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おいしい契約恋愛
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Author: Aica

1.社長との運命的な出会い①

Author: Aica
last update Last Updated: 2025-08-02 13:11:14

これは、オレとお前だけの秘密だ」

そんな意味ありげな甘い言葉。

「オレと契約しない?」

それは甘い契約?

それとも……。

<これは社長とあたしのおいしい契約恋愛>

◇ ◇ ◇

「ねぇ~見て~桜子~」

「ん~また、依那(えな)の推しのルイルイ?」

「そ~! 今日更新されたこの写真。もうこの写り最高すぎる~」

「相変わらず飽きないね~」

会社の昼休み。

ランチをするため会社の食堂に向かいながら、愛する推し琉偉(るい)がSNSにUPした写真を同僚の桜子(さくらこ)に見せる。

そんなあたしは逢沢 依那(あいざわ えな) 24歳。

カフェやレストランなどをコンサルティングやプロデュースする〈K dream〉という会社に勤めている。

カフェ好きな自分としては結構楽しい仕事。

まぁでも仕事の立場では中途半端な位置だから失敗して落ち込むこともあったりしたりもするけれど。

でも、そんな時は推しのアイドル琉偉に癒してもらう日々。

時にはSNSで時には実際ライブなどに会いに行って癒しや幸せをチャージしている。

琉偉はまだ20歳になったばっかりで同年代の男の子たちと5人グループで頑張っていて。

可愛いモノや可愛い人に目がないあたしはなんといっても可愛いという言葉がピッタリの琉偉ことルイルイを推せるのが何より幸せ。

今みたいに普段から琉偉がSNSに載せてくれる写真や公式でアップしてくれる動画などを観ては興奮して桜子に共有して休みの日にそんな推しの予定が合うとライブやイベントに足を運んでその時の推し活報告を翌日に桜子にするというのがいつもの日課だ。

「確かにこのルイルイ可愛いね~」

「でっしょ~。ルイルイはマジで天使」

「まぁ可愛いモノに目がない依那ならハマっても仕方ないかもね~」

「うん。ルイルイはドンピシャの可愛さ♪」

「あっ、そういえばうちの社長またいろいろ雑誌やテレビ出てたの観た?」

「へ~。また出てたんだ~。うちの社長ムダにイケメンだもんね~」

「いや、別にムダじゃないけど(笑) そんな風に言うのあんたくらいだよ(笑)」

「え~だってあの社長あたしの好きな可愛いの正反対に住んでる人間だよ?」

「確かに、ルイルイが可愛さの最上級なら、うちの社長はカッコよさの最上級?」

「一般的にはそんな感じだけど、あたしん中では最上級の天使と悪魔だから」

「また出た(笑)  依那のその天使と悪魔(笑)」

「いや、これあたしの中で最上級の誉め言葉だから」

「まぁうちの社員や世間ではあのクールなところやデキる男って感じが全面的に出てるのがいいって絶賛だしね」

それがまさにルイルイと別世界の人なんだよ。

「それに加えてビジュアルもそこらのモデルやアイドル顔負けのスタイルと顔面! なのにいまだ独身の神城 慧(かみしろ けい)社長33歳! どこ行ってもその有望株に飛びつく女性がわんさかだもん。うちの会社入社してる女性社員ほとんどが社長狙いだし気に入られたくて必死だからね」

「確かにうちの社長いつの間にかそういう感じになっちゃってるよね~。でもあたしはそういう意味でいうと可愛いが優先だから正反対の社長は全然そういう感覚で考えたこともない」

「まぁ依那の基準そこだよね~」

「ってか元々うちらみたいな社員は社長に近づくことも早々ないしそもそも社長に恋愛対象とかそんなの持つレベルじゃないのよ」

「確かに。結局狙えるのはそれなりの位置にいる先輩とか秘書の人とかだし」

「そうそうルイルイみたいに年下の可愛い子推せればそれだけで♪」

「でもそのルイルイも依那にとってはガチ恋ではないんでしょ?」

「あ~。うん。そう……だと思ってる」

「自信なさげ(笑)」

「だって現実の男……ろくなのいない……」

「あぁ~。そうだった~。依那昔からそんな感じだったもんね」

「まぁいいなぁって思った人はいたけど琉偉好きな気持ちに比べたら好きなんてレベルじゃなかったわ。琉偉ほど夢中になる人いなかったもん」

「まぁ依那はそれで、ある意味幸せか」

「そう。ルイルイ好きなら直接傷つけられることもないし、自分がダメなのかな~とかそういうのも悩まないで幸せな気持ちだけでいられるじゃん」

「まぁね」

「その点、桜子はいいな~。ラブラブの彼氏いて」

「ま~大(だい)ちゃんは幼馴染で気が知れてるとこあるからね~」

「いいな~。幼馴染で小さい時から知ってて付き合うなんて、それこそ理想だよ~」

「でも今は依那は琉偉くん一筋だから他に見向きもしないしね~。まぁ現実もいい男ばっかとは限んないしそれなら傷つくことなく瑠偉くん好きでいる方が依那は幸せかもね~」

「桜子はそういうとこ理解してくれてるの有難い」

「今はそれが依那だしね~」

「とにかくルイルイもいるし社長はあたしにとってそういう対象じゃないっていうか」

「まぁ確かに依那のタイプからいうとそういうんじゃないよね」

「可愛いもん好きのあたしからしたら社長はそもそもタイプじゃないっていうのもあるんだけど。でも仕事に関しても女性関係に関しても怖いって噂聞くしさ。もうまともに接するのも無理」

部署まで続く廊下を歩きながら、桜子とそんなことを言いながら歩いてると。

「あぁ~わかってる。それはもう先に進めていい。あぁ。オレが責任取る」

ん? すぐ近くで電話してるっぽい人がなんだかどこかで聞いたことあるような声……。

「本村(もとむら)。さっきの話、やっぱり先方に連絡取って進めておいてくれ」

「わかりました。社長」

ん……? え……、社長……って聞こえましたけど……?

いやいや、まさか、まさか。

「ちょっと、依那……」

「ねぇ……桜子さん。後ろにいるのって、まさかのまさかだったりする……?」

ことの重大さに気付き、桜子がこっそり声をかけてきたあとに、あたしの言葉を聞いて後ろをそっと確認する。

「え~っと……。その、まさかだね……」

「あ~。やっぱりですか~」

マズいマズい! やっぱり後ろにいるの社長じゃん!!

えっ、いつからいた!? どこから話聞いてた!?

てか、悪魔とか言ったの自分だってまさか気付いたりしちゃってる!?

どうしよ、どうしよ。

ただの平社員の小娘の分際でそんな恐れ多いことまさか本人に聞かれてるかもしれないとは……!

悪魔って言ったの本音じゃないし実際そんなの言えるほどまったく絡みもしたことないのに!

ただただ話のノリでつい言っちゃっただけなんで!

なんて、心で言い訳したところで当の本人に伝わるはずもないけど。

あまりの状況の恐ろしさに、さすがにあたしは後ろを振り向けなくて、思わず早足になる。うん、ここは気付かないフリして顔見せずにそのままここはさらっと立ち去ろう。

このまま存在わからなければ、こんないっぱい社員いるのに誰だかわかんないし、後々覚えてもいないはず。

よし、それでいこう。

そして、そのまま早足で歩いて行こうとすると。

「おい。ちょっと待て」

背後から低い冷静な声で、呼び止められる声がした。

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