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第158話

Author: 暁万里
last update Petsa ng paglalathala: 2026-10-02 14:21:34

 結婚式から数ヶ月後。

 初夏の柔らかな陽射しが、神宮寺家の庭を優しく照らしていた。

 庭に咲く紫陽花は少しずつ色づき始め、風が吹くたびに木々の葉が心地よい音を奏でている。

 離れにある華道室では、綾人と澪が並んで花を生けていた。

 誰かへ披露する作品ではなく、ただ、今日も屋敷へ飾る花を二人で生ける。

 それが、今では当たり前の日常になっていた。

「この高さならどうでしょう?」

 澪が一本の花を差し込みながら尋ねる。

 綾人は少しだけ角度を変えながら作品全体を見つめ、

「ああ、いい」

 と、小さく頷いた。

 その返事に澪は嬉しそうに笑う。

「最近、綾人くんに『いい』って言ってもらえることが増えましたね」

「そうか?」

「はい。昔も確かに褒めてくださっていましたけど。でも、そのときは『悪くない』ばかりだったから」

 以前ひまわりに教えてもらった綾人語録を思い出しながら、澪はくすくすと笑い花を整える。

「あのころは、褒めることにあまり慣れてなかった」

 綾人は少しだけバツが悪そうに苦笑いを浮かべる。

「今は?」

「……澪が素直だからな」

 綾人は静かに作品を見つめる。それは答えになってい
暁万里

『「君は俺の花だ」妹に婚約者を奪われた私を、冷徹華道家が溺愛して離してくれません』を最後まで読んでくださりありがとうございます。 このお話はこれにて完結となります。 小説を書くのは初めてで、いたらない点等多々あったかと存じます。 ですが、新しいエピソードを公開するたびに多くの方に読んでいただけたこと、本当にとてもとても嬉しかったです。 現在、『九十九の贈り物は初恋の呪い』という別作品も連載しております。 まだこちらの作品は始まったばかりです。 読者のみなさまを楽しませられる作品を書けるよう、一層精進してまいります。ぜひぜひそちらも楽しんでいただけましたら幸いです。 ではまた、どこかでみなさまにお会いできる日を楽しみにしております。 暁万里

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     結婚式から数ヶ月後。 初夏の柔らかな陽射しが、神宮寺家の庭を優しく照らしていた。 庭に咲く紫陽花は少しずつ色づき始め、風が吹くたびに木々の葉が心地よい音を奏でている。 離れにある華道室では、綾人と澪が並んで花を生けていた。 誰かへ披露する作品ではなく、ただ、今日も屋敷へ飾る花を二人で生ける。 それが、今では当たり前の日常になっていた。「この高さならどうでしょう?」 澪が一本の花を差し込みながら尋ねる。 綾人は少しだけ角度を変えながら作品全体を見つめ、「ああ、いい」 と、小さく頷いた。 その返事に澪は嬉しそうに笑う。「最近、綾人くんに『いい』って言ってもらえることが増えましたね」「そうか?」「はい。昔も確かに褒めてくださっていましたけど。でも、そのときは『悪くない』ばかりだったから」 以前ひまわりに教えてもらった綾人語録を思い出しながら、澪はくすくすと笑い花を整える。「あのころは、褒めることにあまり慣れてなかった」 綾人は少しだけバツが悪そうに苦笑いを浮かべる。「今は?」「……澪が素直だからな」 綾人は静かに作品を見つめる。それは答えになっていなくて、澪は首を傾げた。「夫婦は似てくるって言うだろ」 澪はその言葉に目を丸くしてから、頬をほんのりと赤く染めた。 素直に褒めるようになった理由を、まさかそんな風に綾人が言うと思っていなかった。 澪は照れたように笑って、隣に座る綾人にそっと寄りかかった。綾人は、ふっとちいさく微笑むと澪の肩をそっと抱き寄せた。     ◇「澪さまー!」 華道室の外から元気な声が響く。 勢いよく障子が開き、ひまわりが顔を覗かせた。「ワークショップへ参加された皆さまから、お手紙が届きました!」「本当ですか?」 澪は嬉しそうに受け取る。 封筒の中には、何枚もの便箋が入っていた。『お花を飾って食卓が明るくなりました』『娘と一緒に花屋さんへ行くのが楽しみです』『主人と花を選ぶ時間ができました』 一枚一枚、丁寧に目を通していく。 どの手紙にも、花のある暮らしが綴られていた。「……嬉しい」 自然と笑みがこぼれる。「花って、本当にすごいですね」 誰かの日常へ寄り添って、笑顔を増やして、家族の時間まで優しく彩ってくれる。 澪は大切そうに手紙を胸へ抱きしめた。     ◇ 昼

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