Mag-log in翌朝。
駿は目覚ましが鳴る少し前に、自然と目が覚めた。
◆◆◆
カーテンの隙間から差し込む朝の光が、やけに眩しい。
ぼんやり天井を見上げながら、小さく息を吐く。 胸の奥が落ち着かない。だけど、嫌な感覚ではなかった。むしろ逆だ。
何かが始まってしまった後特有の、ふわつくような高揚感。
昨日の放課後。 夕陽。 震える声。 思い返した瞬間、身体が熱くなる。枕に顔を埋めたくなるくらい恥ずかしいのに、何度も思い返してしまう。
(……付き合ってるんだよな、俺たち)まだ実感は薄いけど、昨日の出来事を頭の中で繰り返すたび、少しずつ現実が輪郭を持ち始めていた。
制服に袖を通し、家を出る。空気は少し冷たくて、それが逆に心地よかった。
いつもと同じ通学路のはずなのに、世界の色がほんの少し違って見える。
学校へ着き、教室へ入ると、まだ席は半分ほどしか埋まっていなかった。
朝特有のざわめき。
窓際で話す女子の笑い声。 机に突っ伏したまま眠っている男子。その中を歩いていると、まるで自分の告白が成功したかのように、直己がウキウキしながら話しかけてくる。
「おはよー!駿。どうだ1日目の朝は?」
「いつもの朝と変わんないよ」
そう答えたはずなのに、直己は肩をすくめた。
「表情からはそう見えないけどな」
普通に答えたつもりだったが長い間、関わってきた直己にはバレバレだった。
「直己には敵わねぇ」
「まぁーな」
直己との軽口に夢中になっている時だった。
教室の扉が開き、早川さんが入ってくる。いつも通りの制服姿。
肩の辺りで揺れるポニーテール。友達と自然に挨拶を交わしながら、自分の席へ向かって歩いてくる。
ただ、それだけのことで、昨日までと何も変わらないはずなのに、何故か落ち着かない。
そして。
一瞬だけ、目が合う。 その瞬間、早川さんの瞳がわずかに揺れた。すぐに視線を逸らされる。
けれど、耳が少し赤かった。
その小さな変化だけでも、嬉しかった。昨日の告白は夢じゃなかった。
ちゃんと現実なんだと、ようやく実感が追いついてくる。
気づけば、自然と口元が緩んでいた。だが結局、いつもと変わらない一日を過ごして、気づけば放課後になっていた。
ため息をついた後、教材をしまおうとした瞬間、机の中に小さく折り畳まれた紙があることに気付く。 一瞬で鼓動が速くなり、開いてみる。そこには。
『部活が終わったら、倉庫裏に来てね。果奈』 短い文章なのに、胸の奥が、一気に熱を持つ。 紙を持つ指先が少しだけ落ち着かなくなる。頬が緩むのを止められなかった。
果奈からのメッセージの余韻に浸っていたのも束の間、部活の始まる時間が迫っていることに気づき、急いで部活へと向かう。 所属しているテニス部の部室に着くと、コートに向かおうとする辰巳隆二(たつみ・りゅうじ)とすれ違う。 隆二はクラスは違うが、入部した当初に意気投合し、それ以降、ライバルであるのと同時に友達になった。また、女子からの人気も高く、果奈と同じように、同級生の女子だけではなく上級生や下級生の女子からも告白されたことがあるほどだった。
だが、本人は全て断っている。
「浅村、来るの遅かったけど、何かあったのか?」「と、特に何もないよ……」
返事が少し遅れると、隆二はすぐに眉を上げた。
「絶対何かあったな」
「本当に何もないって!」
「まぁいい。先に行ってるから、早く着替えて来い」
そう言って歩いていく背中を見送り、小さく息を吐いた。
直己と話した時もそうだけど、俺って浮かれてる時、そんなに分かりやすいのか?と疑問に思いながらも、着替えを終えて、コートへと向かう。
