アルトリウス王子は指先の汗を小さく拭った。視線の先、金糸で縁取られた外套の裾を整えながら、ルシアン皇子が肩で息を整える。二人とも成人。戦と商路、その重さをもう知っている年だ。

「条約婚は、盾ではなく橋である」

司教の低い声が石壁に柔らかく反響する。両国の紋章旗は高窓からの風にゆるくはためき、磨かれた石床は踏み込むたび、靴音を氷のように刺して返した。

呼吸を合わせる。ルシアンの瞳が一瞬、こちらを探す。頷く。——いける。視線でそう告げる。

——橋。壁よりも維持費がかかる。けれど、渡ってきた者の数だけ意味が増す。アルトリウスはそう教えられて育った。今日は、その一本目を架ける日だ。

小礼拝堂の壁には野花のステンドがある。青が多い。冷静であれ、という王家の戒めに似ていた。けれど、中央にだけ金の小さな果実が描かれている。実を結べ、だ。

「我らは国境関税を半減し、塩と布の双の路を開く。山間の水門は共同で守り、納骨堂の修復費を折半する」

宰相が巻紙を繰り、利得を一つずつ読み上げるたび、ざわめきが盛り上がっては沈む。商人は頷き、兵は腕を組み、修道士の何人かは組んだ指の結びを固くした。潜る者は潜る。大聖堂の影で黒いフードが一つ、香炉の鎖を短く鳴らす。地下街の顔役は回廊の柱の後ろで、笑わずに笑った。納骨堂の守り人は鍵束を音もなく懐へ消す。反対の火は消えない——ただ、表で燃やさない。

「アルトリウス王子」

取り決め通り、公では皇子が前に。ルシアンが一歩、石床に音を置いた。

「この婚約は、帝国の恥ではない。選択だ」

短い。だが芯に熱がある。アルトリウスはその背に立ち、視線で支えた。震えは膝ではなく喉に来ている。強くなる訓練は、筋ではない。声だ。視線だ。沈黙の使い方だ。

「……共に、雄になろう」

最後の一文に、アルトリウスの胸が熱を帯びる。雄——おずおずと礼だけを取る皇子ではなく、自ら条件を示し、頷きを引き出す者へ。あの言葉を、国民の前で言えた。今日の到達点としては、十分だ。

指輪交換は、少しだけ滑った。侍従が差し出した小さなクッションに、なぜか税目の目録が刺さっている。

「……これは」

「経理が、興奮して」

司教の咳払いで笑いは霧のように消え、代わりのクッションが駆けてきた。こういうぬるさは悪くない。場は柔らぎ、目録は後で役に立つ。

儀礼の締めくくり。「感応紋」の魔法陣が開き、薄い光が二人の足元に描かれた。蔦の紋が手首へ這い、肌の内側へ吸い込まれていく。痛みはない。ほんの少し、冷たい。二つの鼓動が重なる瞬間があった。縁結びの紋は見えない。見えないからこそ、言葉で重ねる。

「婚約を公に証す」

拍手は大きすぎず、小さすぎず、木壁にやわらかく返ってきた。

儀礼が終わるや、二人は小礼拝堂へ移される。公では前に。私室では——支える。扉が閉まる。香の匂いが薄れ、蜜蝋の甘さが残る。

「息、浅い」

囁くと、ルシアンは喉を撫でて見せた。頑張ったね、の代わりに、指で短く撫でる。抱き締めたい。だが先に、約束だ。

「契約を」

「うん」

書記官が二人に向けて巻紙を開く。言葉は政治と同じ、明文化する。体のことも政治の延長だ。交渉のために、合意がいる。

「合意契約。可、不可、合図、アフターケア、読み上げます」

ちょうどそのとき、合唱隊の準備の鐘が鳴った。扉の向こうで少年らが「合図」の cue を今だと勘違いし、一節を歌いかけて、祭壇裏がばたばたする。司教の苦い咳払いが二度。静かになった。

