LOGIN《side フライ・エルトール》
クラウン・バトルロイヤルが幕を閉じた翌朝。
どんよりとした空模様を眺めながら、私は少し重い頭を抱えていた。
昨日の盛り上がりは楽しかったけど、どうにも飲みすぎたらしい。そんな中、エリザベートが妙に落ち着かない様子でやってきた。
「フライ様、お客様がお見えです」
「ん……お客様?」朝一番に誰が来たのかと思いながら、私は面倒くさそうに椅子から立ち上がった。
そして、応接間に向かうと、そこにいたのは……。
「エリック兄上?!」
応接間にいたのは、整った顔立ちと冷静な佇まいを持つエリック・エルトール兄上だった。
「久しぶりだな、フライ」
エリック兄上は微笑を浮かべながら私を見つめている。その穏やかな表情に、思わず肩の力が抜けた。
「まさか、兄上がここに来るとは思わなかったよ。クラウン・バトルロイヤルの観戦
1、フライ・エルトール 立場:帝国公爵家次男、転生者、本編主人公 性格:飄々とした青年。異世界に転生し、様々なことを試しながら、他者との交流を楽しんでいる人物。 物語:第三章では、ローズガーデン陣営の指揮官として、巧妙な策略と軽妙な言葉で周囲を翻弄する。 クラウン・バトルロイヤルを通じて仲間たちとの絆を深めたが、新たな脅威に直面することになる。 異端者と呼ばれる存在や魔塔に興味を示し、エリックと共に調査へ乗り出す。 2、エリック・エルトール 立場:帝国公爵家の長男、魔塔の研究者 性格:冷静沈着で責任感が強く、フライとは対照的ではあるが、フライのことが大好きなブラコン。 物語:フライの実兄で、魔塔周辺に現れた異端者たちの動きを察知し、調査のために学園都市へ現れる。戦闘や知略にも長けており、彼の存在が新たな局面を切り開く鍵となる。 3、セシリア・ローズ・アーリントン 立場:公国の第一公女、婚活目的でフライを狙っている。 性格:計算高く腹黒い一面を持つが、内面は乙女で、フライに対して一途な想いを抱いている。 物語:第三章のクラウン・バトルロイヤルにて、公国の力を示すためにフライをローズガーデンへ誘うと同時に、自分の気持ちも告白する。 4、アクアリス・ネプチューナ 立場:海人族の王女、鯨人族の族長の娘 性格:心が広く、海と歌を愛する穏やかな人物。ただし、頭が良く、様々なことが人よりも見えている。 物語:海人族の姫君であり、クラウン・バトルロイヤルの優勝者。冷静な判断力と強大な魔法を持ち、海人族の未来のために戦った。 優勝後は一歩引き、観察者としての立場を取る。 5、ブライド・スレイヤー・ハーケンス 立場:帝国第二皇子、帝国英傑会リーダー 性格:冷徹、革新派、大胆不敵、負けず嫌い。 物語:帝国の第二皇子であり、生まれながらに才能に恵まれた存在である。クラウン・バトルロイヤルで熾烈な戦いを繰り広げ、帝国に住まう者たちへ、才能
《side フライ・エルトール》 クラウン・バトルロイヤルが幕を閉じた翌朝。 どんよりとした空模様を眺めながら、私は少し重い頭を抱えていた。 昨日の盛り上がりは楽しかったけど、どうにも飲みすぎたらしい。そんな中、エリザベートが妙に落ち着かない様子でやってきた。「フライ様、お客様がお見えです」「ん……お客様?」 朝一番に誰が来たのかと思いながら、私は面倒くさそうに椅子から立ち上がった。 そして、応接間に向かうと、そこにいたのは……。「エリック兄上?!」 応接間にいたのは、整った顔立ちと冷静な佇まいを持つエリック・エルトール兄上だった。「久しぶりだな、フライ」 エリック兄上は微笑を浮かべながら私を見つめている。その穏やかな表情に、思わず肩の力が抜けた。「まさか、兄上がここに来るとは思わなかったよ。クラウン・バトルロイヤルの観戦にでも来たのかい?」「そんな暇はないさ。ただ、少し興味深い情報を耳にしてね。確認する必要があったんだ」 興味深い情報? 