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第3章・第8話:面倒くさくて、放っておけない夜風のベンチ

作者: 銀狐
last update publish date: 2026-06-18 06:07:04

 柊木詩乃が、肩にもたれかかってきたとき、  

 カミヤの背筋は、ごく小さく跳ねた。

 女に寄りかかられること自体は、初めてじゃない。

 酔っ払いに絡まれることもあれば、  

 助けた相手にしがみつかれることもある。

 だが、今、肩に乗っている重みは――  

 それらとは、まるで違っていた。

 軽い。  

 折れそうなくらい軽い。

 けれど、その軽さが、逆に重かった。

「死にたい」と言っていた少女の体重だ。

 コーンスープの紙カップは、彼女の手から滑り落ちそうになっていた。  

 カミヤは何気なくそれを受け取り、ベンチの脇に置く。

「……寝やがった」

 小さく呟く。  

 返事はない。

 彼女の呼吸は、さっきまでと違って、落ち着いていた。  

 肩越しに伝わる胸の上下が、ゆっくり、一定のリズムを刻んでいる
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