アルトリウスは笑いを呑み込み、ルシアンへ視線で問う。続けよう。そう言う。

「可:手首への軽い拘束、頸への口付け、指示に従う訓練。不可:痛みを目的とする行為、跡の残る強い拘束、呼吸に影響する行為」

ルシアンの喉が小さく上下する。アルトリウスは続ける。

「合図。口頭のセーフワードは『アマランス』。発声できない場合は左手を三度叩く」

「三度?」

「二度は癖で出るって、前に言ってた」

「……覚えてたんだ」

短いやり取りで、安心が流れるのがわかる。近い。けれど触れない。順序がある。

書記官が羽根ペンを止める。

「アフターケア。温かい飲み物。抱擁と体温の共有。魔紋の冷却処置。入浴の介助。翌朝の体調確認。加えて、感情の確認を言葉でする」

「言葉で」

壇上のときより少しだけ、素で柔らかい声。

「週一回のスイッチ・デーを設ける。火の曜日。公務後に時間を確保する」

「公では、私が前に。私室では、君が支える」

「うん。火の曜日だけ、交代」

短い文を積み上げる。政治と同じ。曖昧は流血を呼ぶ。体でも同じだ。

巻紙に二人の名が並ぶ。アルトリウスは筆を置き、ルシアンの手の甲を親指で軽く押して、「ありがとう」と言った。おめでとう、ではない。ありがとう、だ。

扉がこんこんと叩かれ、宰相が顔をのぞかせる。

「地下街の顔役が、挨拶を望んでおります。大聖堂の外階段にて」

「今?」

「はい。大通りは祝祭で塞がっておりますので、納骨堂の回廊を」

納骨堂。冷える場所だ。反対派が潜るには都合がいい。アルトリウスはルシアンを見る。誰が前に立つか。ここは公。皇子の名が先に出る場だ。

「……私が行く」

「隣に立つ」

決めごとは、支えるためにある。

納骨堂の階段は薄暗く、蝋燭の灯が骨壺の白さを鈍く照らす。香はない。石の匂い。水の冷たさ。足音は響きやすい。つまり、逃げる音も追う音も知らせてしまう。

射し口に、男が一人。地下街の顔役——金の歯を見せない笑い。背後に影、三。武器は持っていない。ここで抜く者は愚かだ。

「おめでとうございます」

低く頭を下げる。礼は深い。だが目は笑わない。

「祝宴の露店、税を少し軽くしていただけると、下の者が泣いて喜びますが」

「半減の通達は出してある」

ルシアンは即答した。声は壇上より自然で、芯は残る。

「当日分だけ免除しよう。屋台一つに一枚銀——従来の徴収法は見直す。次の市までに詳細を詰めたい」

顔役の目がわずかに動く。驚き。押し返された、と理解した表情。

「……話が早い」

「時間がないから」

ルシアンの指が、ほんのわずかにアルトリウスの袖を探す。アルトリウスは袖越しに指先を返す。視線は崩さない。雄になる訓練は、唇より先に足裏から始まる。ここで一歩も退かない。退くときは、二人で合図して退く。

「納骨堂への寄進は、変わらず続けます」

顔役が付け加える。階段上には司教の影。力の線は三つ——大聖堂、地下街、王族。今日から、四つ目が生まれる。二人の線だ。二重統治は常に揺れる。揺れを揺れとして受け取るのも、また訓練。

祝祭は夜まで続いた。やっと自室に戻る。扉が閉まる。廊下のざわめきが薄まる。

「……どうだった」

「怖かった。でも、逃げなかった」

「よくやった」

アルトリウスはようやく胸に引き寄せた。重さを預ける練習は、抱擁から始める。ルシアンの肩が小さく落ちる。力を抜く、という技術。

「火の曜日、忘れないで」

「忘れない。合図は?」

「『アマランス』」

「うん。君の声で、言ってほしい」

赤くなる。視線を逸らす。可愛い。けれど、可愛いだけでは終わらない。彼は今日、地下の影に向かって「今は免除」と言えた。短く、効果的に。雄の声だった。

「明日は出立だ。森を抜けて、帝都へ——橋の、もう一方の岸へ」

「森で、何が待つかな」

「狼煙か、歌か。どちらでも対応できるように」

「ああ」

灯りを落とす。二人は手を繋いだ。指の蔓紋がほんのり温かい。言葉にしたから、触れられる。触れられるから、次がある。

次回、第2話:合意契約、可と不可

Patuloy na basahin ang aklat na ito nang libre
I-scan ang code upang i-download ang App

