LOGINリィーンは、洗濯物を干し、掃除を終えると、あのビラを探すことにした。
確か、捨てずに取ってあったと思うのだけど……。 ゴミ捨て場は、家の裏にある。ゴミはいつの間にかなくなっている。おそらくこれも魔道具なのだろう。まぁ、ゴミ捨てと言っても、普段は掃除して出たほこりくらいだ。 ゴミ捨て場より先に進めるか試したけれど、こちらも罠が仕掛けられていた。前回のこともあるから、強行突破は諦めた。 「あった!」 リィーンは、引き出しの奥に目的のビラを発見して思わず声を上げる。 ビラを取り出し皺を伸ばすと、改めて記事の内容を確認する。 「えっと……、兼ねてより愛を育んでいたレオン殿下とマリア嬢……」 記事には、二人の婚約発表について書かれていた。 無事にシナリオ通りに婚約したのね。このビラを発見してから、どれくらい経ったのだろう。よく覚えていない。 う~ん……。ゲームのシナリオ通りなら、これからマリア嬢が、私を見つけてくれるのよね? ん?待って。 そもそも、どうやってこの家に辿り着くの? 家の周囲には、罠があるのに……。近づけなくない? ヒロインには、罠が発動しない……とか? ヒロイン補正というやつね。きっと、そうよ。 でも、もしも……万が一ヒロイン補正が発動しなかったら? マリア嬢が罠で怪我をしてしまう。もちろん罠を仕掛けたのは、私ではないけれど。家の周囲にあるのだもの。必然的に私が犯人だと疑われるよね……。もしそうなったら、マリア嬢を溺愛するレオン殿下から、私、殺されるかも……。 それは困る!そんなのは嫌。それに、あの天使のようなマリアちゃんが怪我するかもしれないなんて、耐えられない。 「どうしたらいい?」 リィーンは悩んだ末に、マリア嬢が来ないか、外に立ち監視することにした。それこそ、まるでかかしのように、ひたすら立っていた。 マリア嬢がやって来たら、罠があることを伝えるべく。 他に妙案が浮かばなかったのだ。家の中にいては、気づかないかもしれないから。 それからは、天候に関係なく外に立つのが日課になった。おかげで、日焼けして肌が荒れた。ただでさえ、そばかすが気になるのに……。肉体はまだ若いのに。 「はぁ……。誰もいないから、独り言が増えるんだよね」 リィーンは、記事の内容を思い返していた。記事には、レオン殿下とマリア嬢の姿絵も描かれていた。 整った顔立ちのレオン殿下と、遠慮がちに微笑むマリア嬢。まさにお似合いの二人だった。うらやましい……。 「はぁ……」 何度目か分からないため息が漏れる。 じっと立っているなんて、どんな苦行よ。 もう少ししたら、かかしの気持ちが分かるかも。 結局、誰の訪れもないまま、また一日が過ぎてしまった。 翌日。朝食にパンを少し食べると、リィーンは今日も庭に立つ。 段々と日差しが強くなり、暑い季節になってきた。外に立つのも体力がいる。 リィーンは、何気なく日焼けした腕に目を向ける。 「ガリガリだね……。痩せ過ぎだよ」 直射日光に照らされて、滝のように汗が吹き出してくる。 無駄に動かないようにして、体力の消耗は極力抑えるようにしている。けれど、容赦なく照りつける太陽によって、何もしなくても体力はどんどん奪われていく。 「なんか、やばいかも……」 そう思った時には、すでに遅かった。 頭がクラクラしてきて、視界がボヤけ始める。地面が波打っているように感じる。 だめだ……立っていられない。 リィーンは、家に戻ろうと思った。しかし、足を踏み出すことができずに、そのまま意識を失い、バタンと地面に倒れてしまった。 朦朧とした意識の中で、必死に呼びかける声が聞こえてくる。 幻聴かな……。 「おい!大丈夫か? これを飲んで、さぁ、口を開けて」 誰?夢?もしかして、お迎えが来たのかな。 「ゴホッゴホッ」 口の中に冷たい水が急に流れてきて、思わず咳き込む。 「大丈夫か?焦らずゆっくり飲んで」 リィーンは、口の中に水が注がれて、生き返る気持ちだった。喉もカラカラだったから。