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第506話

Author: ルーシー
沙羅はわざと何気ないふりをして、洋の腕にそっと触れた。

誰かが触れたのに気づいた洋は、慌てて顔を向ける。

相手が沙羅だとわかると、反射的に少し横へ身をずらした。

同時に声を落として釘を刺す。

「沙羅さん、今、俺に触ったでしょ。

智也が見たら、絶対ヤキモチ焼くよ」

沙羅は洋を見て、一瞬きょとんとした。

それから遅れて状況を飲み込み、小さく返す。

「あ......ごめん」

洋は沙羅を見ようともせず、淡々と言った。

「別に、大丈夫」

そう言うと、さらに距離を取った。

その瞬間、沙羅は確信した。

洋が言っていた好きな人は、自分ではない。

プロポーズ会場は大いに盛り上がり、智也でさえ、その甘い空気に自然と浸っていた。

四人のうち、考えが別の方向へ飛んでいたのは沙羅だけだ。

風船が空へ舞い上がったあと、智也はふと沙羅の姿を探し、片隅で沈んでいる彼女に気づく。

近づいて声をかけた。

「具合、悪いのか?」

問いかけに、沙羅は横顔を向け、無理に笑みを作って答える。

「ちょっとね」

智也は彼女の腕を取った。

「外は寒い。

帰ろう」

沙羅は頷く。

「うん」

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    沙羅はわざと何気ないふりをして、洋の腕にそっと触れた。誰かが触れたのに気づいた洋は、慌てて顔を向ける。相手が沙羅だとわかると、反射的に少し横へ身をずらした。同時に声を落として釘を刺す。「沙羅さん、今、俺に触ったでしょ。智也が見たら、絶対ヤキモチ焼くよ」沙羅は洋を見て、一瞬きょとんとした。それから遅れて状況を飲み込み、小さく返す。「あ......ごめん」洋は沙羅を見ようともせず、淡々と言った。「別に、大丈夫」そう言うと、さらに距離を取った。その瞬間、沙羅は確信した。洋が言っていた好きな人は、自分ではない。プロポーズ会場は大いに盛り上がり、智也でさえ、その甘い空気に自然と浸っていた。四人のうち、考えが別の方向へ飛んでいたのは沙羅だけだ。風船が空へ舞い上がったあと、智也はふと沙羅の姿を探し、片隅で沈んでいる彼女に気づく。近づいて声をかけた。「具合、悪いのか?」問いかけに、沙羅は横顔を向け、無理に笑みを作って答える。「ちょっとね」智也は彼女の腕を取った。「外は寒い。帰ろう」沙羅は頷く。「うん」そうして智也は沙羅を連れ、人混みの外へ歩き出した。薫には、もう見物を続ける気分などなかった。沙羅が智也と帰った途端、胸が沈んでしまう。ただ一人、洋だけがそのロマンチックさに完全に浸っていた。いつか自分も、心から愛する女の子にプロポーズする場面を――そんなふうに想像してしまうほどに。智也は車で小燕邸へ戻った。車を停めて降りたそのとき、門の角から黒い影が飛び出してきた。智也が反応する間もなく、相手は彼の両腕を強く掴み、怯えた声で震えながら言う。「兄貴......須賀拓海は、あいつは狂ってる。真嶋......真嶋が......」そのとき、助手席から沙羅が降りてきた。ドアが閉まると同時に、彼女は影に向かって探るように呼んだ。「涼真......?」涼真はその声を聞いた瞬間、ほとんど反射で光の届かない陰へ戻った。今の自分はみっともなさすぎる。女神にこんな姿を見られたくなかったのだ。沙羅は首をかしげ、さらに近づこうとする。「涼真、どうしたの?」涼真は壁に顔を向けたまま、片手を沙羅のほうへ差し出して制し、同時に言った。「沙羅

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