部活のメニューはいつも通りで、身体も動いている。なのに、集中が続かない。
気を抜くと、意識が別の場所へ飛んでいく。 倉庫裏。 早川さん。 放課後。その単語を思い出すだけで、胸が騒ぐ。
「浅村、いつもよりも動きが鈍いぞ?」
隆二の声が飛ぶ。
「そうか?俺はいつも通りにやってるつもりだけど」
「なんか、心が上の空で練習に集中できてないって感じがするぞ」
「気のせいだよ」
図星過ぎて、そう返すしかなかった。
そのまま始まった練習試合でも、小さなミスが続いた。普段なら拾えるボールを落とす。
タイミングがわずかにズレる。結果、いつもなら負けない相手に負け、消化不良のまま練習も終えた。
けれど、不思議と気分は沈まなかった。悔しさよりも、別の感情の方がずっと大きい。
練習が終わり、夕焼けに染まった校舎裏を歩く。
オレンジ色の光が地面へ長く影を落としている。
待ち合わせ場所である倉庫裏に近づけば近づくほど、心臓の鼓動が高まっていた。期待。
緊張。 不安。全部が入り混じって、胸の奥を叩き、呼吸が少し速くなっている。
それを自覚しながらも、気づかないふりをして、ゆっくり歩いていった。
練習が終わった後。 駿はさっき笑っていた隆二を問いただす為に話しかける。 ◆◆◆「俺が祐希との試合の後、喋っていた時に、後ろでこそこそ笑っていたけど、何か面白いことでもあった?」 真正面から問い掛けるが、隆二は眉一つ動かさなかった。「別に笑ってないけど」 あっさり否定し、何もなかったように続ける。「早く早川の元に行かなくて大丈夫なのか?」 話題を見事にすり替えられる。「隠し通そうとしても、無駄だぞ」 そう言うと、隆二は観念したように大きく息を吐いた。「だって、祐希の言葉に、浅村が分かりやすく反応するものだから、笑わないでいる方が無理」 思わず顔を顰めてしまう。「そんなに分かりやすかった?」「凄い分かりやすかった」「マジか……」 思わず額を押さえた。 自分では必死に誤魔化したつもりだったのに、それが全部顔に出ていたらしい。「にしても、その都度思うんだけど、祐希って、こういうことに関する感が鋭いんだ?」「さーな、強いて言うなら、祐希も気になってる人が居るから、感が鋭いんじゃないか?」「へえ……祐希にも気になる人がいるんだ」「それよりも、本当に早川の所に向かわなくて大丈夫なのか?」 その一言で、時計を見てみると。待ち合わせ時間が近づいていた「ヤバい、そろそろ行かないと。じゃあ、また明日」「じゃあな」 部室を後にして、果奈と待ち合わせしている場所へと急いで向かった。 待ち合わせ場所には、既に果奈が待っていた。「ごめん、少し待たせちゃった。」 息を整えながら謝ると、果奈は首を横に振った。「ううん、今日は練習長引いたんでしょ?それくらい分かるよ。」 責めるような様子は全くなく。その優しい笑顔に、胸を撫で下ろした。「ありがとう。」 二人は並んで歩き始める。 夕暮れに染まる住宅街。 部活帰りの生徒たちが、それぞれ家路についていた。 しばらく歩いたところで、果奈は両腕を大きく伸ばす。「今日も部活の練習疲れた~」「そういえば、果奈の県大会って今週末だったよね。俺も見に行きたかったな~」 果奈は少し驚いたようにこちらを見る。 けれどすぐに、小さく笑った。「駿も大会前で練習が忙しいからしょうがないよ。今は自分の練習を優先して」「分かった。目標に向かって頑張るよ」 部活動の話題が盛り上がったので、果奈の