優しい声色で声をかけてくれるのも心地よい。 誰が飲ませてくれているの? 乾き切った口内が、潤されていく。 今まで生きてきた中で、一番美味しい水だ。夢なら覚めないで。もう少し……。 リィーンは、ふわりと抱き上げられた浮遊感を感じた。そして、ぷつりと意識が途絶えた。 「んん……」 どのくらい気を失っていたのだろう。 リィーンは、例えようのない不快感に襲われて意識を取り戻した。身体中が火照ったように暑い。倦怠感がひどく気持ち悪い。 鉛のように重い瞼を、ゆっくりと持ち上げる。 ここは……? 見慣れた天井が見える。リィーンは、自室のベッドに寝かされていた。 私、確か外にいたはずなのに……。いつの間にここまで戻ってきたのだろう? 不思議に思いつつも、上体を起こして立ち上がろうと試みる。 きつい、やばい……だめかも……。 顔から一気に血の気が引くような感覚に襲われた。 リィーンは、バランスを崩して、ベッドから転げ落ち床へと倒れ込む。 「痛っ」 床に落ちた衝撃による痛みと、言いようのないきつさと、気分の悪さから、起き上がることもできないでいた。 しばらくこのまま休もう。 少し休めば回復するかもしれないと思ったリィーンは、そのまま目を閉じて眠ろうとする。 けれど、眠りを妨げるように、ドタドタと誰かが急いで駆けてくる足音が聞こえてくる。その足音は、どんどん近づいてくる。 何の音? 「大丈夫か?どこか痛むか?」 優しい男性の声が聞こえる。誰かがいるはずなんてないのに。 声の主は、床に倒れているリィーンを抱き上げると、ベッドに丁寧に寝かせる。 怪訝に思い、重い瞼を持ち上げると、目の前には男性の姿があった。 「は⁉︎」 だ、だれ?? 「顔色が悪い。ベッドから落ちないようにここにいる。ゆっくり休むといい」 男性は、水に濡らしたタオルで顔を拭いてくれた。 あぁ、まだ夢を見てるのか。 冷たいタオルの感触は、火照った顔にはとても気持ち良かった。 心地よいタオルの感触に安心して、そのまま気を失うように深い眠りについた。が、ノックの音が聞こえて、カインは急いで飛び退いた。 「先輩、そろそろいいですか?」 「あぁ」 のしかかっていた温もりが急に消えて、寂しさを感じるリィーン。 心臓が早鐘を打ち、落ち着かない。いったい、カイン様は何をしようとしていたの……? 思いだすと恥ずかしくなり、一気に体温が向上する。ふるふると首を振り、気持ちを落ち着かせ現実に意識を取り戻す。 キースの声がする。キースが言っていた先輩って、カイン様のことだったのね。じゃあ、この小屋はカイン様の小屋だったんだ。 「失礼します」 キースの手には、丸められた書類が握られていた。 「リィーン、危ない目に合わせてごめんね。それに、俺も、申し訳ありませんでした」 入室してすぐさま、キースは深々と頭を垂れる。 「キース、謝らないで。キースにも助けられてばかりだね。ありがとう」 「キースは、リィーンの監視には携わってない。本当にすまない。リィーン。そして、これを見てほしい」 カインは、書類を渡そうとするも、思いとどまる。 「あ、起き上がらなくていい。まだ、つらいだろう。私が代わりに広げてもいいだろうか?」 「お願いします」 カインは、横たわるリィーンに見えるように書類を広げる。 長い文章が書かれていた。文字を目で追うの疲れる。 ある言葉に目が釘付けになる。 「恩赦……」 「あぁ。恩赦がでたらしい。そもそもリィーンには、なんの罪もないと思うが。恩赦がでたようだ。」 「ふんっ!人間は時間の無駄遣いばかりする。そんな書類を作る前に、すぐに解放すればいいものを」 ウサギは、ベッドをよじ登り胡座をかき腕を組む。 「ウサギさん?無事だったんだ……良かった……。」 「あの程度の傷、どうってことはない。が、少し回復に時間を要した。お前が無事で良かった」 「リィーン、もう、あの家から出ても大丈夫だ。もう、自由だ。詳細は、こちらに書いてある。身元保証とこれまでの境遇を考慮していくらかの補償金もでるようだ…」 「自由……自由……ゔあぅ……」 やっと解放される。他人事のように感じていたつもりだった。ゲームの設定だからだと。でも、本当は不安だった。怖かった。終わりの見えない生活がつらかった。これで、やっと自由になれる……。抑えていた感情が、涙となり溢れてくる。人前だということも忘れて、まるで、子供の
