LOGIN039「ここが……ユリカちゃんの武道場ってやつか……」 せっかくの休日だし、いろんなところに遊びに行こうと子どもたちは言っていたが……三十路が近い俺たちにはそこまで気力はなかった……それはそうと、あまり運動していない俺は最近腰が痛くなってきていて、もうほんとにめちゃくちゃ痛いんだが……「榎本武道場……ネットで見たことはあったけど、まさか江戸時代から続いてるとは知らなかったな……」 ユリカちゃんが俺たちを出迎えてくれた「ようこそいらっしゃいました!皆さんはお客様です……どうぞくつろいでいってください……」 彼女は厚紙のボードを持って見せてきた…… そしてしばらく俺たちを眺めてから、またボードに書いた「他の皆さんは?」 今日来たのは少人数で……俺とルリちゃん、それからサちゃんだけだった「今日は……ハルくんが……家の手伝いが……あって……マユリちゃんと……アキラちゃんは……衣装の生地を……買いに行って……ユウタくんは……家で……勉強しないといけないって……」「ふむ……」 二人が話す時はだいたい手話でやり取りしていた…… サちゃんが挨拶しに行った。右手を握って下に向け、少し頭を下げる……基本的な手話で「こんにちは」を表していた「あ!」 ユリカちゃんはサちゃんに会うたびに、必ず抱きついていた……サちゃんは自分の妹みたいだと言っていた ユリカちゃんは一人っ子で、妹がずっと欲しかったんだそうだ…… この二人、ほんとに微笑ましいな 俺も普通に挨拶した……最近は彼女と話せるよう手話を覚えようとしているのだが、彼女はいつも、自分のために苦労して覚えなくていいと言う……もちろん俺とサちゃんはそんなこと気にしないのだが「今日は……武道というものを……ちょっと体験してみたくて……ね……」「おお!」 彼女は俺たち三人の手を引いて、道場の中へ連れて行ってくれた 中は時代劇で見るような昔ながらの道場で……よく手入れされた木造の空間が広がっていた……中には小学生、ほとんどが女の子たちが大勢稽古に来ていた……「外部の先生も雇ってるんだな……」 そりゃそうだろ……榎本家でまともに指導できるのは、ユリカちゃんとお父さんだけだし…… 俺たちは道場の中へ進んだ……木製の人形がたくさん並んでいる部屋に案内された……生徒も大勢いた……「わあ……雰囲気、完全に
038「わあ……きれいな色……」「アキくん!!見て見て、ハートの形にできたよ、かわいくない!!」「私のも見て!!」「ハルくん!!五本同時はあぶなくない?」「ははっ……余裕っすよ……ね、タカダさん」「ほんとに気が小さいなあ、アキラちゃん……」「やったことない……線香花火……幼稚園から……ずっと……」「榎本さんの人生……なんか切ないですね……」 夕方、帰る前に……アキトたちのグループとシャルロットのグループが合流して線香花火をやっていた……「よ……」「あ……よ」 シャルロットが、一人寂しそうに線香花火をしていたユウタの隣に座った……「あの……お昼のこと……ビンタしてごめんね」「ああ!いいよ……俺も自分を抑えられなかったのが悪いんだから……」 ユウタはそう言い訳しながら、あの時のことを頭から追い出そうとした……「ありがとう……」「何が?」 彼女はまだ火をつけていない線香花火を眺めてから、一本手に取って火をつけた「私のお客さんでいてくれることへのお礼だよ」 ユウタは心の中で考えた……これって、仕事が終わった後の普通のお礼ってやつなのか?「なんで?」「だって……リピートしてくれるお客さんって全然いなくてさ……何回も借りてくれたのって、あなたが初めてなんだよね……」「そんなこと……別にお礼なんて言わなくていいのに……」 変わった子だな……ユウタはそう思ったが、まだ知らなかった。この女の子がどんな人間で、過去にどんなことがあったのかを「そっか……なんか変なこと言ってごめん……」「……正直言うと……同い年くらいだと思ってたのに……実は6歳も違うんだね……」「……そうなの?」「なんか……あなって……若く見えるっていうか……その……かわいいっていうか……高校生みたいだから……」 シャルロットはユウタの様子を見て笑った「あはは、可愛いって言いたいだけなのに……そんなに遠回しにしなくていいんだよ?」 どうやらバレたらしい……ユウタはただ頷いた……「エモくん、かわいいな……」「っ……」 いじられたユウタは話題を変えた……「それで……宮島さんってアキトさんと知り合いなの?……一緒に話してたみたいだけど……」「……まあ……そんな感じ……」 少し間を置いてから彼女は答えた……「……」 答えたくなさそうだった……先輩で
