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第370話

Author: ルーシー
拓海は、浴室の扉の向こうから聞こえた「カチリ」という鍵の音に、思わず小さく笑みを漏らした。

――けれどその笑みは、どこか嬉しさを含んでいた。

すぐに、シャワーの水音が静かな病室に響き始める。

拓海は玲奈が冷えないよう、上着を手にして浴室の前で待った。

およそ三十分ほど経って、ようやく扉が開く。

タオルで髪を包み、ふわふわのパジャマを着た玲奈が現れた。

外はもう冬の気配が濃く、夜の空気はひんやりとしている。

彼女の姿を見た瞬間、拓海はすぐに近づき、上着をそっと肩に掛けながら、柔らかく問いかけた。

「......寒くないか?」

玲奈は首を横に振り、微笑んで答えた。

「ううん、大丈夫」

その笑顔を見て、拓海の胸の奥までじんわりと温かくなった。

彼は玲奈をベッドの端に座らせると、「髪、乾かしてあげる」と言い残し、迷いもせずにドライヤーを取りに行った。

その動きには、いつもの御曹司らしい威圧感など微塵もなく、まるで幼い子を世話する兄のような優しさがあった。

その様子を見ながら、玲奈は胸の奥でふと不思議に思った。

――あんなに誇り高く、自分中心に生きてきた男が、どうし
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