私は首を傾げながら、彼の言葉を促す。「何の話だい?」 エリック兄上は一歩前に出て、周囲を見渡した後、小声で続けた。「魔塔の近辺で、不審な集団が目撃された。どこの国の者かは分からないが、帝国でも問題視されているようだね。その調査に来たんだ」「魔塔の近くに現れた不審な集団を、帝国も問題視している?」 魔塔――古代の遺物とも言われるその巨大な建造物は、魔導師たちの研究機関であり、古代の建造物として潤沢な魔力を含んでいる。 そのため、突如として魔物が出現することもあり、実はダンジョンなんじゃないかと私は思っている。 この世界には、ダンジョンという概念が存在していないに等しい。 迷宮と呼ばれる地下施設や、魔塔のような怪しい場所は存在するが、時折その周辺で奇妙な動きがあるという噂が立つ程度だ。 だが、それは魔塔の問
《side フライ・エルトール》 クラウン・バトルロイヤルが幕を閉じた夜。 私はフェル爺さんに無理を言って酒場を貸し切り、互いの労をねぎらうための「お疲れ会」を開くことにした。 会場は酒場らしい喧騒に満ちていた。 豪快な笑い声が飛び交い、テーブルの上には各種の料理と酒が所狭しと並べられている。 参加者はローズガーデン、平民同盟、自由同盟、そして優勝を飾ったブルーシーの面々だ。「いやぁ、集まってくれてありがとう。今日はただ飲んで食べて、楽しく過ごすだけだからさ。肩肘張らずに楽しんでいってよ。費用は全て僕の奢りだ」 私はジョッキを掲げて声を張り上げた。すると、一斉に歓声が返ってきた。 優勝チームであるブルーシーの面々が、一番奥のテーブルに陣取っている。その中心で静かに酒を飲んでいるのが、海人族の姫君アクアリス・ネプチューナだ。 私は彼女の席に向かい、ジョッキを片手に腰を下ろした。「いやぁ、アクアリス嬢、優勝おめでとう。君たちの優勝を心からお祝いするよ。乾杯」「フライ・エルトール様、あなたは私との約束を果たしてくださいました。あなたが仕掛けてくださった二面戦争のおかげで、我々は勝利できた。あれがなければ、私たちの勝利は難しかったでしょう」 アクアリスはにっこりと微笑む。その大人びた余裕のある態度は、戦場でも酒場でも変わらないようだね。「でもまぁ、僕も楽しませてもらったよ。あの戦場で君が最後に見せた魔法、あれは凄かったね」「私も限界を超えた……ということなのでしょうね。ブライド皇子の強さによって引き出されたのかもしれません。ですが、あれは勝利に必要な一手に過ぎません」「冷静だねぇ。もう少しお酒を飲んで、気楽に話そうよ」 私はジョッキを傾け、彼女のグラスを満たす。アクアリスは少しだけ驚いた表情を見せたが、やがて微笑みを浮かべてグラスを口に運んだ。 次に私は、自由同盟のテーブルへと足を運んだ。そこではリーダーのフリーダムが、ラドンにまたがる仕草をしながら仲間たちと大笑いし
《side アイス・ディフェ・ミンティ》 目を覚ますと、世界が霞んで見えた。 視界に入るのは、崩れた陣地と倒れ伏す兵士たちの姿だった。体は重く、全身が痛みに覆われている。「ここは……どこだ……」 口から出た声は、かすれきっていた。記憶を手繰り寄せようとするが、戦場の混沌しか思い出せない。「目が覚めたか、アイス王子」 低く響く声が耳に届く。 視線を向けると、竜人族のリーダー、エスカルーデが傷だらけの体を引きずりながら立っていた。彼の目には、失望と同時に敬意の色も浮かんでいた。「我々は敗北しました……だが、素晴らしい戦いだった」 彼は武人だ。私の敗北とは意味合いが異なる。 彼は思うのだろう。強い者と拳を交え、気持ちよく敗北したと……。 私は思う。策略が通じず、敗北した。 いや、私は策を講じる前に、何もできなかった。「すまぬな、アイス王子よ。貴殿の役に立てなくて」 胸が重くなる。 敗北。 その言葉の意味が、体の隅々にまで染み込むようだった。