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Penulis: 美桜
last update Terakhir Diperbarui: 2025-06-21 12:01:52

「知っていたのか?」

部屋を出て階段まで歩く京の後ろ姿を見送って、弓弦は振り返り言った。

「どの件ですか?愛斗?双子?」

「全部だっ」

「……」

強い声で、まるで叱りつけるように言い放った弓弦は、息子の無言の圧に僅かに目を泳がせた。

「ま、愛斗の事はどうやって知った?」

「それはー」

悠一は、約1年前に突然留学先から戻ってきた春奈の事を思い出した。

「悠一兄さん…」

いきなり電話してきて「話があるから2人きりで会いたい」と言われ、頭の中の警戒アラームが激しく鳴り響いた。

絶対厄介事だ!

巻き込まれるのはごめんなので、2人きりは無理だと告げ、秘書の真木と出向くことを約束した。

巻き込まれたくはない。でも、こいつは放っておくと何を仕出かすか予測がつかない。

悠一は仕事を早めに切り上げ、真木と共に待ち合わせのレストラン個室に向かった。

そこで口にされたのが

「妊娠したの」

という言葉だった。

こんな言葉を2人きりで告げられたら、聞いた者が頭に〝あなたの子を〟と勝手に付け足してしまうじゃないかっ。

やっぱり罠だった!

悠一は内心関わりたくなかったが、だからといって「それがなに?」と切り捨てるほど薄情ではないつもりだった。

「相手は?」

そうして泣きながら彼女が言ったのが林愛斗の名前で、彼に妊娠を知らせたら「結婚はしない。が、子供は引き取る」という冷たい言葉が返ってきた…というわけだった。

2人が知り合った経緯を訊いたがそこに怪しい点はなく、本当に偶然に出逢い、関係を深めていったという事だった。

最も、春奈の方は初めて会った時から彼が悠一によく似ていると思っていた…と言うから、確信犯な気がしないでもないが……。

「決定的だったのが、彼の家に招待された時にアルバムを見せてもらったそうなんですが、そこに父さんの写真があったそうです」

「………」

弓弦はそれを聞いて、複雑そうな顔つきをした。

悠一は小さく微笑った。

「可南子さんは父さんとの過去を恥じている訳ではないので、写真は捨てずに貼ってあるそうですよ」

これは悠一が彼らに会いに行った時、言われたことだった。

「もちろん、パートナーの方も承知されています」

「……そうか……」

弓弦の口角が、嬉しそうに僅かに上がった。

「彼らの写真があったな?」

そう問われて、悠一は資料と一緒に止めていた家族写真を渡した。

弓弦はそこにある幸せ
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  • もう一度あなたと   ㉖

    悠一は思った。産んだ女が誰であれ、那須川の血筋が残せればお祖母さんも妥協するだろう。最近彼女は歳のせいもあって昔ほど勢いがない。今なら多少強引でも説き伏せる自信がある。普段冷静で理性的な悠一が、この時はなぜかこんな突拍子もない考えに囚われてしまった。そうして彼は春奈と入籍した。悠一の中でこれは子供が生まれるまでの事で、無事落ち着いたら彼女とはさっさと離婚をして、雪乃を迎え入れたいと思っていた。春奈は籍を入れた後しばらくは悠一に付き纏って奥さま面をしていたが、彼から全く相手にされず、しかも外出等も厳しく制限され、人との接触も見張りなしでは許されなかった為、窮屈だったのか、いつの間にか「出て行く」という置き手紙を残して何処かへ行ってしまった。もしかしたら彼女は悠一が自分を捜す事を期待したのかもしれないが、彼は全く頓着しなかった。彼女には監視が付けてあったので居場所は分かっていたし、寧ろいない方が煩わしくなくて良いと思っていた。悠一は、離婚の成る日を指折り数えるほど楽しみにしていた。なぜならその後は、やっと雪乃を妻として迎える事ができるからだ。だが彼は失念していた。というか、見誤っていた。春奈の執着をー。「雪乃さんに訊いたか?」「はい……。〝子供を産みたくないなんて言ったことはない〟と言われました……」「………」弓弦は今初めて、この優秀な息子に対して育て方を間違ったかもしれない…と思った。初恋を拗らせたが故に、悠一は女関係に対して潔癖だった。今まではそれを悪い事だとは思っていなかった。だらしないより潔癖な方がいいに決まってる。だが、本当にそうだったのか…。今になって思い悩む。誰が聞いても悠一のやりようは理解できない。普通に考えていくら姉妹とはいえ、人の産んだ子を事情も知らず自分の子として育てたいとは思わない。自分も産めるのに。「雪乃さんには双子がお前の子ではないことは言ってあるのか?」「はい。……でも信じてくれていないようです」「だろうな。なぜ話さなかった?」そう訊くと、彼は仕方なさそうに苦笑し、「父さんたちの了解を得てから、と思いまして」と言った。「それに、春奈が契約を無視するとは思わなかったので。本来なら彼女と離婚をして、改めて父さんたちも交えて話そうと思ってました。」彼のこの、先ず体裁を整えるという考え方は、後継者

