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#46 赤暁砲を目指して

last update publish date: 2026-09-15 18:00:36

 蒸気機関車が、北へと向かう。千名の将兵を載せて、三百キロ離れたハベル要塞へ向かうのだ。

「スカの戦いで、敵は巨大な兵器を使用した」

 第八特別隊第一中隊に属する、七十五名を載せた車両の中で、キッスがスピーカー越しに話す。背後の壁には、二十メートルの砲身を台車に乗せた、大きすぎる大砲の写真が表示されていた。そして、それらはそれぞれの座席の前にも、転送されている。

「決死の偵察によって、この兵器の名前が明らかとなった。『赤暁砲せきぎょうほう』。大量の魔力に指向性を持たせて放つ、対結界兵器だ。そうだな、グッバード」

 中隊長に発言を促され、グッバードは口を開く。

「ああ。スカを守ってた結界は、一撃で破壊された。同じものが使われりゃあ、ハベルだって一夜で落ちるぜ」

 サルロはその言葉を聞きながら、隣で体を小さくするセキの肩を抱き寄せた。

「戦場では、私と一緒だ。これ以上、怪我はさせない」

 そっと、彼は囁く。

「一つ、質問いいっすか」

 ガリ

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  • たとえ異端になろうとも~蒼炎と黒炎を宿した騎士、サルロの魔王焼却譚~   #45 スカ陥落

     ドドッ、ドドッと地鳴りにも似た音が、黒い空に響き渡る。土煙が巻き起こり、初夏の雨の中に消えていく。それを為すのは、装甲化された魔物に跨った、騎士たちだ。 目指すのはスカの街。城壁の向こうから降り注ぐ迫撃砲も恐れず、彼らは我武者羅な突進を行っていた。 その前に、土嚢で作られた野戦陣地が現れる。ビューグルの音が鳴り響いた時、小銃を構えた共和国歩兵たちは、ほぼ同時に体を出した。 一糸乱れぬ、一斉射。十ミリ口径の弾丸は超音速で飛んでいく……しかし、止められなかった。防御魔法を展開した騎士の突撃を前に、歩兵の陣地は蹴散らされていく。「ダメだ、これじゃ火力が足りない!」 兵士が叫べば、「止めろ、退くな! 共和国の誇りに懸けて、帝国の手先を押し留めろ!」 と指揮官が応じる。それでも、どうしようもない、という現実ばかりが彼らの目前には、厳然と存在していた。肉を裂かれ、骨を断たれ、無残に倒れていく兵士の数々。「ユウマ、おい、ユウマ!」 隣に立っていた友の名を呼ぶ兵士は、突っ込んできた魔物に頭を潰され、物言わぬ骸となった。「おうおうおう!」 そんな戦場に、野太い声が響き渡る。これでもか、と昼空から雨が降る。「赤盾騎士団、ここにあり!」 スカの城壁に、鎧で身を固めた者たちが立っていた。赤い合金で作られた盾を構え、飛び降りる。迫りくる黒冠騎士の前に立ち、防御魔法で突撃を止めた。 だが、その中で、一際目立つ巨体を誇る男が、敵の只中へと飛び込んだ。盾はなく、身の丈ほどある体験を握っている。「行くぞてめえら! 帝国の雑魚どもを切り刻め!」 男はそう叫んで、大きく跳躍した。大剣を地面に叩きつければ、そこから発せられた風の刃が広がって、黒冠騎士を三人ほど、バラバラにした。 ヘルムのバイザーの中から、チカチカと、赤い光が明滅する。大剣を持ち上げ、肩へ。その姿勢のまま敵の集団へと切り込み、一人、また一人と帝国の騎士を切り伏せていく。鎧など、桐の板のように切り裂かれていく。「だが、これじゃ足りねえな……」

  • たとえ異端になろうとも~蒼炎と黒炎を宿した騎士、サルロの魔王焼却譚~   #44 開戦の日

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  • たとえ異端になろうとも~蒼炎と黒炎を宿した騎士、サルロの魔王焼却譚~   #43 蛇騎士を討て

    「ガリヤ」 階段を上がり、玉座の間に繋がる扉に手を掛けた時、サルロが言った。「ケラック・ダジオリは、私の手で殺す。ここにいて、敵の増援が来ないか見張っていてくれ」 「……やっぱ、お前おかしくなってるぜ」 ガリヤは、扉を開こうとする彼の手を止めた。「俺は、お前に剣技大会でメッタメタにやられたよ」 面頬を上げ、赤い目で真っ直ぐ見つめる。そのままに、サルロの面頬も持ち上げた。「その晩、親父に相談した。そこで言われたよ、騎士団を支えるのは大勢の凡人だ、ってな。俺は天才じゃない。だから、お前みたいな天才が率いる騎士団を、俺は凡人として……ポーンとして、支えるつもりなんだ」 「何が言いたい」 「お前一人じゃ、全部は解決できない」 鎧越し。だが、サルロはその手に籠められた熱を感じ取った。「だから、俺にも背負わせろ。そのために、俺は祈祷騎士になったんだ」 サルロは何も言わず、眼を逸らして面頬を下ろす。「なら、頼む」 そう送った言葉には、人の温度が潜んでいた。 ギシリ、木製の戸が軋む。穴だらけの白い絨毯が敷かれた、古い玉座の間。千切れた垂れ幕の向こうで、雷鳴が鳴った。「来たか、蒼騎士」 その玉座で、蛇騎士ケラック・ダジオリが立ち上がった。「黒冠騎士たちは、鏖殺したのか?」 「ああ、そうだな」 サルロの剣に宿る雷は、赤と黒の入り混じったものだ。「あのガキ……子宮でも刺して、お前の子を孕めないようにしてやりたかったが、思いの外勘が鋭くてな」 「今、首を進んで差し出すのなら、一撃で終わらせてやる」 「そう見えるか?」 ケラックは、右手で剣をスランと抜く。「その言葉、そっくりそのままお返ししよう。蒼騎士よ!」 次の瞬間、ケラックの体はサルロの目の前にあった。鋭く閃いた白刃を、サルロは両手剣で受ける。強化魔法を介さない、純粋な鋼としての攻撃。よろめいた彼のヘルムを脱がそうと、ケラックは手を伸ばした。

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