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ヒマリだけが知らない夜

Author: ふりっぷ
last update publish date: 2026-07-30 06:42:37
 魔王城・コアルーム。

 制御室の空気が、わずかに震えた。

 クルスは、演算を止めた。

 外界の魔力流が、

 いつもと違う揺れを帯びている。

「……ノリス」

 名を呼ぶ声は、誰にも届かない。

 だが、魔王城のコアで同期していたことのある

 クルスには分かった。

 ノリスが、何かを決め

 守るべきものを、捨てた。

 代わりに、別の何かを掴んだ。

 その波が、魔王城の深層まで届いていた。

(ヒマリに、知らせるべきか)

 クルスは、指を止めた。

 演算は、答えを出している。

 ――知らせるべきではない。

 ヒマリは今、ロンデルとの婚姻交渉の渦中にある。

 心拍は安定している。

 判断も、揺らいでいない。

 だが。

(……揺らぐ要因は、増えた)

 スクリーンに映るヒマリの心拍が、

 ほんのわずかに跳ねた。

 クルスは、目を細めた。

「……ノリス。

 君は、また選ばれなかったと感じたのか」

 その感情の揺れは、

 魔王城のコアにとってはノイズだ。

 だが、クルスにとっては――

(利用できる)

 そう、演算は告げていた。

 だが、クルス自身は、

 その結論を
ふりっぷ

前回の「世界を売る夜」の、魔王城側とロンデル側から見た同じ夜の話です。 ヒマリは、まだ何も知りません。 クルスは、知っています。

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