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第1話今しかない時間

Auteur: りょう
last update Date de publication: 2025-10-12 08:00:09

 華と偽物のカップルを演じることになるにあたり、具体的にどうやってストーカーに俺たちの関係を認識させるか、そこから考えることから話が始まった。

「その相手は同じ学校の人間なんだよな?」

「そうよ。同じ学校の一つ上の先輩」

「相手は先輩、か。となると学校でも目立つ行動をしないとダメって事か」

「勿論それもあるけれど、学校以外にでもやれることがあるでしょ?」

「学校以外で?」

 華がそう前置きして、作戦の最初の 段階として提案してきたのが、

「まさか付き合って初日からデートに行くことになるとは」

 いきなりの初デートだった。

 ただプランとかは一切なく、とりあえず映画館へ二人で向かい映画を見る。ただそれだけのどちらかと言えばお出かけに近いデートだ。

 でも、そんなデートでも、

「亮太、手を繋いでくれる?」

「あ、ああ。勿論」

 ただ手をつなぐという行為だけでもやはりドキドキしてしまう。俺が華に手を差し出すと、彼女はごく自然に手を繋いできた。

「やっぱり少しだけ恥ずかしいなこれ」

「何か言った?」

「いや、何でもない」

 俺と華は手をしっかり繋ぐと目的地の映画館へ向けて歩き出す。

「こうやって華と手を繋ぐなんて何年ぶりだろうな」

「さあ? でもこうしてまた手を繋げて私は嬉しいわよ。もうそんな機会なんてないだろうって思ったから」

「それは俺も同感だ。成長していくにつれてそういうのって恥ずかしくなるんだよな。そういうのが大人になるってことなんだろうけど」

「大人と言えるほどの年齢ではまだないけど、私達」

「ちょっと言ってみたかっただけだから、冷めた目で言わないでくれ」

 付き合い出しても俺たちの会話はいつも通り。でも手はしっかり繋がれていて、むしろ華の方が離したくないと言わんばかりに強く握っていた。

(無意識なのかそれとも、意図的なのか分からないけどつくづく華は俺の心を揺さぶってくるよな)

 これで付き合って初日、しかもその関係が偽物だなんて誰が思うだろうか。

「そういえばその服、今まで着ているところ見たことなかったけど、新しく買ったのか?」

 会話がいったん途切れてしまったので、俺は繋ぎとして彼女の服を見ながら尋ねる。

「お母さんがわざわざ選んでくれたの。私デート用の服なんて買ったことがなかったから」

「じゃあその服はソフィーヤさんの物なのか?」

「そうだけど。もしかして似合っていなかった?」

 華は少しだけ不安そうに俺に聞いてくる。ソフィーヤさんとは華のお母さんのことを指しているのだが、フランス人の女性だけあってすごく美人だ。その血をしっかり引いている華も当然な美人なわけで、

「そんなわけないだろ。すごく似合っている」

 俺は正直な感想をそのまま華に伝える。すると華は頬を少しだけ赤らめながら俺を数秒見つめた後に、そっぽをむいてしまった。

「お、お母さんが選んだんだから似合っていて当然でしょ?」

「そう言いながら照れるなよ」

「照れてなんかいないわよ」

「ならこっちを見て言ってくれ」

 華の服装は淡いピンク色のオーバースウェットとデニムといった組み合わせの服を着ている。それに対して俺は急なデートだったのでオシャレなんてできておらず、逆に彼女に釣り合っていないのではないかと思ってしまう。

(おしゃれなんて考えたことなかったもんな)

 休みの日はほとんど家にいることが多いし、学校が終わった後だって帰宅部の俺はどこかに寄ることもなく家に帰ってしまっているのでそういうことを意識したことはなかった。

 でもこれからは華と付き合っていく以上はおしゃれにだってお金をかけなければならない。

「......ありがとう亮太。嬉しい」

「何か言ったか?」

「な、何でもないわよ!」

 2

 映画館は祝日なだけあってお客さんの数も多かった。

「なかなかの混み具合だな、これ。華、ちゃんといるか?」

「亮太の腕を掴んでいる限り大丈夫」

 その大半をカップルが占めていてその中に自分達もいると思えば、少しは恥ずかしさも消える。

「それで何を見るんだ?」

「これよ、これ」

 と華が指を指したのは、今流行っているアクション映画だった。学校での彼女しか知らない人達はこれを見たら信じないだろうが、華は昔から恋愛映画とかよりもこういうアクション系の映画の方が好きで、よく映画鑑賞に俺も付き合わされたのを覚えている。

