LOGIN懐かしい夢を見た。両親を失くした時の夢。あの後凛太朗さんは宣言通り二日後の退院の日に迎えに来てくれた。そんな彼の後ろにはオレと同い年くらいの少年が偉そうに立っていた。
「ほら。コイツが俺の息子の叶弥だ。年は前にも話したが京司と同い年だ。叶弥、ふんぞり返ってないで挨拶しろ」
「......五十嵐 叶弥。よろしく」
「田河 京司です......よろしくお願いします」
そうオレがあいさつをし返した途端、叶弥は顔をバッと上げニカッと笑いながら言葉を続けた。
「お前が今日からオレの舎弟になるんだよな!な!そうだろオヤジ!」
「先ずは友達から始めんか。何をまるで出会って速攻結婚を申し込むみてぇな世迷いごとを言ってやがる」
凛太朗さんが叶弥の頭にゲンコツを入れながらそう言うと、彼は「痛ってぇ!」と声を上げながら、しかし嬉しそうな笑みを浮かべオレに話しかけてきた。
「まぁ、なんだ。同い年だし同じ家に住むことになるんだから仲良くしようぜ!」
「う、うん......」
叶弥と言う存在に戸惑いながら目を回していると、凛太朗さんが話しかけてきた。
「悪ぃなこんなクソガキで。あ、そうだ。遺産は全部お前が相続出来るようにしておいた」
そう言う凛太朗さんは暗い笑みを浮かべながらこう続けた。
「お前の親戚連中がやたらと煩かったが......チョット"お願い"したら快く了承してくれたわ」
オレはその"お願い"がどんなのだか怖くて聞くことが出来なかった。
「よし!じゃあ先ずは京司の家に行って必要なモンを持ってこよう。そんで"家"へと帰るぞ」
「......はい」
そうして荷物を持って病院を出ると......そこには黒塗りの立派なベンツが止めてあった。そしてそのベンツの前には何人かのスーツの男達が立っていた。
「お疲れ様です!オジキ!」
「お待ちしてました!」
「この坊主が例の子供ですかい?」
男達は次々と凛太朗さんへ話しかける。そんな男達をなだめて彼はオレに「スマンな、ウチの若衆が」と言った。そして車内へと誘われた。
「先ずは京司。お前の家に行くぞ」
「あ、はい。分かりました」
「今日運び込めなかった分はまた後日来ような」
「はい」
そう話していると横から叶弥が口を出してきた。
「オレも手伝う!そんでもって京司、明日からケンカの稽古をするぞ!将来はオレの右腕になってもらうんだからな!」
叶弥は目をランランとさせながらオレにそう告げた。
「ケンカ......ですか?」
「あぁ!五十嵐家の男として恥ずかしくない男に仕上げてやるよ!」
「おい、叶弥。京司はまだ病み上がりなんだから無理言うな」
「えー。なんだよオヤジぃ」
「京司。お前は暫く絶対安静な。その間に小学校の転入手続きもしておくから安心しな」
「ありがとうございます。凛太朗さん」
叶弥は少し機嫌を悪くしたのか、「せっかく子分ができたのにぃ」と頬を膨らませ静かになった。
そうこうしている内に車は慣れ親しんだ家の前へと着いた。
「さぁ、持ち出せるだけ持ち出しちまおう」
凛太朗さんがそう言うとオレ達三人と若衆の何人かが家の中へ入っていく。
すると家の中から誰かの話し声が聞こえて来る。......その声の主は親戚の叔父や叔母であった。
「全く。あの子はとんだ疫病神だな。あの子がいなければあの二人は死ぬ事は無かったって言うのに」
「ホントそうよねぇ。遺産も全部あの子の所へ行ってしまうし......」
そんなゲスな会話を聞いて、オレはここまで嫌われていたのかと涙を流した。
「おぅおぅ。親を失くしたばかりの子供に対して随分な言い草だな」
堪らず凛太朗さんは親戚連中に声をかけた。すると何人からか「ヒッ!」と言う小さな悲鳴が上がった。
「コイツの両親の遺産は田河の血に関わらず息子の京司の物だ。......次おかしな事ぬかしやがったら......わかるよな?」
凛太朗さんが親戚連中を相手にしている時、叶弥がオレの頭をわしゃわしゃとしながら、「泣くな!」と言ってきた。
「泣くな!男だろ!日本男児たる者、五十嵐組である者、簡単に泣くもんじゃない。強くあり続けるんだ!」
叶弥はオレにそう叱咤激励をすると俺の涙をぶっきらぼうに拭ってくれた。そんな叶弥に対し、心がポカポカするのを感じる。
「ありがとう......叶弥......さん」
「"さん"なんて要らねぇ。"叶弥"で良いんだぞ、"京司"」
こうしてオレと叶弥の間に新たな絆が生まれたのであった。そうこうしている内に、凛太朗さんは親戚連中を黙らせ、「京司」とオレを呼んだ。凛太朗さんの元へ行くと目の前には亡くなった両親の遺影が飾られていた。
「遺骨はもうコイツらが勝手に収骨しちまったみたいで悪ぃが、遺影にだけでも手を合わせてやんな」
そう言うとオレを遺影の前へと座らせ、手を合わせる様に促した。オレは遺影の二人の笑顔を見て泣きそうになるのをグッと堪えながら手を合わせ目を瞑り、二人が天国へ行けるよう祈った。