次の日の放課後。 駿はもうすぐ行われる地区大会に向けて練習をしていた。◆◆◆ 照り返しの強いコート。 ラケットを振るたびに腕へ衝撃が伝わり、額から流れた汗が頬を伝って落ちていく。 容赦のない球出し練習が終わると、コートの隅でボールを拾っていた隆二へ声を掛ける。「玉拾い、お疲れ様」 「代表メンバーに選ばれなかったからしょうがない」 その言葉は冗談めいていたが、代表入りを逃した悔しさが完全に消えたわけではないことを、知っていた。「そっちもお疲れ、今江先生が球出していたから、相当きつかっただろ?」「ガチできつかったし、最後なんて腕が上がらなくなるかと思った」 そんな話をしていると、あることを思い出す。「この後祐希とラリーする約束してるんだけど、水飲んだりトイレ行ったりしたいから、少しだけ代わり頼める?」「勿論」「助かる。少しの間、頼んだ」 そう言って、学校の玄関へと向かう。 校舎へ入り、上履きへ履き替え、そのまま部室近くのトイレへ向かおうとする。 だけど。 今日は、途中で足が止まった。 体育館の方から聞こえてくる。 ――パンッ! 乾いた羽根を打つ音。(……もしかして) 自然と体育館の方へ視線が向き、何かを察したように、体育館の方にあるトイレへ向かうことにした。 少しだけ迷ったけど、足は体育館へ続く廊下を歩いていた。 体育館へ入ると、熱気が一気に身体を包み込み、汗と体育館特有の床の匂いが鼻をくすぐる。 手前ではバドミントン部。 奥ではバスケットボール部。 それぞれが大会へ向けて声を張り上げ、体育館全体が活気で満ちている。 邪魔にならないよう壁際を歩きながら、自然と視線を巡ら
部活を終えた駿は家へ帰ると、茶の間へ向かった。 ◆◆◆ カレーの香りが家中に広がっていて、思わず腹が鳴りそうになるほど食欲を誘う匂いだった。 しかし、その匂いとは正反対の空気を目にする。「直己、落ち込んでそうだけど大丈夫か?」 その姿を見て、一瞬胸がざわつく。 美生と買い物をした時、関係を思ったより縮められなかったのだろう。 そんな考えが頭をよぎる。「はぁ……結ちゃんがまだ俺に冷たくてさ、いつになったら忘れてくれるんだよ…」「あのことね、結も頑固なところがあるからそこまで気にしなくてもいいよ」 そうは答えたが、美生との買い物じゃなくて、結との蟠りで落ち込んでいたのかよと、ツッコミそうになる。 「そんなことよりも美生との買い物はどうだった?」 その瞬間、さっきまで曇っていた直己の表情が、少しだけ明るくなった。「最初は会話が続かなかったり、会話の頻度が少なかったけど、一緒に買い物をするにつれて会話が弾むようになって、駿の家に向かう時は一度も途切れることなく会話出来た」 いい報告が聞けて、自然と口元が緩む。「良かったじゃん」 心からそう思えた。 あれほど悩んでいた親友が、一歩踏み出せた。 その事実だけで嬉しかった。「ありがとな駿、この話を持ち出してくれて。こういう機会がなかったら、ずっと島内さんとの距離を縮められないで、もがいていたと思う」「お礼を言いたいのはこっち。今日は買い物行ってくれてありがとう」 二人で笑い合う。 少し前なら、お互いこんな素直な言葉は照れくさくて言えなかったかもしれない。 それでも今は、不思議と口に出来た。「お礼がてらじゃないけど、一つお願いいいか?」 「いいよ」「また島内さんと買い物する機会があっ