「それってこの前見に行ったっ話していなかったか?」

「今日で観るのは三回目ね。初日舞台挨拶も当然行っているわ」

「相変わらずアクション映画への熱量だけはすごいな」

「すごいでしょ」

「ドヤ顔するほどではないからな」

「なっ!」

 ドヤ顔は可愛いのだけど、その熱量はもっと他に生かしてもらいたいと俺は思ってしまう。

(それを本人に言ったら、怒られるけど)

「チケットは私が買ってくるから、亮太はポップコーンと飲み物を買ってきて。私オレンジジュースね」

「了解」

 思ったよりお客が多かったので、俺達は手分けして買い物をするために一旦別れる。

(心臓止まるかと思った)

 ポップコーンを買いながらさっきの華のドヤ顔を思い出し、胸の鼓動が高鳴るのを何とか抑える。華にはああは言ったが普段見せないような表情を不意打ちで見せられると、俺でなくてもイチコロだ。

(ああいう表情を俺だけに見せてくれるのって、やっぱり嬉しいよな)

 別に独占欲が沸いたわけではなく、それは普段から思っていることでもあった。華が俺にだけ見せてくれる表情、それがこれからもっと増えるって考えたら俺の心臓は果たして持ってくれるだろうか。

(悪いことじゃないだけに、これが偽物の関係なのが本当に勿体ないよな......)

 俺は心の中でため息をつきながら、注文したポップコーンを受け取って華と合流するのだった。

 映画終了後

 興奮冷めやらぬまま、俺と華はそのまま映画館の近くにある喫茶店で映画の感想を語り合っていた。

「普段映画なんて見ないけれど、たまにはこういうのもいいな」

 俺が映画を思い出しながらそう言葉を漏らすと、華は今日一番の笑顔で嬉しそうに答えた。

「そうでしょう? 亮太ならそう言ってくれると思っていたから、いつか一緒に観たいって思っていたんだけど、まさかこんな形で叶うなんて思わなかった」

「俺も華とこうして映画を二人で観に来る日が来るとは思っていなかったよ」

 つい買ってしまった映画のパンフレットを眺めながら、俺もしみじみと答える。高校生になってもわざわざ同じ高校に通っているくらいだから別に疎遠になっていたわけでもないし、週に一回は華が家に来ては一緒に遊んでいるくらいの仲だ。

 だから映画を一緒に観に行くことだって別に特別なことではないといえばないし、今日じゃなくてもいつかは観に行っていたかもしれない。

 けどデートという形で観に来るものは全く違う。今日という日はこの日しかない。

 偽物のカップルという関係も

 初めてのデートということも

 一度しか味わえない思い出はせめて心に残しておきたいと俺は思うのだった。

「何もかもが特別な時間になっていくんだよなこれから」

「ずっとではないけれど、そういう時間は増えていくと思うわ」

「......俺としてはずっと続いてほしいんだけどな、こういう時間」

「ぼそっと独り言で何を言っているの?」

「別に何でも」

 その後俺達は喫茶店の閉店時間まで映画の事を語り合った結果、

「語り合っていたらいつの間にかこんな時間になっていたな」

「亮太がいつまでも話を続けているから悪い」

「なっ、それはお互い様だろ!」

 喫茶店を出たころには時刻は既に21時を過ぎており、普通の高校生が出歩いていたらお巡りさんとかに注意される時間になってしまっていた。

「流石に毎日こんな時間に帰るってことはないよな?」

「ないと思う......多分」

「行く先不安だな!」

 我が家は両親が仕事人間でほとんど家にいなく帰ってきても朝だったりするので、別に門限とかは気にしていないのだが、明日は普通に学校がある上に本格的に偽装カップル生活が始まるので、心の準備とか色々しなければならい。

 それにいくら偽装カップルとはいえ遅い時間まで二人一緒、というのは色々とまずいような気がする。

「今までも遅くなる前には絶対に帰っていたし、ソフィーヤさんはともかく泰介さんの方は許さないんじゃないか?」

 更に気になるのは華の家の方だ。泰介さんというのが華の父親なのだが、色々あって俺は泰介さんに嫌われている。

(そんな俺が華を夜の街に連れ出した、なんてあらぬ疑いをかけられたら命がいくつあっても足りない)

 大げさな話かもしれないが、それが俺と泰介さんとの関係なのだ。

「お父さんは今日家に帰らないって言っていたから大丈夫。お母さんにはさっき遅くなるって連絡しておいた」

 更に華は不安になるようなことを言い出す。

「さっき......って確か喫茶店を出るときに電話をしていたけど、まさか今から真っ直ぐに家に帰るんじゃないのか?」

 嫌な予感がして俺がそう尋ねると、華は足を止めると少し上目遣い気味に俺にこう言ってきた。

「私......もう少しだけ亮太と一緒にいたい。ダメ、かな?」

 こんな誘いをされて。不安とか色々吹き飛ばされた俺に彼女の誘いを断る理由なんて見つけられなかった。

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