037「なんでイモくんがここにいるのさ!!」「宮島さんこそ!!」 二人はしばらく顔を見合わせていたが、我に返り……売店のほうを見ると、シャルロットの女友達が一部始終を見ていた。「あら……二人って知り合いなの?」「えっと……あっ!!」 ユウタが何か言おうとしたが、シャルロットが先にユウタの足を踏んだ。「なんというか……ナンパ野郎なの……さっき私を口説いてきたんだよ」「あ……はい……その……彼女、僕の好みのタイプなんです……」 女子たちは顔を見合わせると、大声で叫んだ。「この子、シャルちゃんをナンパしてたの!? 度胸あるじゃん!!」「まあ……シャルちゃんこんなに可愛いもんね、ねえ……」 ユウタはこの状況にどうしていいか分からず慌てふためいた。「そ……そうです……」 震える声でそう答えた。「わあ……可愛い……」「この子、シャルちゃんに合いそうじゃない?」「ちょっと待ってよ!! 違うって言ってるじゃん……」 大学生の女子たちはユウタの可愛さにキュンとして、頭を撫でたり肩を抱いたりし始めた。 ユウタの視線はシャルロットの水着に釘付けになっていた…… 〔青いビキニ……白いライン……〕「うっ!」 彼はすぐに体を折り曲げた……女子たちは顔を見合わせ、思わず笑い出した…… シャルロットはなぜ友達が笑っているのか分からなかったが、体を折り曲げて水着の下を手で隠すユウタの様子を見て、真っ赤になった。「このバカ!!」 パチン!! と乾いた音が響いた……頬にじんとした痛みが走った……そして女子たちは去っていった。「またね!! 体を折り曲げた少年くん……」「またね!! ねえねえシャルちゃん……あの子、あなたを見た瞬間体を折り曲げてたよ、あはは」「うるさいバカルイ……」 ユウタは自分の頬をさすりながら売店に入っていった……「まったく……今なんで動揺しちゃうんだよ、ユウタくん……」 彼は急いで水を買い、砂浜に戻った。「よ……ちょうどよかった……」 僕は海から上がった……海水を飲んでしまって、ものすごく喉が渇いていた。「あ……はい……」 僕はユウタの顔を見た……そして頬に赤い跡があるのに気づいた。「どこかで女の子に叩かれたのか?」「あ!違いますよ!!」 僕はしばらく彼の顔を見つめた……「ケッ……」「………」「さあ!
036「おお!! これだよ!! 話に聞いてたあの海だ……」 八月末……宮島女子学院の生徒たちが期末試験を終えたので、僕はみんなを海岸に連れてお祝いすることにした。「そういえば……女子たちってまだ来ないの?……」 ユウタが尋ねた。「まあね……水着って男みたいに簡単に着られるものじゃないし」 ハルが答えた。 僕たち三人は水着に着替えて、席を準備した……「女子たちはわかるけど……アキラちゃんはさ……」「はは……あんなに時間かかってるってことは、絶対可愛い水着着てくるよね……」「このエロガキが……」「なんだと!!」 二人が殴り合いになりそうだったので、僕はビーチマットを二人の顔に投げつけた……「喧嘩ばっかりしてないで……早く準備手伝ってよ……」「はーい……」「そういえば……アキトさん……」「ん?……」「ルリ先輩の友達って……アキトさん、知ってますか?」 出かける前、急にルリが新しい友達も連れて行っていいかと僕に聞いてきた……だから連れてきたのだ。「いや……でも彼女、口がきけないんだろ?……」「はい……そんな感じです……」「まあ話すときは気をつけてやってくれよ……あと、ちゃんと面倒見てあげてな……」 二人は頷いた…… 僕たちは席の準備を終え……女子たちを待っていた……「あ……やばい……水買うの忘れてた……」 ユウタが声を上げた……こいつはパソコン関係以外だと本当に忘れっぽい……「ああ、いいよ、買ってきなよ」 僕はユウタに二千円を渡し、ユウタは立ち上がって水を買いに行こうとした。「おおっ!!」「わあ!!」 突然、二人の男が声を上げた……ビーチチェアに横になっていた僕も声のするほうを振り返った……そして目の前の光景に、僕は思わず立ち上がった。「ちょっと待って……この水着、恥ずかしすぎるよ……」 白いワンピース水着で現れたアキラちゃんは、あまりにも可愛くて、彼が男だという事実が一瞬僕たちの頭から消え去った……「ねえ……アキラちゃん……この水着、私が自分で選んだんだよ、えへへ」 マユリンは黒のレース柄ビキニで登場した……本当にこの子、隠れ巨乳ってやつなんじゃないか……胸がすごく大きい……「わあ……海、すごく綺麗な色……」 そしてもちろん、僕の将来の妻になるこの銀髪ショートの女の子は、三千世界で一番可愛かった…