放課後。 直己は待ち合わせ場所である複合商業施設へと向かっていた。◆◆◆ 約束の時間より少し早く着けば、余裕を持って迎えられると思って、家を出た筈だった。 しかし、待ち合わせ場所へ着いた瞬間、その考えはあっさり覆される。 そこには、すでに島内さんが立っていた。 スマホを眺めながら待っている姿は、どこか穏やかで、その姿を見ただけで鼓動は一気に速くなる。(やっちまった……。) せっかく早く来たつもりだったのに、結局待たせてしまい、申し訳なさが先に立つ。「島内さん、すいません。待たせてしまったみたいで」 中学校の時は普通に話せていたけど、今は異性として意識していることもあり、軽く謝るつもりが堅苦しい言葉で謝ってしまった。「私がちょっと早く着いちゃっただけだからそんな謝らないで。それに中学校の時みたいに普通な感じで大丈夫だよ」「りょ、了解」 さっきよりかは普通に対応出来たけど。島内さんの優しさに胸が締め付けられそうになる。 最初に日用品売り場へと向かう。 歩幅を合わせて歩くだけなのに、妙に緊張してしまう。 沈黙が続く。 何か話そう。 そう思うほど、頭の中は真っ白になる。 すると、島内さんの方から口を開いた。 「駿君から何買えばいいのか聞いていない?」 慌ててスマートフォンを取り出し、駿から送られてきたメッセージを開いた。「買う物は歯磨き粉、男用のシャンプー、ゴミ袋、ノートだって」「分かった。まずはゴミ袋が売ってるところから行くね」 島内さんは迷いなく歩き出し、少し遅れて後を追った。 ゴミ袋を手に取った後、続けてノート、歯磨き粉と、買い物自体は驚くほど順調に進んでいた。 けれど。 俺の心だけは順調とは言えな
次の日の朝。 駿が朝食を食べていると、向かいに座っていた結がふと思い出したように口を開いた。◆◆◆「兄さん」「ん?」「美生姉さんと買い物でノート買ってきてくれない?」 その一言で、箸がぴたりと止まった。「えっ!?今日って美生と買い物に行く日だっけ?」「はぁ?まさか忘れてたの?」「はい……」「はぁぁ……」 結が呆れたように、大きなため息を吐いた。「しかも今日、大会前の模擬戦でなかなか部活抜けられないんだよな……」 今日は代表メンバー同士の実戦形式の練習があり、途中で抜けられる雰囲気ではない。 すると結が静かに言う。「仕方ないから、今日は私が行くね」「部活は大丈夫?」「顧問の先生に部活を休んでもいいか聞くのは面倒臭いけど、大きな大会も近くにないから、大丈夫」 結は大丈夫だと言っていたが、長男として結にあまり負担をかけたくないという気持ちが勝り、何か良い方法がないかと考え始める。 そんな時だった。 スマートフォンが震え、画面を見ると、直己からLINEが来ていることに気づく。『新作RPGがやばい!』 学校で言えばいいだろと思った瞬間、頭の中に一つの案が閃く。(そうだ、直己に頼んでみよう) 美生と買い物に行かせたら、何かしらのきっかけに繋がるかもしれないし、直己は写真部だけど、幽霊部員で部活行ってない。 美生も中学三年の時、俺と直己の三人で受験勉強をよくやっていたから、多分了承してくれると思う。 そう考えた後。 すぐに直己へメッセージを送る。『今日、どうしても部活を抜けられなくて、美生と一緒に買い物に行ってくれるとありがたい』 続いて、美生にも送る。『ごめん、美生』『今
次の日の朝。 柔らかな朝日が街を照らす中、駿は果奈と並んで学校へ向かっていた。◆◆◆ 果奈が学校へ戻ってきてからというもの、この時間は二人にとって当たり前になりつつあった。 待ち合わせをしたわけでもない。 どちらから誘ったわけでもない。 気がつけば同じ道を歩き、他愛もない話をしながら学校へ向かう。 そんな何気ない朝が、心地良かった。「ふぁ……」「凄く眠そうにしているけど、やっぱり、昨日何かあった?」 その質問に果奈が身体に電撃が走ったかのようにびくっと反応した。「ううん、なんでもない。強いて言うなら、弟のことを寝かしつけていたくらい」 そして思い出したようにこちらを見る。「それと、昨日はごめんね。