  • もう一度あなたと   ㉕

    「それで?なぜお前が春奈ちゃんと籍を入れる事になったんだ?」弓弦はその時の事をよく憶えていた。なにせ初恋を引きずって全く女っ気のなかった息子がいきなりやって来て、「入籍する。子供もいる」と言ったのだから、驚いて声も出なかったのだ。しかも相手がどちらかといえば嫌っている部類に入る春奈だったから、尚更だ。だが彼の言った〝子供もいる〟と言った言葉で全てを察し、納得したのだった。まぁ、その後で今度は雪乃と結婚すると言われた時には、本気で息子の頭がおかしくなったのかと思ったものだった。「いくらなんでも重婚は無理だぞ!?」そう焦って言うと、実に軽蔑しきった眼差しを向けられた。そしてスッーと差し出された春奈との契約書を見て、弓弦は頭を抱えた。「お前……馬鹿なのか?」おかしい…自分の息子はとても賢い、理性的な奴だったはずなのに……。誓約書に記されていた。〝契約結婚〟と。どうりで式を挙げなかったはずだ…。彼はこれを所謂〝結婚〟だとは思っていなかったのだ。彼が妻としたい女は雪乃だけだったから。これは単に子供を得る為のステップに過ぎないと、そう思っていたのだろう。だがわからない。なぜ子を産むのが雪乃では駄目だったのか。弓弦は考えてもわからない事をあれこれ想像するのが苦手だった。「そもそも雪乃さんがいるのに、なぜ春奈ちゃんの子を受け入れた?」「それはー」悠一は、成長と共にだんだん雪乃との交流が減っていくことを寂しく思っていた。彼女が彼女らしさを失っていくことに苛立っていたし、春奈が自分に付き纏ってくることを嫌悪していた。なによりも、彼女たちの両親が雪乃ではなく、春奈を嫁がせたいと思っている事に幻滅していた。雪乃はお祖母さんの希望もあって、大学に入った頃悠一と婚約していた。それを分かっていて春奈の方をー。という彼らの思考を疑っていた。それを知っているはずの雪乃も何も言わず、ただ淡々と婚約者としての役目だけを果たしていた。だから訊けなかった。〝お姉ちゃんは子供なんか産みたくないって〟と言った春奈の言葉を、確かめるのが怖かった。自分たちのような家に嫁ぐというのは、子を成して初めて一族として認められる。産める身体で産まないという選択はあり得なかった。こんな事がお祖母さんに知られようものなら、いくら彼女がお気に入りでも婚約は破棄される可能性が

