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第163話

Author: ルーシー
智也が口を開いたとき、薫と沙羅は彼の背後に控えていた。

「妻」という言葉が出た瞬間、薫は思わず沙羅に視線をやり、沙羅も同じように彼を見返した。

互いに目を合わせながらも、二人とも言葉を飲み込む。

智也が玲奈のことを唐突に口にしたのは、薫にとって理解しがたいことだった。

彼が彼女を愛していないのは明らかだ。

なのに「妻」と認めるような響きを持たせる――その矛盾が、どうにも解せない。

沙羅はうつむき、きゅっと唇を結んだ。

その心中を、薫は一目で察する。

けれど彼には決意があった。

――自分は沙羅の味方になる。

必ず沙羅を智也の妻にしてみせる、と。

智也は贈り物のことを告げただけで、それ以上は何も言わなかった。

薫は彼らを玄関口まで見送り、車に乗り込むのを確かめてから屋敷に戻った。

運転席に運転手、後部座席には智也と沙羅。

だが、乗り込んでからずっと沈黙が続いていた。

智也は俯き、スマホを指先で弄りながら、何を見ているのか分からぬまま画面をスクロールしていた。

沙羅は彼の上の空な様子に気づき、思わず声をかける。

「智也」

智也はちらりと視線を向け、淡々と応
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