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第628話

作者: ルーシー
「じゃあ、待ってますね」

智也はそう言った。

明人は空々しく二度ほど笑ってみせてから、ようやくスマホを玲奈へ返した。

受け取った玲奈は智也に短く言った。

「切るわ」

「わかった。

何かあったらメッセージをくれ」

智也のその言葉に、玲奈は答えなかった。

そしてそのまま通話を切った。

電話が切れた瞬間、明人は痺れた頬の内側を舌先で押し、歯噛みするように吐き捨てた。

「いい度胸してるな」

玲奈はまっすぐ彼を見返し、皮肉っぽく笑った。

「自分の口にしたことには、それなりの代償が伴うものよ。

何を言っても許されるわけじゃないから」

明人は、それ以上言い争う気はなかった。

黙って車のロックを外し、苛立ちを隠さぬまま言う。

「乗らないのか」

玲奈はジャッキや工具をトランクへ戻し、車に鍵をかけてから、明人の車へ向かった。

ただし助手席ではなく、後部座席に座る。

車が走り出してからも、明人の機嫌はずっと悪かった。

だが、いら立ちが募るほど、逆におかしくなったのか、ふいに彼は笑い出した。

ルームミラー越しに後部座席の玲奈を見ながら言う。

「智也はもう、うちの妹の
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已鎖定章節
評論 (1)
goodnovel comment avatar
美桜
この男の車によく乗れるな…。信じられない。
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    「じゃあ、待ってますね」智也はそう言った。明人は空々しく二度ほど笑ってみせてから、ようやくスマホを玲奈へ返した。受け取った玲奈は智也に短く言った。「切るわ」「わかった。何かあったらメッセージをくれ」智也のその言葉に、玲奈は答えなかった。そしてそのまま通話を切った。電話が切れた瞬間、明人は痺れた頬の内側を舌先で押し、歯噛みするように吐き捨てた。「いい度胸してるな」玲奈はまっすぐ彼を見返し、皮肉っぽく笑った。「自分の口にしたことには、それなりの代償が伴うものよ。何を言っても許されるわけじゃないから」明人は、それ以上言い争う気はなかった。黙って車のロックを外し、苛立ちを隠さぬまま言う。「乗らないのか」玲奈はジャッキや工具をトランクへ戻し、車に鍵をかけてから、明人の車へ向かった。ただし助手席ではなく、後部座席に座る。車が走り出してからも、明人の機嫌はずっと悪かった。だが、いら立ちが募るほど、逆におかしくなったのか、ふいに彼は笑い出した。ルームミラー越しに後部座席の玲奈を見ながら言う。「智也はもう、うちの妹の男だ。いっそ俺のところに来たらどうだ?」玲奈はミラー越しに彼の視線をまっすぐ受け止め、冷たく鼻で笑った。「あなたに何ができるの。どうして私が、智也より劣る男を選ぶと思うの?」その返しに、明人はかえって面白そうに笑った。「俺が劣る?それは、お前がまだ知らないからだ。知らないものは、そりゃ悪く見えるだろうな」玲奈が何を言っているのか、彼にはわかっていた。それでもわざと、下品な意味へねじ曲げて返している。けれど玲奈は、即座に切り捨てた。「お断りよ」その尊大な態度が、明人には癪に障った。腹立たしさを抑えきれずに言う。「智也に捨てられたら、そのときは俺が慰めてやるよ」慰めるの一言だけ、ことさらに含みを持たせた言い方だった。玲奈も皮肉のひとつくらい返そうかと思った。だが、相手にするだけ無駄だとすぐに思い直した。そのとき、またスマホが鳴った。目を落とすと、智也からの着信だった。玲奈が電話を取ると、向こうからすぐに声が届く。「今どこだ?」車内は静かで、前の席にいる明人にも智也の声ははっきり聞こえていた。玲奈

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