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1-3 膨らむ期待

작가: 青サバ
last update 게시일: 2026-06-11 21:24:24

 翌朝。

 駿は目覚ましが鳴る少し前に、自然と目が覚めた。

    ◆◆◆

 カーテンの隙間から差し込む朝の光が、やけに眩しい。

 ぼんやり天井を見上げながら、小さく息を吐く。

 胸の奥が落ち着かない。だけど、嫌な感覚ではなかった。

 むしろ逆だ。

 何かが始まってしまった後特有の、ふわつくような高揚感。

 昨日の放課後。

 夕陽。

 震える声。

 思い返した瞬間、身体が熱くなる。

 枕に顔を埋めたくなるくらい恥ずかしいのに、何度も思い返してしまう。

(……付き合ってるんだよな、俺たち)

 まだ実感は薄いけど、昨日の出来事を頭の中で繰り返すたび、少しずつ現実が輪郭を持ち始めていた。

 制服に袖を通し、家を出る。

 空気は少し冷たくて、それが逆に心地よかった。

 いつもと同じ通学路のはずなのに、世界の色がほんの少し違って見える。

 学校へ着き、教室へ入ると、まだ席は半分ほどしか埋まっていなかった。

 朝特有のざわめき。

 窓際で話す女子の笑い声。

 机に突っ伏したまま眠っている男子。

 その中を歩いていると、まるで自分の告白が成功したかのように、直己がウキウキしながら話しかけてくる。

「おはよー!駿。どうだ1日目の朝は?」

「いつもの朝と変わんないよ」

 そう答えたはずなのに、直己は肩をすくめた。

「表情からはそう見えないけどな」

 普通に答えたつもりだったが長い間、関わってきた直己にはバレバレだった。

「直己には敵わねぇ」

「まぁーな」

 直己との軽口に夢中になっている時だった。

 教室の扉が開き、早川さんが入ってくる。

 いつも通りの制服姿。

 肩の辺りで揺れるポニーテール。

 友達と自然に挨拶を交わしながら、自分の席へ向かって歩いてくる。

 ただ、それだけのことで、昨日までと何も変わらないはずなのに、何故か落ち着かない。

 そして。

 一瞬だけ、目が合う。

 その瞬間、早川さんの瞳がわずかに揺れた。

 すぐに視線を逸らされる。

 けれど、耳が少し赤かった。

 その小さな変化だけでも、嬉しかった。

 昨日の告白は夢じゃなかった。

 ちゃんと現実なんだと、ようやく実感が追いついてくる。

 気づけば、自然と口元が緩んでいた。

 だが結局、いつもと変わらない一日を過ごして、気づけば放課後になっていた。

 ため息をついた後、教材をしまおうとした瞬間、机の中に小さく折り畳まれた紙があることに気付く。

 一瞬で鼓動が速くなり、開いてみる。

そこには。

『部活が終わったら、倉庫裏に来てね。果奈』

 短い文章なのに、胸の奥が、一気に熱を持つ。

 紙を持つ指先が少しだけ落ち着かなくなる。

 頬が緩むのを止められなかった。

 果奈からのメッセージの余韻に浸っていたのも束の間、部活の始まる時間が迫っていることに気づき、急いで部活へと向かう。

 所属しているテニス部の部室に着くと、コートに向かおうとする辰巳隆二(たつみ・りゅうじ)とすれ違う。

 隆二はクラスは違うが、入部した当初に意気投合し、それ以降、ライバルであるのと同時に友達になった。

 また、女子からの人気も高く、果奈と同じように、同級生の女子だけではなく上級生や下級生の女子からも告白されたことがあるほどだった。

 だが、本人は全て断っている。

「浅村、来るの遅かったけど、何かあったのか?」

「と、特に何もないよ……」

 返事が少し遅れると、隆二はすぐに眉を上げた。

「絶対何かあったな」

「本当に何もないって!」

「まぁいい。先に行ってるから、早く着替えて来い」

 そう言って歩いていく背中を見送り、小さく息を吐いた。

 直己と話した時もそうだけど、俺って浮かれてる時、そんなに分かりやすいのか?と疑問に思いながらも、着替えを終えて、コートへと向かう。

 部活のメニューはいつも通りで、身体も動いている。

 なのに、集中が続かない。

 気を抜くと、意識が別の場所へ飛んでいく。

 倉庫裏。

 早川さん。

 放課後。

 その単語を思い出すだけで、胸が騒ぐ。

「浅村、いつもよりも動きが鈍いぞ?」

 隆二の声が飛ぶ。

「そうか?俺はいつも通りにやってるつもりだけど」

「なんか、心が上の空で練習に集中できてないって感じがするぞ」

「気のせいだよ」

 図星過ぎて、そう返すしかなかった。

 そのまま始まった練習試合でも、小さなミスが続いた。

 普段なら拾えるボールを落とす。

 タイミングがわずかにズレる。

 結果、いつもなら負けない相手に負け、消化不良のまま練習も終えた。

 けれど、不思議と気分は沈まなかった。

 悔しさよりも、別の感情の方がずっと大きい。

 

 練習が終わり、夕焼けに染まった校舎裏を歩く。

 オレンジ色の光が地面へ長く影を落としている。

 待ち合わせ場所である倉庫裏に近づけば近づくほど、心臓の鼓動が高まっていた。

 期待。

 緊張。

 不安。

 全部が入り混じって、胸の奥を叩き、呼吸が少し速くなっている。

 それを自覚しながらも、気づかないふりをして、ゆっくり歩いていった。

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