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第553話

Author: レイシ大好き
「何にせよ、彼女はこれまで会社に多くの実績をもたらしてくれたんです。見舞いに行くのは当然のことです」

最初、緒莉はあまり乗り気ではなかったが、考え直してみると確かに一理あると思った。

それに、幹部たちが証人として同行してくれれば、何を言っても一人ではなく、賛同してくれる人がいる。

そうなれば、京弥の立場も一気に不利になるのではないか?

そう思うと、緒莉の顔に浮かんだ笑みがさらに広がっていった。

「気が利きますね。では、一緒に参りましょう。それと、書類の件ですが、皆さん安心してください。私が代理会長を務めている間は、必ず妹が残した仕事を責任持ってやり遂げます。

私もこの会社の一員です。会社の調子が悪ければ、私自身にも影響が出ます。会社の利益が最も大事だということは、誰よりも私がよく分かっていますから」

緒莉のその言葉に、皆も次々とうなずいた。

会社の利益はすべてに優先される。

この一点については、珍しく意見が一致していた。

何せ、皆この会社に投資しているのだから、株価は命よりも大事なのだ。

秘書は、幹部が緒莉と一緒に会社を出ていくのを見て、どこか腑に落ちない気持ちが拭えなかった。

どうしてもおかしい。

あの幹部が同行すると言い出したとき、緒莉が妙に嬉しそうに見えたのだ。

もしかして今回の見舞い、単なるお見舞いではなく、何か他の目的があるのでは......?

秘書は不安になった。

しかし、彼には京弥の連絡先がないため、どうすることもできなかった。

彼はただの一社員に過ぎず、こんなときでも、自分の職務を離れるわけにはいかない。

悔しさと無力感に包まれた彼は、トイレへ行き、髪を引きむしるように頭を抱えた。

この「無力」という現実が、彼にとっては最大の敗北だった。

自分の無能さ、そして行動できない自分を、心底恨めしく思った。

......

緒莉は車を運転して、幹部を連れて病院へ向かっていた。

道中、二人の間にはほとんど会話がなかった。

実のところ、この幹部も少し気まずさを感じていた。

なにしろ、最初は緒莉という人物をまったく評価していなかったのだ。

彼女は口ばかりで、中身のない人間だと見なしていた。

紗雪と緒莉のどちらを選ぶかと問われたら、迷わず前者を選ぶ――

それは誰の目にも明らかだった。

だが、そんな気まずさを乗り
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