「さぁ、荷物を運び出すかねぇ」
凛太朗さんのその言葉をかわきりにオレと叶弥はもちろん、若衆の人達も動き出すのであった。
それから午前の競技は赤組のぶっちぎりの高得点で終えた。応援団の皆からは応援団長を筆頭に「田河のお陰だ!」「出来れば午後もお願いしたかった......」と口々に声が上がった。オレは速攻でウィッグを取り、叶弥の手を引き教室へと戻った。そして人目を気にすることなく、チア衣装からジャージへと着替えたのであった。周囲からは「もったいない......」と言う声が漏れたのには聞こえないふりをした。叶弥は叶弥で写真部のヤツに「京のチア撮ったよな?いくら欲しい?ネガごと買い取ってやる」と意味不明なことをしていた。そこへドタドタと廊下から走ってくる音が聞こえてきた。......言わずもがな財前である。「京司さん!あの格好はなんなんすか?!ってもう着替えてる?!もったいない......」「財前、お前もか......」おれは財前にそう言いながら蹴りを入れた。「いやいや!だって京司さんの女装なんてレア過ぎて......」「もういい黙れ」「おい、財前。京の女装を見ていいのはオレだけだ」「......叶弥、お前も何意味不明なことほざいてんだ......」財前だけでなく、叶弥にも呆れながらオレは弁当を食べ始めた。それにならって叶弥も弁当を広げた。「いいなぁ、京司さんの手作り弁当......」「やんねぇぞ。これはオレの特権だからな。っておい、京、何玉子焼き食わせてんだよ」「別に良いじゃねえか。オレの弁当なんだし」「メッチャ美味いッス!」「京の弁当が不味い訳ねぇだろ」「...なんでお前がドヤってんだよ。ホラ、財前。早く昼メシ食いに教室戻れ」オレがそう言うと、財前は名残惜しそうに「...ッス」と声を漏らし教室から去って行った。「......いやぁ、それにしてもあのケンカ狂の財前先輩を意図も簡単にあしらうとは流石田河だな。五十嵐の妻なだけある。」「......おい、なんだ妻って」「え?だってお前ら夫婦だろ?」「お前......わかってんなぁ」夫婦扱いしたクラスメイトにオレは不服を申し出し、叶弥は感心した言葉を投げかけた。「オレらが夫婦ってことは、京の舎弟の財前はペットだな」「あんな手のかかるペットは飼いたくねぇ」「だからって子供にはしたくねぇな。お前のこと取り合いになりそうだし」「......ペットもさほど変わりなくね?」「それもそーだな......」
オレは着替え終えると、一緒に来た応援団のクラスメイトと一緒にグラウンドへと戻った。丁度開会式が終わったところらしく、生徒達はテントの中にいた。そして借り物走に出る生徒はスタートラインへと集まっていた。オレはテントの中に入ると、話しが仲間に伝わっていたせいか、周りから「早くジャージ脱げ!」「男を見せろ!」とはやし立てられた。そしてオレがジャージを脱いでチア衣装を披露すると、周囲はシーンとなった。やはり男のチアはなかっただろうと思った次の瞬間だった。「お前チア似合いすぎ!」「コレはイケる......」などと声が上がった。急に賑やかになったオレ達のテントに周囲は何事かと注目してきた。その騒ぎはスタートラインまで届いていたようで、こちらを見てきた叶弥と目が合ってしまった。すると叶弥は目を見開き、オレを指さしながら口をパクパクとさせていた。そしてこちらまで来ようとしたが周囲から押さえつけられてしまった。叶弥は第一走だったので、オレは応援団長から腕を引かれてテントの一番前まで来ると、ポンポンを渡され応援団長から「五十嵐の本気を出させるのはお前にかかってる!」と言われ、言われるがまま応援をするのであった。「赤組ファイオー!!」「ファイオー!」「フレフレッ、赤組!」「フレフレッ、赤組!」「ここでチアから一言!お願いしゃーす!」そう応援団長から振られるとオレは意を決して「赤組ー!ファイオー!!」と大声を上げた。次の瞬間、スタートのピストルが鳴ると、叶弥は断トツのスピードで走り、借り物の書かれた紙の元へと行った。そして何故だかオレ目掛けて猛スピードで向かってくると、オレの手を引き横抱きにしてゴールへと向かい無事1位でゴール。「1位は赤組です!借り物は何だったのでしょうか?!」放送委員がそう言うと、叶弥はオレを地面に下ろし、借り物の紙を彼らに渡した。「お題はぁー、美人な人!たしかに美人さんですねー!赤組のチアですか!先程から注目をあつめてましたねー。お名前は?」「......1年田河 京司です」「田河君!チアガール、大変お似合いです!赤組1位おめでとうございまーす!」その後、オレと叶弥は1位のハタの元へと行った。そこまで叶弥は無言でオレの手を引き歩いていたが、目的地に着くと、オレの肩をガシッと掴んできた。「オイ、京。オレは何も聞いてねぇぞ?」「.....