Pinakabagong kabanata

  • domの王子はsubの皇子を雄にしたい   第51話:刃の夜

    大聖堂のステンドグラスが、夜を青い刃で裂いていた。香と油の匂いが重い。金糸の結び紐が、二人の手首をゆるくつなぐ。条約婚は成立、公開儀礼は穏やかな終章へ――そのはずだった。矢が鳴った。骨の羽が、細い音で空気を切る。最初に血が咲いたのはアルトリウスの左肩。銀青の礼衣に赤。膝が落ちかけ、踏みとどまる。視線は前を外さない。「下がれ」ルシアンの声は鈍い鉄。体は勝手に前へ――だが結び紐が引き戻す。公では皇子が前に立つ。二人で刻んだ条。忘れてはいない。けれど血は、本能を呼ぶ。「紅葉」アルトリウスが口の内で告げる。セーフワード。不可侵の停命。ルシアンの靴裏が石に戻る。「公は私が前だ」「……命令か」「契約に基づく要請だ」低い対話ののち、ルシアンは一歩退いた。アルトリウスが右手を上げ、祭司と民へ短く通す。「背を見せるな。祈りは解く。扉は閉じず、出入口は監視。狼煙は上げない」声は細る。合図は正確。護衛の影が伸びる。内陣で羽音、二本目。ルシアンは礼装の青帯を掴む。「それは葬儀用で――」と祭司。「借りる」帯は一瞬で止血帯に変わり、肩へ巻かれる。痛みで眉が寄る。その隙に黒衣の影が祭壇脇の扉へ滑り、地下へ。石段の冷気。「地下街に抜ける」ルシアンは即座に采配した。若い従者へ目だけで命じる。「鐘楼は黙らせろ。市門は閉じるな。地下の吐き口四つだけ封鎖」「は、はい! ただ今夜、スイッチ・デーの帳面が――」「延期。記録に『不可・危急対応』。明日は倍、撫でる」従者が真っ赤で走る。空気が一瞬ほどける。別の従者が結び紐を解こうと近づき――「まだだ」アルトリウスは静かに首を振る。「結びは解かない。民の前で戻る」痛みの中の頑固さ。雄になる訓練は、こういう場面に通う。公でまず立ち、

  • domの王子はsubの皇子を雄にしたい   第50話:王都の喝采

    鐘が六つ、白い石を震わせた。大聖堂の段に朝陽が跳ね、旗の紋が風で鳴る。香草の甘い匂いが鼻の奥に落ちた。王子は皇子の革当てを締め直す。指は容赦なく、体温はやさしい。「深呼吸」「……吸う、止める、吐く」チェックは短く、抜けがない。「合図」「左手二度。呼吸を二つ。停止語は――石榴」「可」「手首まで。刃は寸止め。命令語は短く」「不可」「首輪の露出、公での跪拝、痕」「アフター」「甘味、温水、肩を揉む。翌朝の政務は短縮」王子が頷く。「週に一度、反転。――スイッチ・デー」皇子はわずかに笑った。震えより笑いが勝ち始める。若い従者が帯を抱えて駆け込む。出したのは赤。