「リィーン……」 小屋に戻ると、カインは脱兎の如くリィーンの側へ駆け寄る。丁重にベッドまで運び、布団を掛け、優しく頬を撫でる。 「すまないが、リィーンが目覚めるまで二人だけにしてもらえないか……頼む……」 真摯な表情で懇願され、キースは考えを巡らせる。 「先輩……、何か必要な物とかあったら、声かけてください。俺は、扉の修理をしてるっす。あいつら、無理矢理こじ開けやがって……」 「私も手伝おう。簡単な魔法なら使える」 「手伝ってもらえると、助かるっす」 「青年、お前は確かキースとか呼ばれていたな。ところでお前は、リィーンとはどういう関係なんだ?」 「あー、それはっすね……」 キースとウサギが退室すると、室内は静寂に包まれた。 カインは、洗面所から水とタオルを持ってくると、タオルに水を含ませ硬く絞る。リィーンの顔を、優しく拭き始めた。顔を拭き終えると、両手の土汚れも落としていく。 「痛かっただろう……確か、ここにも置いていたはずだ」 カインは、治癒効果のあるハンドクリームを、塗り込んでいく。 「こ、これは、治療のためだ。決してやましい気持ちはない……」 キース達がいないのを再度確認した後、リィーンの衣服に隠れている箇所に怪我がないかを確認する。手際よく塗布を終えると、元通りに衣服を整えて、布団を掛けた。 ベッド脇の椅子に腰掛けると、リィーンの手を握りしめる。 「リィーン……」 「うぅ……」 「リィーン?気がついたのか?リィーン」 「カイン様……?カイン様……?あぁ……本当にカイン様だ。良かった。カイン様が、ご無事で……。助けてくださったのですね……ありがとう……ございました……。うさぎさんは?」 「あのうさぎのことは心配いらない。彼も元気だ。キースと外にいる。リィーン、遅くなりすまない。もっと早くに来るべきだった……。一人にしてすまない……。リィーン、君に話さなければいけないことがある」 神妙な面持ちで話すカインの雰囲気に、リィーンは不安を覚える。 変に誤解されたくない。何か問い詰められるのなら、その前に自分から事実を告白したい。 カインの言葉を遮るように、リィーンは早口で言葉を紡ぐ。 「わ、私も、お話しなければいけないことがあります。私、あの家から出ては行けないのです!軟禁……されていて……。でも、何か罪を犯したりとか
体中が痛い。 「う……」 動こうとして更に激痛が走った。 「目が覚めたのか、人間」 「っ!」 先程、自分を襲った魔族に呼びかけられて、飛び起きる。痛みはあるものの、手足が動かせることに安堵する。 縛られたりしていなくて良かった。 「ここは……?」 周囲を確認したリィーンは、見慣れた小屋にいることに違和感を覚える。 キースと一緒にいたあの小屋の中だったからだ。 「……うさぎさん!」 部屋の隅に放置されるようにして、ウサギが倒れているのが目に入る。 「どうしてこんな酷いことを……」 うさぎの側へ駆け寄ろうとした所、ミハイルによって行く手を阻まれる。 「おーっと、大人しくしてもらおうか人間」 「どいてください!それに、私は人間という名前ではありません!」 咎めるようにきつく睨むリィーン。 「随分、威勢がいいなぁ人間。ちっぽけな人間に興味などないが、そこまで言うなら、名前くらいは聞いてやろう。それで?名前は?」 「……リィーンです……」 素直に答えるのが癪だったが、拒む理由もないので名前を口にする。 「リィーン。へぇ、アレクセイ様がこんなのが好みなのか」 上から下まで舐め回すような視線を向けられて、思わず後ずさる。 「さっきまでの威勢はどうした?」 「っ!やめてっ!」 