「京?お前どうした?」「?!叶弥!な、なんでもないーそろそろ開会式だし、借り物走の選手は集合だろ?ホラ、行ってこい!」「?お前も行くだろ?てか何隠してんだ?」「別に何も!オレはちょっと用事できたからお前だけで行ってくれ。」「?わかった」オレはなんとか叶弥をかわすことができた。さて、時間は限られている。覚悟を決めるしかない。「よし......」と思ったオレの所に応援団に所属しているクラスメイトがやって来た。「お、無事衣装受け取ってくれたんだな。いやぁ、間際に推薦したかいがあったぜ」「......まさかお前が?」「悪く思うな!これも応援賞を手に入れるためだ。五十嵐いたら絶対妨害されるからな。上手いこと借り物走の空きが出てよかったぜ。さ、オレも手伝うから着替えに行こうぜ」そう言うと、オレはソイツに連れられて教室へと行った。そして、オレは着替え始めた、"チアガール衣装"へと。「な、なぁ。やっぱり変じゃね?男が着るもんじゃねぇって......」「......いや、ありだな、あり。そんじゃ最後にこのポニテのウィッグを被ってくれ!」「こんなんもあったのかよ......」オレは衣装だけだと思っていたので「騙された気分だ......」と呟いた。「人聞きの悪い。組の勝利のためだ。協力してくれ。午前中だけでいいからさ」「ハァ......わかった」「サンキュ!午後一の応援合戦はジャージに戻ってくれて大丈夫だからな!午前中に勝機を上げる作戦!」オレはこの言葉を聞いて安心した。五十嵐組の連中が来るのは仕事の関係もあり、午後からだと聞いていたからだ。少なくとも組の連中には見られないとの事だ。「五十嵐ヤツが見たらどんな反応すっかな?楽しみ(笑)」「......オレは全然楽しみじゃない」「でも引き受けてくれてたすかったよ。マジサンキューな!」メッチャいい笑顔で言われてしまえば否とは言えない。そう言えばコイツも同じ中学で、女子人気の高いヤツだったなと思い出した。「そう言えばなんでこんな物があるんだ?」「あ、衣装は学校にあったヤツで、ウィッグはいいのが無かったから趣味でコスプレやってるオレの彼女に借りたんだ」「......なるほど」いい趣味を持った彼女がいたものだ......。「あ、チア衣装だとまだ少し寒いだろ?オレので悪いけどジャージ羽織ってな」
学校に着くと、オレ達生徒は椅子を持ってグラウンドへと向かう。そして指示された場所に椅子を置く...はずだった。本来、オレと叶弥は離れた位置に座るはずであったのだが、叶弥がオレの隣に座るはずの生徒を脅し、俺の隣を陣取った。「おい......。お前何してんだよ」「あぁ?せっかくの祭りなんだから、お前の隣に座るのは当たり前だろ?」「いや、当たり前じゃないだろ......」「まぁまぁ、田河。別にいいじゃねぇか。夫婦喧嘩は良くないぞ?」「お!いいこと言うな。夫婦だってよ、京。やっぱりわかるヤツにはわか......って痛え!」クラスメイトの言葉に気を良くした叶弥は調子に乗り始めたので、オレは叶弥の足を思いっきり踏みつけた。「おーい、1年!急で悪いんだが、誰か借り物走に出てくんねぇか?出場予定のヤツが病欠になっちまってな」「借り物走ッスか?......五十嵐一番足速いし、五十嵐がいいんじゃね?」上級生からの頼み事にクラスメイトが叶弥を推薦してきた。「あぁ?借り物走はヤル気出ねぇ......」そう言う叶弥に、そう言われるのは想定内。とでも言うように、クラスメイトがオレに耳打ちしてきた。「あー......。叶弥の借り物走で1位取る勇姿、見たかったなぁー(棒)」「うしっ。オレが出れば百人力だろ」チョロい。チョロすぎる。五十嵐組の跡継ぎがこんなにチョロくていいものなのか...。「借り物走の種目順は開会式のすぐ後だから、初手から1位取って覇気とヤル気に火ぃつけてくれや。」「......田河」「叶弥ー、期待してるー(棒)」「おう!任せとけ!京に1位の名誉をくれてやるよ!」