  • domの王子はsubの皇子を雄にしたい   第49話:剣の稽古、手の稽古

    朝の光が城門の金具を白く撫で、街路の旗が同じ方向へ揃った。王都は祝いの装いだ。石畳の継ぎ目に、薄い花の影。太鼓が二度、鐘が三度。人のざわめきがふくらんで、やがて一つの音になる。王子は皇子の右手の帯を整えながら、呼吸を数えた。四拍で吸って、四拍で止めて、四拍で吐く。「主導は呼吸から」皇子が小さく頷き、半歩、前に出た。公では彼が前に。私室では王子が支える。いつもの合意が、今日は街じゅうの目に触れる。広場の壇には、三つの印が並んだ。大聖堂の銀、地下街の銅、納骨堂の骨白。そして中央に、二人の共治紋。王妹フローラが視線だけで合図を送る。――段取りは整った、行ける。大司教が杖を横にし、開式の言葉を短く置く。皇子は前へ出て、掌をひらりと見せた。「条約婚は、ここから運用に入る。祈りは内に、法は外へ。今日は“見える手当て”を置く」王子が巻紙を開き、読み上げは簡潔に。・共同監査局の設置(大聖堂・地下街・納骨堂の三者と王宮使い)・共同の箱(鍵は三本、開封は三印一致)・地下通路の夜半巡回と、灯り・蓋の費用負担の分担・広場掲示の公開台帳――税と寄進と支出の見える化ざわめきが波紋になる。地下街の行商長は腕を組み、納骨堂の守り手は数珠を転がす。大聖堂の副祭司は羽根を揺らして、頷いた。王子は巻紙の下段を指でなぞり、もう一つ、声を落とす。「合図の項。公の場にも“止める仕組み”を置く」・異議(議場の手順)と停止(関係の手順)を分ける・停止語は当事者の発声に限って効力(外部の発声は確認ののち再開)・嘲笑目的の模倣は禁止、侮辱罪に準ず・鐘の合図は三つ(合流・開印・避難)、小鐘は子どもと司祭がともに引く人々の顔がほどけていくのがわかる。見えないところにあった“止め方”が、今、広場に置かれたからだ。王子は袖の内側で、皇子の手の甲を二度、軽く叩いた。緩めて。皇子はうなずき、息を少しだけ落とす。

  • domの王子はsubの皇子を雄にしたい   第48話:誓いの再構成

    鐘の音が石壁を震わせた。冷えた香の匂い。白い布の海。大聖堂の中央で、皇子は胸の鼓動を数えていた。彼の前に立つ王子が、掌を差し出す。指先が触れた。温度が移る。「契約を読む」大司教の声は乾いた羊皮紙の音に似ていた。条約婚。互いの国境の緩衝。使節往来の自由。軍の統制権の共有。その中に、皇子が昨夜まで書き直し続けた一段が挟まる。「合意の規定。可。抱擁、口づけ、手を引く。不可。公の場での命令口調、同意なき接触。合図。三度の指先タップ。セーフワード。琥珀」ざわめきが一波だけ起こり、消えた。王子は笑わなかった。ただ親指で皇子の手の甲を一度撫でて、囁く。「運用までが契約だ」「知ってる」皇子は息を整えた。魔紋の刻印師が膝をつき、朱を指に乗せる。王子の手首に銀糸の紋が浮き、皇子の指輪に淡い光の鱗が走った。魔紋は互いの脈拍と同期する。鼓動が重なったところで、大司教が最後の巻物を広げる。上下が逆だ。王子が片眉を上げた。「反転。今は縁起が良い、そういうことに」皇子が小声で助け舟を出すと、大司教の耳まで赤くなった。笑いが風のように広がり、緊張がほどける。王子はひと言だけ。「助かった」「スイッチ・デー、今週はあなたの日」「了解」公では、皇子が半歩前に立つ。私室では、王子が支える。そう決めた。互いの位置を確かめるように、王子はわずかに背を引いた。群衆の前で、皇子は名を名乗り、誓う。声は震えず、床の石が乾いていくみたいに静かに通った。◆◆◆儀礼を終え、側廊の控え室。羊皮紙の束。老宰相が鼻眼鏡の下からこちらを射抜く。地下街の顔役、大司教、納骨堂の管理者も並ぶ。石膏の白さが厳しい。王子が書簡の一枚をすっと前に出す。新条項。主従の交換条項。毎週一度、主と従を定め、互いに委任し合う。それを政治にも写す。「政治会議の議長を交互制に」王子は短く言った。皇子の肘が熱くなる。老宰相が苦