ミハイルは、片手でリィーンの首を掴み徐々に力を入れていく。 必死にもがくけれど、リィーンの力では敵わない。息をするのもできなくなってくる。 苦しい……。 「おい!ミハイル、まだ殺すな!アレクセイ様が目を覚ますまで待て。アレクセイ様の目の前で殺せ」 「そうは言うが……おい、シド、お前が蹴ってでも起こしてくれないか。俺は、もう、殺したい……」 ミハイルの瞳が飢えた獣のように爛々と輝きを増す。恐怖に震えながらも、リィーンは、必死に抵抗を続けた。 ぐるしい……。息が……できない……。やっぱり、脇役は……幸せにはなれない……。 このまま、私、死ぬの……?うさぎさん……。カイン様……せめて、もう一度会いたかった……。もう……だめ………。 「っと、何だ⁉︎クソッ!誰だ!」 突如ミハイルは、リィーンの首を絞めていた手を外し飛び退く。いつの間にかミハイルの手は鋭い刃物で切られた跡があり、生温かい血が流れている。 鉄のような匂いと、一気に肺に空気が入ってくる感
「ぐぁ!」 「痛い」 むぎゅっと柔らかい感触がする。何かの上に倒れ込んだようだ。何かを確認するのも怖くて、リィーンは動けないでいた。 「さっさと、どかんかーーー⁉︎」 耳をつんざくような怒声が自身の下から聞こえて、慌てて飛び退く。 「あ、あ、ごめんなさい!って……うさぎさん?うさぎさんじゃない。どうしたの?あ、捕獲されたの?」 リィーンは、網を被った状態でジタバタするウサギから、網を取り外した。 「だから、何度も言っているが、私はうさぎではない!この程度の網、どうってことはない」 「じゃあ、取らなくてもいいの?」 助けようとして文句を言われたリィーンは、網をウサギに戻そうとする。 「なっ⁉︎止めんか!」 ウサギはリィーンから網を奪い取り、瞬時に燃やして消し去る。 「うさぎさん、魔法が使えるの?」 ウサギの足から炎が出てきて驚くリィーン。 「さっきの音はウサギさんだったのね。狩猟者から追われてたんだ」 「あんな奴らどうってことはない。」 「え?でも……」 「うるさい、この網は後で外そうと思って、敢えてこのまま動いていたのだ。この姿では、思うように魔法が使えない。というか、リィーン、お前は解放されたのか?そうか、マリアが伝えてくれたか」 「え⁉︎マリアちゃん?ねぇ、今マリアちゃんって言った?ねぇ、マリアちゃんを知っているの?会ったの?ねぇ!」 リィーンはウサギを持ち上げ、ブンブンと身体を揺さぶり詰問する。 「こら、リィーン、やめろ。頭が揺れる!落ち着け」 ウサギはリィーンの手から逃れると、地面に着地する。 「ごめんなさい、うさぎさん。つい、興奮しちゃって。マリアちゃんと会ったの?いつ?」 「小屋を出てすぐだ。マリアとかいう娘がウロウロしていた。不審に思い問い詰めたら、王子の婚約者と言うではないか。この姿で、ルナリア王にどうやって会いに行くか悩んでいたから、利用させてもらった。リィーンのことも解放を約束させたが、あの娘……。私のことを、まるで、ぬいぐるみかペットのように扱い始めた。天然なのかあの娘は。まぁ、悪い娘ではなかったが、あれは、おそらく魅了もちだろう。周りの者が誰も止めない。一歩間違えば……と考えると恐ろしいな。シリルとかいう魔法使いがいたので、転移させてもらった。ところが、今度は、あいつらに追われてこのざまだ。まぁ
「まだ、身体がたるい……戻ろう」 走り去るキースを見送った後、リィーンは小屋へと戻る。 キースに言われた通りに鍵を閉め、念入りに再度確認する。 ほんの少し動いただけなのに、既に倦怠感がある。やっぱり、大人しく今日も安静にしていよう。 リィーンは、ベッドに横になることにした。目をとじると、すぐに泥のように眠ってしまった。 窓から差し込む日差しが明るくなり、目が覚める。 どれくらい眠ってしまったのだろう。熟睡したので、幾分身体が軽くなっている。 リィーンは、ゆっくりと起き上がり、隣の部屋の扉をノックをしてみる。 「キース、帰ってる?キース、いる?」 