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10話

Author: Amy
last update publish date: 2026-09-14 20:08:39

10月8日、律子の事務所で、私は条件変更案を読んだ。

啓介への支払いから、条件付きだった2億円が外されていた。買収後の役員候補にも、啓介の名前は残らなかった。

「監査に正しい情報を出さなかったことが、理由です」

律子は、次のページを私に向けた。

「成立すれば、啓介さんが受け取るのは8億円。そこから真帆さんへの5億円と、写真の削除や訂正などにかかる費用が引かれます」

「私への支払いを減らすという話には、なっていませんね」

「なっていません。合意した支払いは残っています」

私はその欄をもう一度読んだ。

その日の午後、啓介が変更条件を受け入れ、署名したと律子へ連絡が入った。

ミナモリンクは、会社の名前で訂正を出した

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    4月の朝、ひよりは椀に残ったわかめを箸で集めていた。小学4年生になって、1週間がたっていた。「そろそろ出ないと、遅れるよ」「あとひと口」「わかめは逃げないから」「学校は逃げる」そんなことを言いながら、ひよりは最後まで味噌汁を飲んだ。椀を流しへ運び、ランドセルを背負った。「今日、家族カード返ってくる」3年生の授業で作ったものではなかった。新しい担任が、【わたしが帰りたい場所】という題で書かせたカードだった。「見せてくれる?」「考えとく」私はうなずき、玄関まで一緒に行った。「いってらっしゃい」「いってきます」エレベーターの扉が閉まるまで見送り、それから食卓を片づけた。書斎の窓際には、私の作業机があった。灰色の保存箱は、鍵のかかる棚に収めていた。7冊のノートはスキャンしても、原本を会社に預けてはいなかった。机の上には、介護する家族へ聞き取りをしたシートが広がっていた。誰が何を担当するか。それだけでなく、すぐには返事ができない日も書き込める冊子を作っていた。私は答えを読み返しながら、図解の横に入れる文章を整えた。まだ書き終わっていない箇所に印をつけ、続いて見積書を開いた。原稿と図解、修正の回数、使える範囲。依頼されている仕事と食い違いがないか、順に確かめた。最後に、自分の名前を入れた。高井生活デザインとの打合せへ出かける前に、紙をまとめた。机の外に

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    10月8日、律子の事務所で、私は条件変更案を読んだ。啓介への支払いから、条件付きだった2億円が外されていた。買収後の役員候補にも、啓介の名前は残らなかった。「監査に正しい情報を出さなかったことが、理由です」律子は、次のページを私に向けた。「成立すれば、啓介さんが受け取るのは8億円。そこから真帆さんへの5億円と、写真の削除や訂正などにかかる費用が引かれます」「私への支払いを減らすという話には、なっていませんね」「なっていません。合意した支払いは残っています」私はその欄をもう一度読んだ。その日の午後、啓介が変更条件を受け入れ、署名したと律子へ連絡が入った。ミナモリンクは、会社の名前で訂正を出した。私とひよりの写真や名前を同意なく使ったことを認め、削除して謝罪する。初期の制作物から私の名前を外し、使う範囲をきちんと決めなかったことも正すとあった。私は画面を下へ送った。元妻が会社へ過大な要求をしたという以前の発表は、事実ではなかった。先に離婚条件を提示したのは啓介で、その後、夫婦の間で離婚に合意した。その部分まで確かめてから、律子へ返事をした。ひよりが父親を求めて泣いたことも、私に話した言葉も、そこには載せなかった。学校の先生が訂正のリンクを共有し、記事を回していた保護者から、私に謝罪が届いた。家でそのことを伝えると、ひよりは黙って聞いていた。「5億円の子って言った人、明日忘れるかな」「すぐ

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