  • もう一度あなたと   ㉔

    「知っていたのか?」部屋を出て階段まで歩く京の後ろ姿を見送って、弓弦は振り返り言った。「どの件ですか?愛斗?双子?」「全部だっ」「……」強い声で、まるで叱りつけるように言い放った弓弦は、息子の無言の圧に僅かに目を泳がせた。「ま、愛斗の事はどうやって知った?」「それはー」悠一は、約1年前に突然留学先から戻ってきた春奈の事を思い出した。「悠一兄さん…」いきなり電話してきて「話があるから2人きりで会いたい」と言われ、頭の中の警戒アラームが激しく鳴り響いた。絶対厄介事だ!巻き込まれるのはごめんなので、2人きりは無理だと告げ、秘書の真木と出向くことを約束した。巻き込まれたくはない。でも、こいつは放っておくと何を仕出かすか予測がつかない。悠一は仕事を早めに切り上げ、真木と共に待ち合わせのレストラン個室に向かった。そこで口にされたのが「妊娠したの」という言葉だった。こんな言葉を2人きりで告げられたら、聞いた者が頭に〝あなたの子を〟と勝手に付け足してしまうじゃないかっ。やっぱり罠だった!悠一は内心関わりたくなかったが、だからといって「それがなに?」と切り捨てるほど薄情ではないつもりだった。「相手は?」そうして泣きながら彼女が言ったのが林愛斗の名前で、彼に妊娠を知らせたら「結婚はしない。が、子供は引き取る」という冷たい言葉が返ってきた…というわけだった。2人が知り合った経緯を訊いたがそこに怪しい点はなく、本当に偶然に出逢い、関係を深めていったという事だった。最も、春奈の方は初めて会った時から彼が悠一によく似ていると思っていた…と言うから、確信犯な気がしないでもないが……。「決定的だったのが、彼の家に招待された時にアルバムを見せてもらったそうなんですが、そこに父さんの写真があったそうです」「………」弓弦はそれを聞いて、複雑そうな顔つきをした。悠一は小さく微笑った。「可南子さんは父さんとの過去を恥じている訳ではないので、写真は捨てずに貼ってあるそうですよ」これは悠一が彼らに会いに行った時、言われたことだった。「もちろん、パートナーの方も承知されています」「……そうか……」弓弦の口角が、嬉しそうに僅かに上がった。「彼らの写真があったな?」そう問われて、悠一は資料と一緒に止めていた家族写真を渡した。弓弦はそこにある幸せ

  • もう一度あなたと   ㉓

    「彼らには俺から接触しました」悠一がそう言うと、2人は驚いて顔を見合わせた。「なぜわざわざ寝た子を起こすような真似を?」弓弦が尋ねると、悠一が口を開く前に京が言った。「子供がいるとわかった以上、何らかの補償?はするべきじゃない?」「例えば?」悠一が冷たく尋ねる。彼に言わせれば、許可も得ず勝手に産んだ子にまで補償を与えるなんて、お人好し以外の何者でもない。「例えば……そうね。払えなかった養育費を渡すとか……認知をするとか?」「はっ…正気じゃないな」言い捨てると、京はムッとした顔で「なによっ」と呟いた。彼女からしたら一人で子育てなんてとても大変だったろうし、ましてや可南子は病を患っていたのだ。少しくらい報われたっていいじゃないか…と思うのだ。「京、君のその優しさは尊敬に値するけど、今回ばかりは余計な手出しになる」夫にまでそう言われて、彼女は益々ムキになった。「どうして!?」お金をあげることに彼らを侮辱する意図はない。実際お金はあっても困らないし、彼らの後ろには那須川家がいることが分かれば、しなくてもいい苦労が避けられる。いい事尽くしじゃないの?京は不満気に悠一を見た。「うちと繋がることで彼らの平穏な生活が失われるとわかっても、そうした方がいいと?」そう言われて、京は初めて理解した。確かに、可南子の子を認知すれば彼は悠一の異母兄となり、那須川家の子と見なされるようになる。そうなれば何としてでもうちと繋がりを持ちたい家から当然狙われるようになるし、下手をしたら可南子が愛人扱いされてしまうかもしれない。それは駄目だ。彼女は愛人なんかではないし、しかも今彼女にはちゃんとパートナーがいて幸せに暮らしているのだから、その生活を壊すようなことはできないっ。そう結論に達したが、「じゃあ何の為に近づいたの?」と疑問だけが残った。「俺が引き取った春奈の子だが……。彼、林愛斗(はやしまなと)の子なんだ」「え!?」「なんだって!?」京と弓弦の声が重なった。「それでDNA鑑定をする為に接触した」「………」呆然とする両親を前に、悠一はため息をついた。「え、待って…。じゃあ春奈ちゃんは、あなたの異母兄嫁ってこと?え……籍入れたよね!?」京は最早パニック状態だった。弓弦はそんな妻を宥めて落ち着かせ、一先ず「お茶でも飲んでおいで」と優