何度かノックをしたものの、返答はない。 キースは、まだ戻ってないようだ。 窓辺に近づき、外の景色を眺めると、太陽は既に真上に昇っていた。 「ちょっとだけなら、外に出ても大丈夫だよね」 戸締りをした後、キースに言われた場所へと鍵を保管する。 小屋の周囲を見渡すと、見覚えがある箇所がある。 毒草が生えてるいるのは、あの辺りなのかな。倒れた場所。何となく見覚えがある。 キースに、今度、毒草を教えてもらおう。 リィーンは、毒草が生えているのとは、反対の方向へと、進んでみることにした。 しばらく進んで行くと、開けた場所にでた。 「わぁ」 思わず感嘆の声が漏れる。小高い丘だったので、遠くまでの景色が一望出来た。絶景ではないけれど、初めてみる景色に胸が踊る。家が建ち並んでいる場所も見える。 かなり距離はあるけど、あそこまで行けば人に会える。行ってみたい。 リィーンは、好奇心に負けそうになるのを必死に堪えた。 このまま黙って出ていくような、失礼なことはできない。 しばらく風に当たった後、来た道を引き返すことにした。 「キース、そろそろ戻って来てるかな」 黙って出て来た事に、今頃になって罪悪感を感じる。急ぎ足で進むリィーンは、何かが爆ぜる音に気づく。 「何の音?」 何かを燃やしているのだろうかと、キョロキョロと周囲を見るも、煙は見えない。 「あっちだ!追え!」 「本当に殺るのか」 「当たり前だろ、こんなチャンス逃す手はないだろ」 複数の足音と不穏な会話が耳に届く。 誰?追っ手……?まさか、私を連れ戻しに……?なんで……。命の危険に晒される描写なんてなかったはず。私が脱出したこ
「ちょ、先輩」 「キース!」 「俺より先輩の方が詳しいでしょ!先輩と俺くらいっすよ」 「団長は、お前を見て何も言わなかったのか?」 「何をですか?会議の内容は聞きましたけど。団長も、先輩が来てるなら教えてくれたらいいのに。まぁ、呼ばれない限り、団長と話す機会なんて、ないんですけどね」 「お前は、今まで何をしていたんだ?」 「だから、俺は、最近入った新人の相手というか、指導まがいのことを押し付けられていたんです!やる気のない奴で、面倒だからと!団長にバレたらまずいとかで、強引に別棟に押し込められてたんでよ! 普段先輩が任務に加えてくれないから、暇人だと思われてるんです!雑用ばかり押し付けられる身にもなってくださいっすよ。こっちは、隙を見つけて、先輩を探してたのに!」 何ということだ!私達二人がリィーンの側から離れていたんて……。 1ヶ月近くだ。1ヶ月近くも放置した状態……。私は何をしているんだ! 自分が許せず、怒りが抑えきれずに拳を木に叩きつけていた。 「先輩……?どうしたんですか?」 キースが不安気に問いかけてくる。 「キース!私は、会議の報せを待つ間、ずっと宿舎にいたんだ!その間対象者は……」 「そ、それって!何も食べてないってことじゃないですか!大変だ、助けにいかないと」 一気に血の気が引き、顔面蒼白になるキース。リィーン不在の家の中に駆け出そうとしたキースの腕を、カインは咄嗟に掴む。 「おい、どこに行く?」 「どこって、何言ってるんですか。家に入るんですよ!中で倒れているかもしれない」 「落ち着けキース!倒れている訳ないだろ?お前が既に助けたのだろう?」 「は⁉︎今から助けに行くんすよ!だから、離してください先輩」 「落ち着けキース!お前、さっきリィーンと一緒にいただろう」 「え、先輩、リィーンのこと知ってるんですか?今は、そんなことよりも……」 「お前、本当に知らないのか?対象者はリィーンだ!」 「は?リィーンが……?対象者……?対象者?いやいやいや、だって普通のお嬢さんですよ?先輩……?本当なんですか?俺、知らずに……」 動揺するキースの腕から、カインはゆっくりと手を離した。 「キース、お前の言う通りだな。一人では限界がある。対象者の顔を知らせておくべきだった。どうしても……(リィーンを見せたくなくて)。