急に電話切っちゃって」「そ、そうなんだ……」 果奈が焦りながら答える様子を見ていると、電話を切られた後、俺が何を考えていたのか思い出してしまった。(……駄目だ) 頭の中に昨夜の記憶がよみがえる。 急に電話を切った果奈。 “お風呂に入る”という言葉。 そして。 そのまま果奈がお風呂に入る様子を、勝手に想像してしまった。(俺、何考えてたんだ……) 思い出しただけで耳まで熱くなり、果奈と同じように、少しだけ視線を泳がせた。「どうしたの、なんか凄い反応してたけど?」 果奈が不思議そうに覗き込む。「本当に、本当に!なんでもない」 果奈がお風呂に入ってる姿を想像してたなんて、口が裂けても言える訳がない。「逆にそこまで返されると、怪しいんだけど……」「本当に何もないから」 これ以上この話題を続けたら危ないと思い、果奈の弟の話題へと変える。「それよりも弟の寝かしつけるのって
果奈に流されるまま、駿は映画館へと向かった。 ◆◆◆ 映画館は休日ということもあり、様々な人たちで賑わっていた。 「私、観たい作品があるのだけどそれでもいい?」「いいけど、どんな作品?」「恋愛もの。ラスト泣けるって友達が言ってたから気になってたんだよね」「そうなんだ」 特に観たい作品も無かったし、一緒に見られればそれでいいと思い、この作品を観ることにする。 作品のタイトルは『失いたくない』。 主人公がヒロインへの告白から始まる恋。 想いが通じ合い、幸せな結末へ向かう筈だったが、ヒロインが通り魔に刺されてそのまま死んでしまう。 絶望していた主人公がヒロインの真実
週末。 午前中の部活を終え、駿は家に戻るとすぐシャワーを浴びた。 ◆◆◆ 髪を洗って、流して。 念のためもう一度首元にシャワーを当てる。 絶対に汗の匂いが残らないよう、念入りに身体を綺麗にする。 (気にしすぎだろ) そう思ったが、手は止められない。 今日は、果奈と二人きりで出かける。 考えるだけで、落ち着きを保てなくなっていた。 シャワーを終え、家にある姿鏡の前で服を広げる。 候補が何着も並んでおり、着てみては脱ぎ、鏡を見る。 しっくりくるやつもあったが、すぐに違う気がして、また着替え直す。「……何やってんだ、俺」 服選びがただの繰り返し作業へ
駿が倉庫裏に着いた時、早川さんの姿はまだなかった。 ◆◆◆ 夕焼けに染まった校舎の影が、静かに地面へ伸びており、風が吹くたび、木々がかすかに揺れていた。 スマホの時間を確認するが、まだ数分しか経っていない。 本来なら、早川さんが所属するバドミントン部はテニス部よりも早く終わって、待っているはずだった。(……練習、長引いてるだけだよな) そう思おうとするのに、別の考えが勝手に浮かんでくる。 疑いたくないのに、疑ってしまう。(何考えてんだよ、俺) 頭では分かっている。けれど、不安は理屈じゃ止まらない。 胸の奥に、小さな黒いものが広がっていく。 その時だった。 「
帰り道。 駿は告白が成功したことを実感できないまま、家に向かって歩いていた。 ◆◆◆ 果奈と途中まで一緒に帰っていたのだが、正直何を話したのか覚えてない。 それどころか、ついさっき告白が成功したという事実を、まだうまく受け止めきれずにいた。 夕暮れの街を歩きながらも、足元がどこか浮ついている。 通り過ぎる自転車の音も、信号機の電子音も、妙に遠かった。 頭の奥では、さっきの声が何度も繰り返されている。 ――「……いいよ」 あの小さな返事。 照れたような表情。 夕陽に染まった頬。 思い返すたび、胸の奥が熱くなるが、同時に、現実感が薄かった。 (……本当に、付き