  • domの王子はsubの皇子を雄にしたい   第47話:風聞の毒

    夕刻の写本室は、蜜蝋の香りと乾いた紙の音で満ちていた。外では鐘の余韻。中では羽根ペンの先が、誓詞の行間を静かに縫う。王子は灯をひとつ落とし、羊皮紙を二枚、左右に並べた。左は公の条約文。右は私室の合意契約。どちらも昨日までの“正しさ”だが、今朝の紙切れ—風聞—が、言葉の継ぎ目に新しい綻びを示した。「再構成しよう」王子が言った。「うん。誓いは壊れたわけじゃない。けれど、曲げられた」ルシアンは袖口を正し、背筋を伸ばした。公では彼が前に立つ。影の位置に王子の熱がある。二重統治の約束は、ここでも有効だ。王妹フローラが小走りで入ってくる。「三者、揃えたわ。大聖堂、地下街、納骨堂。小礼拝堂で短い公聴を—“文言の手入れ”として」王子は頷き、右の紙に細字で一行、書き足す。付記:セーフワードの効力は当事者の発声に限定。外部の発話は一度停止して確認、異常なしなら再開。「風聞は“合図の言葉を叫べば止まる”に賭けた。外からの手は切る」王子が言い、ルシアンが続ける。「公でも同じだ。『異議』と『停止』を分ける。異議は議場の手順、停止は関係の手順」フローラが笑んだ。「言葉の綱引きは、こちらの得意分野」◆◆◆小礼拝堂。白い壁に金の縁取り。参列は最小限。大司教、地下街の長、納骨堂の守り手。王妹。書記官は一人—銀糸の仮面は外され、素顔は緊張で固い。王子が短く説明する。「誓いは二つ。公と私。今日はその“接合部”の再構成です」ルシアンは壇に出て、言葉を整えた。「跪礼は祈りに限る、が誤読された。だから追記する。『跪礼は主従でなく、共同体への敬意』。また、『合図は相互の救済手順であり、嘲笑の道具に非ず』」地下街の長が鼻で笑い、すぐ真顔に戻る。「商いでも同じだ。手仕舞いの合図を外から壊されたら、粉が散る」守り手が数珠を転がした。

  • domの王子はsubの皇子を雄にしたい   第46話:仮面の晩餐

    鐘が七つ、蜜蝋の滴る音さえ柔らかく呑み込み、葡萄の酸が夜気にほどける。白布で覆われた長卓、天井から垂れる蔓灯、床石に散らされた香草の粉。仮面の宴は、匂いと光でしか素顔を許さない。皇子は銀青の仮面。頬の縁に極細の双権紋。胸元には半輪の小紋章。王子は黒檀に鈍金の縁取り——影の意匠。半歩うしろで灯を遮り、視線の矢を折る。(公では皇子が前、影は王子。)取り決めは姿勢にまで染みている。「手を」皇子。「合図は二回」王子。「うん。危険は二回、撤退は三回」短い復唱は、羊皮紙に刻んだ合意の再点検。条約婚の夜に交わした四つの枠——可・不可・合図・アフターケア——は、今宵の仮面にも効く。可:儀礼内の口上命・姿勢の誘導・絹の拘束(短時間)。不可:跪礼の強要・痕を残す示威・公衆での屈辱。合図:二圧=危険/三圧=撤退。セーフワード:「青磁」。週一のスイッチ・デー厳守。破れた週は日の出前のケアで穴を埋める。

Higit pang Kabanata
Galugarin at basahin ang magagandang nobela
Libreng basahin ang magagandang nobela sa GoodNovel app. I-download ang mga librong gusto mo at basahin kahit saan at anumang oras.
Libreng basahin ang mga aklat sa app
I-scan ang code para mabasa sa App
DMCA.com Protection Status