  • もう一度あなたと   ㉒

    資料を読み進めていくに従って、弓弦はふるふると震え出した。「これは…本当なのか……?」信じられないというように呟くが、胸の内では彼はこれが真実なのだとわかっていた。「なぜ、彼女はこんな事を……」「子宮がんだったようです。妊娠がわかった時にそれも一緒にわかって、子供を諦めて治療するか、出産後治療するか選択を迫られ、出産を選んだようです」「なぜ……」「…次の妊娠の可能性が限りなく低かったからだと」「……」悠一は、目の前で俯き考えに沈んでいる父親を、ただじっと見ていた。部屋の中には沈黙が漂い、2人共微動だにしなかった。やがて、弓弦は考えを纏めたのか、大きく息を吐いて言った。「彼らは何か求めてきたのか?」その声は苦悩に満ちていた。だがー「いえ、何も」そう言うと、彼は予想外の答えだったのか目を瞬いた。「なんでこの話しをしたんだ?」それには今度、悠一の方が深刻なため息をついた。「父さん。これは最早、父さんだけの問題ではないからです」「?」眉を顰める父親に、悠一は苦笑した。今から自分の人生最大の過ちを話さなければならないかと思うと、目眩がするほど恥ずかしかった。「悠一?」「とりあえず、母さんにも話していいですか?」眉間を揉みながら尋ねると、父親はしっかりと頷いた。「大丈夫だ。彼女のことは京も知っている。ただ、子供のことはー」「父さん」「……わかった。」弓弦は覚悟を決めたのか、その後はなんの躊躇いもなく妻の京を呼んだ。端的に言うなら、京は驚きはしたが怒りに支配されたりはしなかった。林可南子は夫の昔の恋人で、可南子との結婚をお祖母さんに許してもらえず別れさせられた腹いせに、弓弦は妻に令嬢らしからぬ自分を選んだのだと言われていた。一方京はそこそこの家の出ではあったが、両親の言うような良い家に嫁ぐ気など更々なかった。贅沢はできても夫や家に縛られる人生は彼女にとって地獄でしかなく、大学を卒業するまでには結婚を逃れる良い理由を見つけなければと焦っていた。そんな時彼女は弓弦に声をかけられ、彼との政略結婚を持ちかけられたのだった。意味がわからず即決で断った彼女に弓弦は事情を説明し、「決して外に女を作るような真似はしないし、愛することはできなくても大切にする事は誓える」「君の人生に口出しはしないし、誰にもさせない」とかき口説き、無

  • もう一度あなたと   ㉑

    那須川家 本家邸宅。山手にある昔ながらの閑静な住宅地はまだ午前中ということもあってか、静かな様相を呈していた。そこへ悠一が運転する車が滑るように本邸前に停まった。運転席に座ったままリモコンで門を開け、そのまま駐車スペースにキッチリと停めた。「おかえりなさいませ」新しく本邸の執事になった小高の息子が頭を下げると、悠一は頷き、黙って邸の中に入って行った。「来たのね。あら、雪乃さんは?」母親の那須川京(なすかわみやこ)がいそいそと迎えに出たと思ったら、嫁の姿がないことにがっかりして彼女は息子を睨めつけた。「まさか、いじめてるんじゃないでしょうね?」その言葉に悠一は肩を竦め、「俺がいじめられてるよ」と言った。彼女は「それなら問題ないわ」と言い、嬉しそうにふふっと微笑った。「うまくやってるようで、良かったわ」悠一はそれには答えず、「父さんは?」と訊いた。「書斎よ。どうしたの?」「話しがある」京は難しい表情をした息子の様子に訝しげに眉を寄せ、会社で何か重大な問題が持ち上がったのかと心配した。悠一は父親の書斎へと向かいながら京を振り返り、言った。「あとで母さんにも話しがある。呼んだら来て」「……わかった」悠一の背中を見送りながら、京は静かに瞬きをした。書斎の前に来た悠一は一瞬ドアをノックするのを躊躇い、だがすぐにコンコンッと音を響かせ、ドアを開けた。「悠一か。どうした?」父親の那須川弓弦(なすかわゆずる)は特に驚いた様子もなく悠一を迎え入れると、手にしていた書類を横に置いた。「新婚生活はどうだ?雪乃さんに優しくしてやってるか?」そう言われて、悠一は呆れてしまった。俺が息子だろうに。彼は苦虫を噛み潰したような表情をして、「してるさ」と言った。そして改めて父親の顔を見て、真剣に口を開いた。「林可南子(はやしかなこ)、憶えてる?」その名前を出した時、父親の指がピクリと反応したのを見逃さなかった。悠一が黙って見つめていると、彼はふぅ…と息を吐き、彼の息子にひたと視線を据えてきた。「彼女がどうした?」「憶えてるんだね?」「とっくに終わった人だ。」迷いなく言い切る父親に、悠一は「うん」と頷き、用意してきた資料を渡した。「なんだ?」「見たらわかる」そう言われて、弓弦は息子に座るよう促した。

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