「敗北、か……そうか、私は……負けたのか」 敗北という現実を受け入れるたびに、心の中で何かが砕ける音がした。 これまで築き上げてきた誇り、信念、そして未来への希望。それらが次々と崩れ落ちていく。 何よりも、ブライド皇子に敗北したことが、どうしようもないほどに狂おしい。「私は……何をしていたんだ……」 自分の中には何もない。ただ虚無だけが広がっている。「王子、貴殿を誤解していた」「えっ?」 エスカルーデの声が、深い闇の底に沈みかけていた私を引き戻す。「貴方が敗北したとしても、我々は貴方を友と
《side アクアリス・ネプチューナ》 戦場を見下ろしながら、私は静かにその行方を見守っていた。 高台の湖畔に陣取った私は、戦場全体を俯瞰し、戦況を読み取っていく。 フライ・エルトール。あの自由で奔放に見える男は、相変わらず混乱を操る天才だ。 初めて彼を見たのは、クラウン奪取という学園の授業だった。 彼は自分では動くことなく、戦場を操っていた。私はその隙を突き、彼に一矢報いたこともあるけれど、それも彼自身が作った隙に過ぎない。 そして、その力を見込んで私が依頼すると、彼は見事に盤面を作り出した。 ブライド皇子とアイス王子、双方に同時に戦争を仕掛けたその大胆さ。 結果、戦場は泥沼化し、両陣営とも大きく疲弊していく。「まるで自ら舞台を作り出し、そこで踊る役者ね」 私は苦笑を漏らしながら、遠目にその戦いを見つめた。 フライ・エルトールの陣営もまた、疲弊を隠せない。彼の指揮のもと、彼らはよく耐えた。だが、それでも限界は訪れる。 そして、ついにフライ・エルトールがブライド・スレイヤー・ハーケンスに敗北を喫した。「アクアリス様」「分かっています」 ローズガーデンのクラウンであるセシリア公女を討つため、私は機を見て動き出した。「セシリア公女、貴女のクラウンをいただきます」 セシリア公女の陣地に突入し、その防衛陣を次々と突破する。抵抗する兵士たちもいたが、彼らは何も知らされていない。 私たち海人族の連携の前には、ほとんど無力だ
《side ブライド・スレイヤー・ハーケンス》 戦場を染める赤い夕陽が、我の剣に映り込む。 フライ・エルトールの体は地に伏していた。 奴の剣は、すでに我の足元に転がっている。「フライ・エルトール、貴様の策略もここまでだ。我が剣の前に、すべてが無力だったな」 勝利を確信した瞬間、我の胸に込み上げたのは、歓喜と達成感だった。 すべての駒を使い切り、この盤上で最後まで生き残ったのは、この我、ブライド・スレイヤー・ハーケンスだ。「アイクよ。貴様がいなければ、フライを倒すことはできなかったぞ」 フライと相打ちになり、我を勝利へ導いた剣だ。「さぁ、勝利を宣言するぞ――」 その言葉を言い終える前に、冷たい風が戦場を駆け抜けた。 ――ザザザン―― 水の音が響く。突如として、戦場の空気が湿り気を帯びた。「……これは?」 振り返ると、そこにはアクアリス・ネプチューナが立っていた。 いや、アクアリスだけではない。その背後には、水をまとった海人族たちが整然と並んでいる。 彼女の瞳は深海のように冷たく、そこに憐れみや妥協の色は一切なかった。「……海人族だと……はは、あはははははははははははは!!! そういうことか!? フライ・エルトール!」 ここに来て、初めて気づいた。 これも結局、フライ・エルトール、貴様の策略だったのだろう? 我は剣を構え直す。 アクアリスの唇がわずかに動き、言葉を紡ぐ。「あなたがこの戦場で勝者になることは許されないわ。私たち海人族が、この戦いの終焉を告げる」「海人族ごときが、この我を打ち破るつもりか?」 我は冷笑を浮かべながら、再び剣を振り上げた。だが、アクアリスは動じない。ただ片手を掲げると、水流が竜のような形を成し、戦場全体へ襲いかかる。「愚かなる者よ、沈め」 水流が襲いか