035「じゃあ……完成です!」「はい!……乾杯!!!!」「乾杯!!!!」 みんながルリの部屋であるオフィスに集まった……ユウタたちは本当に二週間でモデルを仕上げてきた……「はぁ……めちゃくちゃ疲れた……」 ハルは限界まで疲れ切った様子でカーペットに寝そべっていた……「お疲れさま……」 アキラちゃんがハルに炭酸飲料を差し出した。ハルはしばらくアキラちゃんの顔を見て……「起き上がれない……」「あ……ストロー持ってくるね……」「まあ……正直、今回はユウタとハルの手柄にしないとな……でもみんな、本当によく頑張ったよ……」 僕は炭酸飲料を飲みながら、みんなに向かって嬉しそうに微笑んだ。「なんというか……すごいです……本物のVTuberみたいで……」「ありがとうございます、ルリ先輩……」 ユウタもハルと同じようにカーペットに寝そべっていた……「あ……ストロー持ってきたよ……」「ありがとう……」「ありがとうございます……アキラちゃん……」「まあ……今回僕はあまり手伝えなかったから……というわけで」 僕はクレジットカードを見せた。「僕がこの前数万円稼いだお金で……みんなを海に連れて行こうと思って……」「え……海……」「うん……もうすぐ夏も終わるし……やっぱり海に行かなきゃな」「きゃー!!!!!」「うおー!!!!」 みんなとても喜んでいた……特にルリちゃんが……「はいはい……早く食べて早く行こうね……もう夕方近いし……」「はーい!!!」「あとは……ルリちゃん次第だね……」 夜八時……「あ……こんにちはー!!!」 [来たー!!!!] [こんにちはー!!] [声可愛い!!!] [モデル綺麗……でも線がなんか見覚えある感じ] [こんにちはー]「みなさんこんにちは、女子高生なのにサキュバスなのに、なぜか女の子にばかり惹かれてしまうリリロア・ララです!!!!」 [え!? ちょっと待って……] [それってサキュバス失格じゃんwwww] [待って待って、なにそれ……] [wwwwww]「あ、そうだ……社長からこれをみんなに伝えてって言われてます……」 彼女は今日のライブに来ている一部のファンにとって見覚えのあるタグ表示機能を使った……「今、私には好きな人がいます!」
034「やっほーーー!みんなーーー、人間界に魅せられた小さなサメっ娘、シロスカ・シャクだよーっ」[やっほー!!!][CAIOS!!!][来たーーーー!!!!][こんにちはみんな……][こんにちはです]「今日はちょっとだけだよ……アキくんが深夜配信続けるなって言ってたから……だから二時間だけにして、みんなも休んでね」[気遣いがすごい……アキくんって温かい人だね][ほんとに……][仲良さそうでいいなあ……]「まあ……付き合ってたら心配するのは当然でしょ……さ、メンバー登録してくれた人の名前読んでいくね」[ほらほら、彼氏自慢してる][羨ましいなあ……][かわいい (〃▽〃)]「さてさて……今日の内容はね、アキくんにお返しをするよっ」[きたあああ][完了……アキくん絶対いじられる][かわいそうなアキくん ꉂ (´∀`) ʱªʱªʱª]「というわけで、今日はアキくんの検索履歴を漁っていくよーっ!!!」[えええ!……そんなことするの?][見たい見たい]「もうハッキングしてあるから……ふっふっふ……お前の秘密、いただいたよ。ahahaha」[邪悪な笑い……][来た……悪魔モード][深海の悪魔、降臨!!!][笑いが清々しすぎる٩(ᗒᗨᗕ)۶]「さて……検索履歴を見ていきましょうか……ん?……タイ映画の伝説的なエンドクレジットシーン……日本語字幕付き」「動画か……見てみよう」『なんで俺を捕まえるんだよ……何もしてないのに!ちょっと、何やってんの……!』『もう終わりにしようとしてんだよ、ワンシーンでセリフ三言だけって……』『おい!監督に会わせろよ……』『監督は警察署にいますよ』『ふざけてんのか?……その監督とやらはよ』『俺を殺しに来たのかよ!?なあ!俺を殺しに来たのか!?』『このクソ野郎……あいつはわけわかんないこと言ってるのに全編しゃべらせて、ちゃんとしゃべれる俺にはしゃべらせない』『もう俺の前に現れるな!』『俺にも映画を作るチャンスをくれよ、そしたらお前に全裸で走らせてやるぞ……このスーパースターのコメディアンにこんなことができるのかよ……』『全編でセリフ三言だぞこのクソ!……覚えておけよ、お前が助けを借りたくなっても俺は絶対行かないからな!!』 ---「え……」[wwwwwwwwwwwwwwww