「キャー!五十嵐男前ー!」「......叶弥、カッコイイー(棒)」叶弥はクラスメイトやオレからヨイショされヤル気満々になっていた。クラスメイト達に叶弥が囲まれ始めた時、上級生の三人組がオレの元ヘとやって来た。たしか、応援団のヤツらだ。「1年の田河......だったな?」「?ハイ。そうですけど......」「折り入って頼みがある。これを着て応援をしてくれ!」「......は?これって......」「お前がこれを着て応援してくれれば五十嵐だけじゃない、この組のヤツらのヤル気はアップするはず......!!」そう言いながら差し出された衣装にオレは言葉を失った。「......
天気は雲一つない晴天。絶好の体育祭日和である。オレは朝早くから朝メシと弁当の支度をしていた。すると、背後からぬっと手が伸びてきて、ギュッと抱きしめられた。そして作っていた唐揚げを一つヒョイっと取り上げられてしまった。「うん。今日も最高に美味い。はよー、京」「おはよう、叶弥。つまみ食いはすんなと前々から言ってたんだけどな。てか動けないから離せ。弁当作れねぇだろうが。朝メシも同時進行してんだからさ」オレ達がそんなやり取りをし続けていると、朝メシ作りを手伝っていた若衆が「朝から仲良いっすね......」「スゴいラブラブっぷりですね」と言ってきた。「......見せもんじゃねぇぞお前ら」「いやいや、若。見せてきてるんじゃないッスか!」「そーっすよ。いくら組公認だからと言って、前よりイチャつきっぷりが加速してるじゃないですか!」「京司さんも!前ならもっと抵抗してませんでした?!」「いや......もう何言ってもムダだし、好きにさせておいても大丈夫だろ。害はないし」「ど、毒されてしまった......!!」と若衆が悲鳴を上げた。そう言っている間にオレは弁当と朝メシの支度を仕上げ、エプロンを取って叶弥に投げつけた。「お前のせいで時間ギリギリじゃねぇか。おい、お前ら。出来上がったから広間に運んでくれ」「は、ハイ......」「ブレない京司さん......流石ッス!」そんなこんなで朝メシが広間に揃うと、凛太朗さんや若衆が広間に集まってきた。「叶弥、京司。今日はいよいよ体育祭だな。組総出で応援行くからな。気張れよ?」「凛太朗さん、もう子供じゃないんだからそんな応援なんていらないですよ......」「何言ってんだ京司。いつまで経ってもお前らは可愛いオレの子供達だ。応援くらい行かせてくれや」「そうだぞ、京。オレらの勇姿を見せてやらなきゃならん。それに祭りは人が多い方が盛り上がるぜ?」凛太朗さんと叶弥はホントそっくりな性格をしているな。とオレはため息をつきながら朝メシを食べ進める。そして食べ終えると、食器を片付けにキッチンへと移動した。すると、俺の次にキッチンへ入ってきた若衆が「洗い物はオレらがやるので学校へ行ってください!」と言ってくれた。なのでオレは礼を言いお言葉に甘えて、叶弥と共に学校へと登校した。
湊先輩の件もあり忘れていたが、体育祭が間近に迫ってきていた。体育祭練習も多方進んで、各種目や応援合戦など、どの組も力が入っていた。オレ達の所属する組は特に応援合戦に力が入っていて、よさこいを踊ることになっていた。普段ケンカ以外には興味ややる気を見せない叶弥だが、祭りごととなると力が入る。中学の時の体育祭でもよさこいを踊ったのだが、叶弥は普段やる気を出さないのにキレッキレのよさこいを披露した。そして、競技にも力が入っていてぶっちぎりの1位を取り優勝へと導いたのだ。「京......オレはこの体育祭で優勝してみせる。そんでもって、最優秀選手賞を取ってお前に......」「待ったァ!若、いくら若でもそれは譲れません!京司さん!オレが絶対にあなたに勝利を捧げます......!!」「......いや、いらんし。てか財前に至っては組違うだろ......」バカと不良は祭りごとが好きだなぁ......とオレは遠い目をしていたりそんなやり取りを見ていた周囲からは、「五十嵐組の跡取りとケンカ狂の財前が手懐けられている......」と注目を集めてしまっていた。オレはその視線が痛くて、勘弁してくれ......と心底思うのであった。「そういえば、オレ、お前らと同じ中学だったけど毎年体育祭凄かったよな」「凄いってどんな風に?」「五十嵐組総出で応援に来てんの。な、田河!」「......叶弥見ればわかるだろ?祭りごとに目がないヤツらばっかりなんだよ」そう言うとクラスメイトには「なるほど......」と納得されてしまった。「オイ、財前。お前組対抗リレー出るんだよな?ならオレと勝負しろ。京に良いとこ見せるのはオレだって証明してやるよ」「望むところっすよ!若!」叶弥と財前は二人で目をメラメラと燃やしていた。高校初の体育祭はきっと波乱が起きるんではないかと心配になってきてしまうオレであった。そんなオレの心配を他所に、この二人に触発された生徒達は多く、「最高の体育祭にするぞー!」と立ち上がるのであった。......オレはそれについていくことができず、何事も起こらず無事に体育祭を終えることを祈るだけだった。
そんな夢から目を覚ますとオレは涙を流していた。涙なんていつぶりだろう...そう思っていると部屋の扉が開かれた。「京、早く仕度しねぇと入学式に遅れるぞ。」「悪い叶弥。急いで支度する。」「...ってお前。何泣いてんだよ。"鬼の目にも涙"ってか?」そう。あれから叶弥と共に体術などを学び、見る見るうちに力をつけていって、中学卒業する頃にはここら一帯じゃ"五十嵐組の番犬"言われ恐れられるまでにケンカの腕を磨いたのであった。叶弥は叶弥でガキ大将だったのが嘘かの様に、次期組長に相応しい貫禄を身につけていたのであった。そうしてオレはベッドから降り、真新しい制服へと袖を通す。「お待たせ、叶弥。
オレの祈り虚しく、迎えは黒塗りのベンツだった。周りの生徒達がなんだなんだと騒いでいる輪に近づくと、車の外で待機していた若衆が「若!京司さん!」と大声で呼んだ。すると人集りの輪が解けオレ達に道が譲られる。「入学式お疲れ様です!宴会の準備が出来てるんで、早く組へ帰りましょう!」「...五十嵐組って本当に何かとこじつけて宴会したがるよな。」オレがボソッと呟くと叶弥は「そーでもなくね?」と言う。「だってお前の誕生日はともかく、オレの誕生日までどんちゃん騒ぎじゃねーか。」「そりゃお前、未来の若頭補佐の誕生日は祝わねーとだろ。」「そうですよ!京司さんはオレ達の女神ッス!」「...女神って
黒い髪をサラサラと靡かせ学校へと向かう。今日の入学式を祝うかのように桜の花びらが風に煽られ舞っている。オレの隣には少し長めの金髪を後ろで一括りにして気怠そうに歩いている叶弥がいる。「朝っぱらから疲れた...」「凛太朗さんじゃ無いけど、ホントお前ってオレの事になると子供の頃のガキ大将みたいになるよな。」「...ウルセェ...」オレが叶弥にそう言うと叶弥は力無く項垂れるのであった。そんな叶弥にオレは追い打ちをかけるような言葉をかける。「いいか、叶弥。中学の時みたいに誰彼構わずケンカ売るなよ?」「...それは京にも言える事じゃねぇか?」「オレはケンカを売ったことは無い。...買い
ある日突然、両親を失った。交通事故だった。両親とオレの三人で散歩をしていた時、飲酒運転のトラックがオレ達目がけて突っ込んできた。オレ達が渡っていたのは青信号の横断歩道で、トラックは赤信号。完全にトラックの運転手の過失だった。トラックはスピードを落とすことがなかったので、オレ達は避けるヒマを与えられなかった。そんな中でも両親はオレを守るように抱きしめてくれた。お陰でオレは事故から3日後に病院のベッドの上で目を覚ます事が出来た。しかし、両親は直に地面に叩きつけられた為即死だったらしい。そんな事を淡々と医師に告げられた。「君はご両親のお陰で骨折を免れる事が出来た。あと二日程で退院する事ができるだ